日本連合政府首相 加治隆介 所信表明演説


 この度、日本連合政府首相にご指名いただきました加治隆介です。就任にあたり所信を表明いたします。
 ご承知のとおり今まで経験したことの無い時空融合と言う現象が全世界を襲い、人類が今まで城築上げてきた国際社会が消滅してしまいました。
 この日本でも千を超える世界が融合したことが確認されています。
 未確認情報に寄れば異世界の勢力同士の接触により戦争が発生したり、国内不安により内乱が発生した国もありました。
 日本は幸いなことに時空融合を観測し状況を広報出来る組織が出現したおかげで内乱の危機も回避できました。
 ここに理性的に行動できたすべての日本国民に感謝いたします。
 現在、まことに残念ながら世界は混乱の渦中にあります。
 混乱に乗じて他国の平和を侵そうとする国や人類滅亡の危機に直結するような力を持つテロ組織、未知の人類以外の敵の存在も確認され、文字通り日本を始め全世界は存亡の危機を迎えております。
 この危機的状況下において、政治家の最も大きな責任は国民の安全を如何に守るかということであります。政府はまず国民を生き延びさせることを考えなければなりません。

 私は常日頃、政治が行う四つの柱は防衛・外交・経済政策・そして教育と考えています。
 ここ当分は国民を守ると言う目的の元、防衛・外交・経済政策の各政策を重点的に取り組もうと考えています。


 まず国民の皆様を直接守るべき防衛政策を説明いたします。

 始めに申し上げたように、この世界には他国の平和を侵そうとする国やテロリスト、人類滅亡の危機に直結するような力を持つ人類以外の敵の存在とが確認されました。
 交渉もなく問答無用に戦争や紛争を仕掛けてくる敵には断固たる処置を取る必要があります。こういう敵勢力から国民を守るためには防衛力は不可欠です。幸いにもこれらの敵に対抗出来る組織もこの日本に出現いたしました。
 けれども、管理されない防衛組織は混乱をも招く危険があります。混乱を防ぐためにもこれらの防衛力を総理府防衛庁が一元管理します。
 しかし全ての防衛力を自衛隊指揮下に置いた場合、日本一国が融合前の10倍もの防衛力を一気に持つ事に国内からも不安の声が出ていることも事実です。
 また混乱状態に有るとは言え、世界各国が十分な防衛力を身につけようとすると世界は軍拡競争になってしまう可能性が高くなり、決して望ましいことではありません。出来れば普段は小さな軍事力しか持っていないが、いざという時には他国の応援を頼んで軍事力を結集して大きな力で対抗すると言う集団安全保障のシステムをとることが望ましいと考えています。
 しかし時空融合のためその形を作る国際組織は消滅し、自らの手で新しい集団安全保証体制を構築する必要に迫られています。
私は元の世界で地球防衛の任務に付いていたGGG、TDF、青などの国際機関に対し日本連合政府首相の権限で新しい地球防衛機構の設立を要請いたしました。
 この防衛機構の設立目的はただひとつ。その持つ力を人類に向けず、人類を守る盾となってあらゆる危機に立ち向かうことです。
 日本もこの防衛機構に参加し、作戦時に必要な協力をする事はもちろん、一国が持つには多すぎる防衛力を防衛機構に派遣し、国全体としては補給などの後方支援を行うことで人類滅亡の危機に立ち向かいます。またこれから外交関係を確立する国々にも加盟を呼びかけていき、文字通り全地球的規模の集団安全保証体制を目指します。
 しかし、20世紀後半に相当する世界からきた方々から憲法違反にあたる「集団的自衛権」の行使にあたるとの反対意見がございます。しかしこれまで述べたとおり人類の常識が通じない敵も出現している現実があります。それらに対処するためには日本一国が国力すべてを防衛力につぎ込むような軍拡政策を取るより、全人類が力を結集出来る集団安全保障体制の確立とそれへの参加がより現実的な対応策と考えます。
 平和は観念的に唱えているだけではやってきません。平和は、現実的な対応があって初めてかちとることが出来るのです。私は国民生活を守る義務と責任を負うものとして、必要ならば憲法も改正することを視野に入れ、国民だけでなく全地球規模の守りの盾を構築する事に取り組んでゆきたいと思っています。

