スーパーSF大戦


第18話 掘り出された戦ぶね F−Part


 休み2日目、正午頃からポツポツとナデシコの船員の方たちが帰ってきました。
 皆さんが帰ってくる度に「おかえりなさい・by.ルリ (^^)/゜」と表示していたのですが、なにやら妙に好評のようです。
 皆さんお疲れでしょうにブリッジに上がってきて私にお土産を置いていってくれました。
 それは良いのですが、この山になっている温泉饅頭を私ひとりで食べるわけ? 勘弁して。
 この日は特に何もありませんでした。


 ・・・・・・朝です。
 今日から通常勤務に戻ります。
 ですから起きなければなりません。でも・・・
 眠いです。
 昨日までの連休が懐かしく感じます。
 さて起きましょうか。イチ・ニー・ノ
 スピー
 くーっ
 すーっ
 くひっ、・・・ハッ! いけないいけない。
 本格的に起きましょう。
 まずは顔を洗わなければいけません。
 それでは洗面所へGo!
 ・・・・・・あれ、なかなか着きませんね。
「ちょっちょっとルリルリ。何処へ行くの?」
 ほへ?!
「ミナトさん・・・?」
「ミナトさんじゃない! パジャマのまま通路に出ちゃダメでしょ。だらしない」
「あれ? ここ、私の部屋ではないですね」
「ちょっとぉ・・・ひょっとしてルリルリ寝ぼけてる?」
「さて、どうでしょうか。思兼、私は寝ぼけてるの」
<寝ぼけてます>
<60%>
<早く起きましょう>
「寝ぼけてるそうです」
「ん、もーう。ほら、ルリルリの部屋はここ、中に備え付けの洗面台で顔を洗ってから着替えて食堂に来るのよ。分かった?!」
「はい、バッチリれす」
「ホント、大丈夫かなぁ」
 ミナトさん用心深いですね・・・。
 扉が閉まるまで外で見張ってました。
 じゃあ顔を洗いましょう。
  ・
  ・
 バシャバシャ
  ・
 冷たい。
  ・
  ・
  ・
 アレ? いつの間に私は顔を洗ってたんでしょうか。
 最近なんか、目が覚めると予想外の場所にいることがあります。
 もしかして私、夢遊病でしょうか。
 以前から低血圧症とは診断されてましたが。
 まぁ部屋の中で顔を洗ってたんでしたら誰かに見られたって訳でもないですし
 気にする事はないですね。
 もしもミナトさんとかに知られたら本気で心配されてしまいますから。
 さて、思兼、おはよう。
<おはようございます>
<今日もいい天気です>
<グッドモーニング、ルリ>
「今日も一日よろしくね」
<はい、ルリ>

