「竹上登志雄君」
 連合議会の行政組織特別委員会で、議長により発現を許可された一人の議員が壇上に向かった。
 加治内閣が成立した5月から7月にかけて、連合政府組織法案や防衛組織法案、新国籍法案、時空融合孤児援護法案など、一連の重要な法案の成立に与野党の攻防が続いた。


スーパーSF対戦外伝

加治首相の議

第五話 プロローグ 日本連合、国会事情

 日本連合国初代首相、加治隆介を指名したのは第二話で述べたように各平行世界の代表が集まった臨時会議であったが、これらの代表はそのまま国会議員として活動している。もっとも加治首相が新世界を生き抜く意気込みを示すために行政府を「連合政府」、内閣の長を「首相」と名乗るなど旧政府と異なる名称を付けたように、国会もまた連合議会と名乗るようになっていた。
 彼ら連合議会議員たちは数々の法案を成立させていったが、国会議員として優秀な知識と経験をもちながら平行世界代表枠から外れた者達の間には不満が広がり始めていた。新世紀元年も後半になると、彼らは今の体制が1票の格差を生んで公平に国民代表を選んでいないと、問題提起して衆議院開催運動を起こし始めたのである。
 確かに直ちに衆議院を開く必要性は政府内でも認識されていたが、平行世界毎に違う選挙制度の整合性をとるための研究が始まったばかりで、それも連合政府各機関の再編成や諸外国との交渉に忙しく、あまり進んではいなかった。どちらかと言うと与野党を問わず、連合議会のほうが進んでいた。現在連合議会は加治隆介が率いる "自由と責任党" が与党となり、加治とは別の世界で総理大臣であった竹上 登志雄 氏が率いる "新民自党" が野党第一党となっている。この2大政党に隠れてはいるが、社会主義系政党と共産主義政党が極僅かな議席を持っている。
 落選者(どう考えても一人の代表の影に多くの元国会議員がいる。柾木勝仁氏のように出身世界の国会議員や政治家が一人もいなくなったために代表になった例は少なかった)となった多くの元国会議員たちの知識と経験を利用するために審議制度の改革も行い、現職の連合議会議員を通してという制限はあるが、優秀な政治家ではあるが連合議会議員から外れた者達の法案を、議会に提出し参考人として説明できる制度を設けたりした。
 それと平行して、現連合議会議員であるか否かを問わず、元の世界で政党党首や国会議員を勤めた政治家を中心に連合議会改正委員会が作られ、新衆議院の開催を目指して議員数や選挙制度、選挙区割りなどの審議は進められていた。彼らの運動が実り世の中が落ち着いたように見えた新世紀2年に新生衆議院である「連合議会市民院」議員選挙が実行され、それまでの連合議会は新生参議院である「連合議会連合院」と生まれ変わるが、それはまた別のお話である。

 連合議会の法案審議は旧国会と同様に委員会制を採用している。旧国会と違うのは各委員会は常に国民に開かれるために、その審議は全国に専用チャンネルを確保したテレビ放送で流されている。
 時系列は前後するが、5月から7月始めにかけて開催された委員会から、高視聴率を取った上位3つの委員会審議を再生してみよう。

 まずは最高視聴率を取った5月下旬の社会福祉委員会から見てみよう。

 城戸 沙織 嬢は、時空融合孤児援護局局長の資格で社会福祉委員会に出席していた。
 グラード財団代表であることから臨時会議代表になっていた彼女が中心となって設置を提案したこの"時空融合孤児援護局"は、時空融合が原因で発生した膨大な数に上る孤児達をどう助けるかを検討する政府機関として、社会福祉省外局の特命福祉政策局として組織された。ちなみに社会福祉省は、新世界に対応するために中央省庁の再編を考えた加治首相とそのブレーンたちにより、行政機関の中で真っ先に再編された。薬害、医療事故、食品製造事故を繰り返す制度の不備を改革しないままこの世界にやって来た厚生省を、官僚の抵抗を挫くべき生け贄として選択した結果である。現に抵抗した官僚の大半は業務放棄で処罰され、3分の1は懲戒免職になった。それで業務は滞ったかというと多少ギクシャクしたが自治体に出向していた職員や一般職からの昇進、京都からの補充で直ぐに対応できる程度であった。何より自分たちが抵抗しても京都の連合王国政府から官僚が何時でも、しかも優秀な人材が補充できるという事実が示された結果、霞ヶ関の全官僚の抵抗は消え去った。そして厚生省から医薬品食料品の許認可権限は分離し、社会保障制度のみ所管する社会福祉省として労働省その他関連機関と共に再編成された。
 そして城戸沙織嬢は、提案者である事からそのまま時空融合孤児援護局初代局長に任命されていたのである。