 次に外交政策を説明いたします。

 時空融合の結果、それ以前からの国際関係は消滅し未知の国々と新しく国交を結ぶ事になりました。例えばおなじみのアメリカ合衆国が存在していた北アメリカ大陸と南半球の各国とは未だに音信が不通です。その代わりお隣の中国大陸には漢帝国が成立しなかった歴史を辿った、中華文明のもう一つの可能性たる中華共同体の存在が確認されております。また遠くヨーロッパ中近東では未知の文明圏が出現し、近く通商使節団をこの二ヶ国に派遣する予定です。
 資源の少ない日本の立地条件は時空融合後も変わってはおりません。生き延びていくには海外からの資源の輸入が欠かせず、一刻も早く融合前の水準に戻す必要があります。
 その為に海外に植民地を設けて資源を採掘せよと言う意見もありますが、この日本に出現した多くの世界が経験したように、現地の住民を奴隷化するような植民地帝国主義的政策は長期的に見て日本の国益を損ね、その行く末はいまさら言うまでもございません。

 わが国はあくまで専守防衛に徹し、平和裏に友好を結んだ国家とは通商関係や国際協力、文化交流などを通して相互の平和と繁栄に尽くして行きたいと考えています。他国を奴隷化し日本一国の平和と繁栄のみを追求する帝国主義を取らないことを、ここに改めて全世界に誓うものです。

 次の経済政策の説明前に、いま国が、そして我々大人達が全力をあげて行わなければならない、時空融合の最大の被害者への救援活動をご説明いたします。
 モザイク状に融合してしまったわが国では学生の修学旅行先で、または父親の単身赴任先に母親が世話しに行った時、最悪の場合ではちょっとした近所へ外出した時に時空融合に遭遇した結果、一家が離散し、二度と家族に会えない国民が多数出てきております。私も故郷に残して来た妻子と二度と会えない事になりました。しかし問題なのは私達のような大人ではなく、逆に親に会えなくなってしまった子供たちが多数発生した事です。
 その数は全国で調査中ですが、少なく見積もっても1000万人、多ければ2000万人にも及ぶ孤児達が誕生した事になります。既に各地の自治体、警察と児童相談所は保護し始めておりますが、施設の絶対数は足りず、既に保護できる人数をはるかに超えております。必要な宿泊施設は学校校舎を利用すれば足りるでしょうが、今子供たちに一番必要なのは愛情を与える事が出来る親なのです。
 我々大人は身寄りの無い子供たちを救わなければなりません。いえ、我々大人が子供たちを救う事が出来なければ、先の政策が成功したとしても日本は未来を失い飢えと貧困にまみれた暗黒の世界になってしまうでしょう。現に希望を失った一部の少年達の中には自暴自棄になり事件を起こしたとの報道も在ります。
 無論家族を失った悲しみから立ち直れない方々も多いでしょう。しかしあえて国民の皆様に訴えます。失った過去に囚われるなと。
 その昔、とある火山が大噴火を起こし、麓の村を火砕流が襲った事が在ります。多くの命が失われても生き延びた人々はいました。その人々も家族が無事だった者は皆無に近かったでしょう。しかし彼らは悲しみに耐えながら妻子を失った男は夫と子を失った女を妻とし両親を失った子供を養子に迎えて家族となし、村を復興したと伝え聞きます。
 いま我々大人達には、この伝説のように孤独な子供たちに手を差し伸べて、愛情を持って家族に受け入れる事が求められております。政府としても必要な施設の拡大には努めますが絶対数も時間も無きに等しい状態です。どうしても広く国民の皆様のご協力で子供たちに愛情に満たされた家庭を与えてあげてください。それが出来たとき、この日本の未来は希望に満ちたものになると私は信じます。