 食事を済ませてブリッジに出勤です。
 皆さん既にブリッジに集まってるようですね。
「皆さんおはようございます」
「おはようルリちゃん」これは艦長ですね
「おはようルリくん」アオイさんです
「おはようございます、ルリさん」プロスさん、少女の私にも丁寧ですね
「おはよう」ゴートさんです
「おはよう、星野くん」提督、貫禄ですね
「アラ、オハヨ」副提督、挨拶してくれるのは良いけど、オネェ言葉はなんかイヤ。
「オハヨ! ルリルリ」ミナトさん・・・ルリルリは止めてください
「ルリちゃんおはよう」メグミさん、一番普通ですね
「よ、オハヨ」リョーコさん。らしいですね
「おはよ〜ん」ヒカルさん。・・・・・・らしいですね
「・・・・・・・・・・・・ネタが浮かばない・・・」イズミさん、・・・らしい? ですか・・・
「イズミィ、無理に何か言うこと無いって」ヒカルさんも突っ込みが・・・
「放っとけ」流石にリョーコさんは諦めてるみたい
「おはよう、ルリちゃん」天河さん・・・(照れ)
「よ〜ぅ、おはようさんルリッペ」ルリッペ・・・山田さん・・・(怒)ルリルリよりイヤ
「ルリルリおはようさん〜」ウリバタケさん・・・やっぱりルリルリも・・・ミナトさん〜
 皆さん一斉に私に挨拶してくれました。
 大変ありがたいのですが、誰が誰だかわかります?作者の伝言によると選択すると分かるそうです
 今日は朝からミーティングが有るとのことでしたので、艦内各部署の責任者の人達も顔を見せてます。
 整備班はウリバタケさん。
 食堂のホウメイさん。
 あと普段見かけませんが医療班の森さん。
 こうしてみるとナデシコってかなり自動化、無人化が進んでます。
 その内ワンマンバスならぬワンマン・バトルシップなんかが作られていたかも知れませんね。
 冗談ですけど。
 さて、私が来るのを待っていたらしいアオイさんが脇にファイルを抱えて艦橋の目立つ場所に経ちました。
 今日の司会はアオイさんの様ですね。よろしく。
「それではこれからナデシコ総括ミーティングを始めさせていただきます。皆さんご自分の席でくつろいで聞いて下さい。ではお配りした資料1−2をご覧下さい」
 あ、ちなみにこの会議で話される予定の内容は既に思兼にインプットされていますので、情報が欲しい人はそれぞれのレベルに応じたレベルの情報が入手できるようになっています。
 アオイさんはナデシコの今後の大まかな方針について説明してくれました。
 プロスペクターさんがこの連合日本の政府と交渉した結果、ナデシコはあくまでネルガルの所属であるが重力制御技術の実験艦としてここ国立科学研究所SCEBAIに隷属する事になる新設の子会社に所属すること。
 基本的に乗組員も続けて雇用されるが、艦を降りるのは自由であること。
 この国の政府に依頼された場合、軍事組織に参加する事もあること。
 元の状況に戻ったときは速やかにネルガルに復帰すること。
 等が取り決められたそうです。
「では本日の予定ですが、本日は我々のことを発見した宇宙戦艦の艦長さんがこのナデシコに乗艦する予定です」
 そういえば、そのフネの事詳しく聞いてませんでしたね。
「しつもん」
「はいルリくん」
「その宇宙戦艦て一体どんなのなんですか?」
「えーっ、とプロスさん、何か聞いてます?」
「いえいえ、SCEBAIの方も口が堅くてですねぇ。何の情報も入ってきておりません、が、少なくとも私たちと同等の科学技術を持つのは確かです。なにしろ我々が探査用に使っていた重力波を逆探知出来たのは彼らだけだった訳ですから」
「だそうです、ルリくん」
「そうですか」
 正体を隠すなんて、なんだか怪しい人ですね。
 今度はどんな非常識でバカな人が来るのでしょうか、頭の痛いところです。
 どんな顔をしているかじっくりと見てみましょう。