「・・・城戸局長、貴方の提案はあまりにも革新的であるといえます。しかし、貴方は万が一のことを考慮に入れましたか?」
 委員会所属議員の一人が、時空融合孤児援護局の提出した法案、特別養子縁組法案に否定意見を述べた。これに対して城戸沙織が反論した。
「万が一の事とは、養子となった子供に対して養父母が虐待、つまり暴力や不当労働、性的強要を行う危険性についてでしょうか?それに付いては幾つかの事前調査とアフターケアを予定しております」
 法案は、子供を育てる意志を持つ社会人であれば例え独身であっても保護者と成り得る事が出来る様に、養子縁組の基準を解放といって良いほど緩和するものであった。また、僅かでも縁故があれば孤児の養父母になれるともしている。無論、そのままでは問題のある人間が養子縁組を行い子供に犠牲者が出てしまうことも考えられるので、これを避ける手段を講じる必要がある。城戸沙織はこの手段を説明し始めた。
 事前調査は、子育てに必要な経済力と親として正しい資質を有するかの両面で税務調査と性格診断を行うこと、アフターケアは養子縁組成立後定期的に追跡調査を行い、万が一虐待の証拠が発見できた(これには子供からの定期連絡が途絶えた時も含まれる)場合には直ちに親権の剥奪を行い子供を保護すると同時に制度を悪用した養父母に対し通常の2倍の罰則を執行猶予無しで課す、としていた。
「事前チェックを潜り抜け、犯罪組織に利用された場合など悪質な事例では、公私混同かもしれませんが私の財団からも協力させます」
「協力とは?」
 先ほどの議員が城戸沙織に質問をした。
「実力行使です」
 城戸沙織はそう言うと、懐から手のひらに隠れるほどの小さな置物を取り出した。その場に居た人々が怪訝な顔をしているうちに、沙織は自分の指先を噛み切り、流れ出た血をその置物に振りかけた。すると置物は眩い光を発し、その光は沙織の体を取り巻いた。そして光が消えた後は神秘的な神の鎧、女神アテナの聖闘衣を纏った城戸沙織の姿があった。
「無力な子供達を助けるこの制度を悪用する者達には、私を始め、88人の聖闘士が鉄槌を下すことを心得てください」
 もともと重大な社会問題化していた時空融合孤児問題の審議である上に絶世の美少女である城戸沙織嬢が出席するだけあって、この委員会のテレビ放送視聴率は始めから20%を越えていたが、このパフォーマンスの瞬間なんと50%を超えたそうである。もちろんこの中には、何故か紀州は熊野山中に出現したサンクチュアリに住むアテナの聖闘士たちが見ていた分も含まれている。
「ふん、鉄槌を下されるのは城戸財閥が最初だろう」
「兄さん、あまり過激なことは言わないほうが良いですよ」
「いいや瞬、一輝の言うことももっともだ。あの城戸の糞爺のせいで、俺たちがどんな目にあったか」
 星矢の台詞に瞬と一輝を除いた者たちがうんうんとうなずいた。・・・一輝?
「星矢と同じ意見とは、俺も鈍ったもんだ」
 その日一日サンクチュアリには燃え上がる小宇宙が絶える気配がなかったとか。
「兄弟喧嘩なら聖闘衣抜きでやって下さい」
 修理係のムゥ(年齢不詳の牡羊座)が次の日にぼやいたそうである。

 さて女神アテナの御威光も有ってか、特別養子縁組法は委員会、本会議共々3/4以上の賛成票を持って成立したのであった。もちろん聖闘士の能力を欲した五十嵐情報本部長の強い働きかけにより、彼らが特別職国家公務員に採用されたことは言うまでも無い。

 次に高視聴率を取った6月下旬の法務委員会を見てみよう。ここでは新国籍法案の審議がなされていた。

 連合政府が成立した直後から、帰る国を無くした諸外国人にも日本国籍を与える為に国籍法は改正されてはいたが、TDFからの情報や実際に異星人が確認されたことから、あらゆる全ての知的生命体を対象として日本の法律に従うことを条件に自ら申請すれば日本国籍の取得を容易に行えるように法律は改正される事となった。
 次に問題となったのは、自律人工知能である。つまり高度に発達した自律人工知能技術を有する「さがみの国特別自治区」出身の初瀬野議員から高度人工知能にも人権を認めて欲しいと提案されて来たのである。
 しかしほとんどの議員には自意識を確立した自律人工知能の存在は信じられないものであったので、多くの反対が起きた。そこで初瀬野議員の提案により、人工物であることを十分に証明されたアンドロイドを参考人として招致し、全議員の目の前でチューリングテストを実施して人間と区別が出来ないほど自律思考していることを証明する事になった。