 最後に経済政策についてご説明いたします。
 この新世界で日本は必ずしも順風満帆とは行かないでしょう。中華共同体に属するいくつかの都市との間に貿易の目処が立ったとは言え、時空融合による混乱と景気の停滞も当分続くことは否定できません。しかし日本が本来持っている技術力・生産力・優秀な労働力は何ら変わっておりません。ましてや、千を超える世界が融合したことで新しい技術があふれんばかりになっています。後は国民の力で経済活動に応用するだけです。
 今の政府では従来の公共工事を中心とした経済政策を取る余裕はございません。その代わり、連合政府は新しい国際市場の確保と公平な通商ルール作り、交易路の確保と言った国家レベルでしか出来ない民間への支援を引き続き行い、その後は民間主導、規制緩和をどんどん進めてまいるつもりです。
 私は政治の力で経済を動かせるとは正直なところ思っては居りません。経済は民間の力、そして国民の活発な消費で発展します。政治は経済発展のきっかけを作るだけの力しかありません。どうか今のこの苦しい時を国民が力を合わせて乗り切って、失った世界を嘆き悲しむだけでなく、可能性を秘めた新しい世界に立ち向かって行く勇気を奮い起こし、未知の世界を切り開いていこうではありませんか。

 

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<岡田”雪達磨”信良さんのコメント>
 始めまして。これが私の始めての作品です。
 普通外伝と言ったらシンジやアスカ、レイといった主要キャラクターの別の面を出すか、 贔屓のヒーローヒロインを出すもんでしょうが、こう言う混沌とした世界の政府首脳は誰が 相応しいか考え出したら、加治隆介と言うマイナーな政治マンガの主人公を思い出してしま いました。他に某艦隊の大高大統領と言うのもいますが。
 さて、今回は首相就任時の所信表明演説を利用して、SF大戦の状況説明もどきの作品とな りました。EINGRADさんの構想と一致していれば幸いです。元ネタ作品の加治隆介は代議士の 父親が不信な死を遂げた後を引き継いだ2世議員ですが、筋を通す性格で外交や政策にはっ きりとものを言いつづけ、一度は議員辞職もしましたが、官房長官・外務次官・防衛庁長官・ 外務大臣を歴任した後、最後に総理大臣になって原作は終わりました。
 さて次の作品は書けるでしょうか?一応「連合艦隊編入式典での祝辞」(爆)を書く構想 がありますが。(^_^;)
 

ヴァージョンアップの後書き(2000年6月12日)
 「外伝 加治首相の議」を書き始めて、またアイングラッドさんとメールをいくつかやり取りしました。その中でアイングラッドさんの構想で、時空融合後の日本には孤児が多数発生したはず。彼らを助ける政策として養子を簡単に行えるように制度を変える。と聴きました。
 言われてみればもっともな意見なんですが、我らが加治首相としては単純に簡単にする訳にもいかないので、必要と考えるアフターケアや規定を考えて、既にアイングラッドさんには返答済みです。対策委員長(担当相?)も誰かいませんかと尋ねられましたので、一人推薦しましたが、さて御目にかないますか。
 と言うことで、所信表明演説をヴァージョンアップしました。
 具体的な法案趣旨説明担当相は連合議会本会議または委員会中に説明することになりますが、
書いてもつまらない小説になるでしょうね。
 外伝で触れるかもしれないけど、いまだ野党のイメージが掴めない。(^_^;)
 この次はAパートにイベントを追加するのが先か、Bパートの発表が先か。へ(__へ)☆\(-_-メ)
 

感想は気楽に掲示板かもしくは直接こちらへ。

<EINGRADのコメント>
 岡田”雪達磨”様、初投稿を戴きましてありがとうございます。
 投稿としては計4作目ですが、スーパーSF大戦ものとしては初めての投稿です。
 メチャクチャ嬉しいです。
 有り難く正史の一部として採用させて戴きます。
 確かに厳密に言えば私の構想とは少し方向が違うかな? ってな箇所もありますが、コレはコレでバッチリOKです。
 何しろ、私がSSを書くときにはその世界にその人数分の人間が居ると仮定して書いてますので私の考え・発想とは異なる意見がある方が良いと思っておりますので。
 また、自分だけで考えても自分の視点以外の着想は難しいのでこう言う形の投稿は世界を作る上で大変に嬉しいですね。(もちろん基本設定から大きく逸脱されると困りますが)
 では次回作を期待して待っております。EINGRADでした。
スーパーSF大戦のページへ





日本連合 連合議会


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