 そんなこんなで、通常の日常点検を済ませた後は時間まで待機でした。
 ブリッジにはナデシコの正規艦橋要員の全員が揃っています。
 エステバリスパイロットの方たちもテンカワさんを除いてパイロット席でだべってます。
 テンカワさんは例の如く食堂勤務です。
 さて、そろそろ時間の筈ですが、思兼レーダーに反応は?
<広域レーダー作動中>
<低緯度衛星軌道からブリップ降下中、UNBS−01と仮称>
<推定到着時間まであと10分58秒>
 思兼、ありがとう。
「艦長、未確認戦艦、衛星軌道より降下中。到着まであと10分強です」
「えっ! あ、どうもありがとうルリちゃん。それでは皆さん、準備はいいですか?」
「ねぇ艦長、ホントにやるのぉ」
「ええ、勿論です。なにしろ私たち命の恩人ですから歓迎しなくちゃ」
「でもねぇ、クラッカーはともかくとしてウリバタケさん特製のくす玉まで用意したのはちょっとやり過ぎじゃないかしら。相手の人、気を悪くするかも知れないよぉ」
「だいじょーぶダイジョブ。私に任せといて下さい、ブイ!」
 この艦長、初登場の時からこの調子で今まできちんと活躍したことがありません。
 本当にプロスさんが言う優れた艦長って事、信じて良いのか悪いのか、今いち分かりません。
 ま、コチコチの軍隊馬鹿よりはマシだけどね。
<ルリ、ドップラーレーダーのエコーを解析しました>
<見る?>
「お願い思兼」
<OK>
「艦長、未確認戦艦のレーダー計測による解析形状が出ましたが、出しますか」
「うん、ルリちゃんありがとう」
「いえ」
 じゃ、正面大パネルに投影しましょうか。
「出します」
 ブリッジのパイロット席があるグランドフロアー床面に大きく広がっているメインモニターに思兼が解析した未確認戦艦のレーダー情報を投影しました。
 えっ!? これって。
「これってナデシコ級、だよね。プロスさん、ナデシコ級ってこのND−001ナデシコが一番艦じゃなかったんですか?」
 艦長が驚いたようにプロスさんに聞きました。ネルガルってけっこう裏で色々とやっているみたいだし、確かに怪しいんですよね。
「いや、そんなはずではないんですが・・・。おかしいですねぇ」
 プロスさんも本当に心当たりが無いんでしょうか、頻りに首を傾げています。
 これも演技だったりして。
 それはともかく、みんなであれこれ推測している内にその謎のナデシコクラスは私たちの上空100メートルの位置で静止しました。
「え、あ、はい、少々お待ち下さい。艦長、上空の戦艦、ナデシコBから連絡が入ってますけど」
「ナデシコBですか、分かりましたメグミさん繋いで下さい」
「了解」
 メグミさんがパネルを操作すると正面に大きくコミュニケのウィンドウが開きました。
 その中に顔にボカシが掛かってハッキリと顔の分からない女性士官の姿が映りました。
『初めまして、こちら連合宇宙軍所属試験戦艦ナデシコBの艦長です』
 声にもフィルターが掛かっているようですが、年齢的にはかなり若いように見受けられます。
「初めまして、私はネルガル所属の機動戦艦ナデシコの艦長ミスマル・ユリカです。失礼ですが、どこかでお会いしましたっけ?」
『さて、それはそちらに行ってからのお楽しみと言う事で。ところでそこにはアキトさんいますか』
 あ、艦長の顔が赤くなってますね。怒っているんでしょうか、でもどうして。
「いえ、現在ここにはおりません。私のアキトに何かご用ですか」
『クスクス、相変わらずですねユリカさん。ではこれからそちらに向かいます。あ、そうそう直接艦橋に行きますから出迎えはいりませんよ。それでは』
 意外とあっけなく映像は切れました。
 やっぱり変な人ですね。
 類は友を呼ぶと言いますが、あ〜あ、やっぱりバカばっか。
「むっかぁ! 何よあれ、私のアキトに馴れ馴れしい」
 艦長そう言う問題じゃないと思いますが、それより官姓名を名乗らないとかそう言うことの方が重要だと思いますけど。
「で、艦長アキトさん呼びますか?」
 メグミさんが気を利かせて言いましたが、艦長はそんな気分では無かったようです。
「いいえ、あんな娘に私のアキトを会わせるわけには行かないわ、連絡しなくて良いです」
「はぁ、そうですか」
 艦長、それは公私混同です。