「チューリングテストを実施する前に、ご存知無いお方のためにチューリングテストの御説明をします。この通り外部からは見えない二つの個室の一方に人間が、もう一方に人工知能体が入ります。そして同じ質問が二つの部屋に入っている両者に与えられ、その回答でどちらが人工知能かを観察者、この場合議員の皆様が判断なされます。判断に要する時間が長ければ長いほど人工知能は進歩していると言えます。どれくらい判断に有する時間が長ければ人間と同じ知能と言えるかは諸説有りますが、5〜10分以上が定説になっています」
 チューリングテストについて、このために呼ばれた専門技術者が議員たちに説明をした。個室といっても委員会室内での事、フレームに厚手のカーテンが引かれて、単に外側から見えないようになっているだけである。二つの個室の間には、やはり議員から見えないようにされた控え室が用意されており、そこには人工知能体と彼らを同じ人間として扱っている人々が待機していた。
「ではこれよりチューリングテストを実施します。最初のグループの方々、用意してください」
 法務委員長の発言により最初の一組がそれぞれの個室に入った。
「では最初の質問です。貴方はロボットですか?」
個室A:「いいえ違います。私は人間です」
個室B:「ボクはロボットじゃありませんよ、ロボットではなくてアンドロイドです」
こら〜、あ〜るっ。何のためにわざわざ国会に呼ばれたと思っとるんだ〜〜〜
 個室AからBに飛び込んだ鳥坂先輩が、あ〜ること本名 R田中一郎をアルゼンチンバックブリーカーで決めて個室から飛び出してきた。
「何のためって、・・・あぁっ私が人間並みのアンドロイドである事を証明するため、人間の振りをしつづけろと・・・」
「そう何度も言い聞かせたのに、お前ってやつは〜、うぉりゃ〜
 掛け声と共に、鳥坂先輩はさらに力を込めた様である。その証拠にあ〜るの首から腰から股関節から、みしみしと音が漏れ始めていた。
「あぁっ鳥坂さん、とても痛いではありませんか」
 あーるがそう言った途端、

「ああっ、首が取れてしまいました」
 その場に居た人々は、思いっきり引いてしまった。

 そして控え室の中では。
「ま、誠・・・、私は・・・あんなアンドロイドと同類とは見られたくは無いぞ(泣)」
「お〜よしよし、イフリータはほんま泣き虫やな。心配せんでも僕は同じとは思わへんで。第一、あーると同じタイプは他には無いちゅう話や。安心していいよ」

誠&イフリータ 愛の世界

 水原誠がイフリータを抱きしめつつ、二人だけの世界を作っていた。
 そして二人の周りには何時の間にかBGM:『小さな花』(歌:天野由梨、作詞:枯堂夏子、作曲:長岡成貢)が流れていた。
「いーなー、私も恋人が欲しいな」
 さがみの国特別自治区からやってきたアルファさんが指を口にくわえて、水原夫妻のラブラブパワーに耐えていた。
「ふ〜む、興味深い。みんなどういう技術で自律人工知能を実現しているんでしょうか。興味ありませんか?マルチ、セリオ」
 来栖川重工のメイドロボ開発チーム責任者、長瀬主任が同行してきたHMX-12とHMX-13に問い掛けてみた。
「はわわ〜〜」d(@@)b
「・・・」d('')b
 マルチはあーるの首が取れたショックで目を回したらしい。セリオは水原御夫婦の観察に夢中になっていた。

「委員長、なんかテストを続ける状況ではなくなったようですわね」
「そうみたいですね、わざわざ "さがみの国特別自治区" から出張されてこられたのに申し訳ありませんでした」
 テレビカメラから外れた場所で、話し掛けてきた技術者に法務委員長が応えている。
「いいえ、御気になさらないで下さい。私も自分と違うタイプのロボットに触れる良い経験をさせていただきました」
「・・・・・・・・・ハイ?」
「あれ、言い忘れていましたか?私も実はロボットなんです。」
 そう、最初来る予定だった先生の代わりに鷹津ココネさんが、絶句した法務委員長の目の前に立っていた。