 とか思っていたらブリッジの扉が開いて当のテンカワさんが顔を出しました。
 皆の注目を浴びてテンカワさんたじろいでますね。
「ななな何だよ一体。オレがどうかしたのかよ」
「アキト、食堂の方が忙しいんじゃなかったの?」
「え? イヤ忙しいけど・・・ブリッジで俺を呼んでるってルリちゃんから連絡があったからわざわざ顔を出したんだぜ。呼んでないってのか?」
 すると今度は皆私の方に注目が集まってしまいました。
「わたしは呼んでませんけど」
「でもルリちゃんだったよ、さっきの声」
「おかしいですね」
 何が何だか良く分かりません。
 思兼、通信に不審な点はありませんでしたか?
<いいえ特に>
<System all green>
<すべて順調に稼働中>
 不思議なことですね、何らかの心霊現象でしょうか。まさかね。
「あっそうか!」
 不意にミナトさんが声を上げたのでビックリしてしまいました。
「私なんとなく分かっちゃった」
「分かったって何が分かったんですかミナトさん」
「ふふ。いたずら好きな女の子の企みがね。だから秘密」
「ええーっそんなぁ教えて下さい」
「ダーメ」
「艦長命令です!」
「えー、でもぉ」
 ミナトさん、どうして私を見るんです?
「やっぱり秘密」
「ブー」
「大丈夫、すぐ分かると思うから」
 ミナトさん、上機嫌で浮かれてます。
 まるでひとりだけミステリー番組の犯人が分かっちゃった人みたいです。
 て事は犯人を喋るのは確かにマナー違反ですね。
<ナデシコBから連絡艇が発進しました>
「では受け入れ態勢を整えて下さい。艦長、よろしいですね」
「はいはい、よろしくぅ」
<連絡艇着艦しました>
「了解、艦長、連絡艇着艦しました。出迎えは良いんですか? なんか勝手に入って来てますけど」
「え、パスワードはどうしたの?」
「どうやらハッキングして手に入れたか、最初から知っていたかですね」
「ふぅん、映像出してくれるかな」
「はい。格納庫の監視映像です」
 私がIFSを介して監視回線を操作するとメインスクリーンに格納庫付近の通路に3人の人影が歩いているのが映し出されました。
 ひとりは先ほど映った小柄な女性佐官、その後に立っているのは大柄な金髪に赤いメッシュを入れた長髪の尉官、あとちょこっとした小柄な子供のような体つきのオペレーター職の下士官の3人です。
 カメラの状況はグリーンなんですが、焦点が合っていないのかそれ位しか分かりません。
 ハッキング? 
 向こうもナデシコ級なら思兼と同程度のシステムを積んでいる可能性が高いですね。
 要注意です。
「思兼、武器チェックしてちょうだい」
<OK>
<武器の携帯は確認できませんでした>
 ありがとう思兼。
 あ、3人が格納庫近くを歩いていた整備員の方と接触しました。
 整備員の人が驚いて女性佐官を指さしています。
 思兼、音声は入らないの?
<何らかの障害により通信エラー発生中>
 ハッキングの可能性は?
<不明、チェックは回避されています>
 ダミープログラム放出、艦内中継ステーション内のセキュリティーレベルD5へ移行。
 モードはアクティブ、攻勢防壁展開。
 並びに強制チェック。
 特に通信系統を中心に。
<不明>
<エラー>
<お手上げ>
 これは大変なことです。
 まさか思兼の裏をかけるとは、矢張りナデシコBには思兼の直系の後継機種が積まれているはずです。
 と言う事は彼らは私たちにとっての、同時間線の未来人!?
 ピンポーン、艦橋扉の向こうに彼らが到着したようです。
「艦長どうします? 追い返すならこれが最後ですが」
「会いましょう。開けてちょうだい」
「了解、扉を開けます」
 私が扉を開くよう指示するとそれはゆっくりと開きました。
 ・・・・・・やっぱり。
 その向こうには見慣れたような初めて見るような人が立ってました。
 ハァ・・・勘弁して。
星野ルリ
「初めまして、もしくはお久しぶりです。U.E.SPACEY所属ナデシコB艦長の星野ルリ少佐です。ぶい!」
 ぶい・・・未来の私はナデシコのノリに染まってしまったようですね。

  バカ。




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