 結局、日本連合全体で自律人工知能に人権を与えるのは時期早々と判断されて、自律人工知能先進地域である「さがみの国特別自治区」でのみ、人権を認める法案が成立したのであった。
 この審議の視聴率も20%から始まり、あ〜るの首が取れた時点で40%を記録したそうである。

 そしてこの時期3番目の高視聴率を取ったのが、7月初旬の行政組織特別委員会である。
 加治首相も出席して、あるメールに端を発した議論が始まっていた。
 それは"小さな一技術者"様からのメールであった。その一部を抜粋してみよう。


 平行世界の技術データを収集管理するだけでなくこの世界の技術者向け、特に民間技術者向けの「技術学校」のようなものを作っていただけませんでしょうか?
 それぞれの世界の技術者達が集い、それぞれの技術を教え合い、学び合い、かつ持ち寄られたデータを蓄積し、広く世間に公開することによってまた在野の技術者や起業家達を刺激し、新たな企業、新たな産業の発展を促す。また、それて平行して、志ある人々を集め、優秀な技術者として育成する。つまり、技術者統制機能、多様な技術のデータバンク機能、また新たな起業家達の支援機能を併せ持った機関を設立する。ということであります。

 このメールは加治首相だけではなく、主要閣僚や野党党首にも送られていた。これを受信した社会主義系の少数野党「社会主義平和連合」は、この提案に消極的な加治内閣を攻撃して自勢力拡大の為のポイント稼ぎとするチャンスを見出し、提案された機能を有する行政機関の設置に動き始めた。
 そして、今日この日に加治 首相からこのメールに対して回答が出されることになっていたのである。

「社会主義平和連合参考人、土肥垣 亘君」
 連合議会の行政組織特別委員会で、議長により発現を許可された「社会主義平和連合」政策スタッフの土肥垣氏が壇上に向かった。この土肥垣氏は加治首相と同じ世界の出身であるが、もともと社会主義系の政党出身であることから社会主義平和連合に所属することになった。多くの元国会議員と同様に連合議会議員にはなれなかったが、加治首相と同じ世界出身の経験を生かして政策スタッフとして政治活動をしていた。
「加治首相に問い質したい。時空融合以来、国民生活は史上最低最悪の失業状態を続けております。そんな中、国民の一人から有益な提案がなされました。失業した技術者たちを集めて、彼らの持つ技術を教えあい、再教育し、新しい商品開発をさせるものです。政府が発表した世界の情勢報告書には、わが国の技術力は世界から半世紀以上も遅れていると有りました。直ちに追いつくためにも今国民が持つ技術を取りまとめ、世界に通用する新技術を確立せねばなりません。そのためにもこの提案は直ちに実行すべき提案と考えます。なぜ加治首相はこの提案を受け入れて技術教育機関を創立しないのか、その真意をお聞きしたいものです」
「日本連合首相、加治隆介君」
 議長の指名により加治隆介が壇上に立った。
「まずこれだけは言っておきます。私は発信者の危機感は理解しております。また産業を発展させるためにも技術交流を盛んにすることも必要と考えております。しかし、それを行政機関が直接行う必要が有るのかと言うと、私は必要ないと思います。理由ですか?理由はですね、必要な機能と効果、社会の沈静化を見越して将来的にも機能するかとかいろいろ考えた結果、行政機関として設置する必要は無いと結論付けました」
 この発言に社会主義平和連合からやじが飛んだが、それをいちいち書き連ねるのはやめよう。
「私は所信表明演説で次のように述べました。『今の政府では従来の公共工事を中心とした経済政策を取る余裕はございません。その代わり、連合政府は新しい国際市場の確保と公平な通商ルール作り、交易路の確保と言った国家レベルでしか出来ない民間への支援を引き続き行い、その後は民間主導、規制緩和をどんどん進めてまいるつもりです』と。技術交流の名の元に技術者を拘束するようになってしまった場合、それは社会上の損失になってしまいます。戦後のメイド イン ジャパンのイメージを高めた数々の製品を作り出した技術の原点には海軍の技術工廠に有った物もあります。しかし海軍内に有った時にはその技術は軍事機密として扱われ日本経済には貢献しませんでした。国有鉄道も鉄道技術の発展に貢献しました。しかし親方日の丸精神におぼれ国鉄末期には累積赤字が膨らみサービスは最低でした。民営化するのに当時の内閣が全力を傾けなければいけないほど、問題だらけでした。持ち寄られた技術をどう組み合わせれば一番経済効果が上がるか、それを決める嗅覚が一番発達している者は民間の実業家です。そして本当に実力のある技術者を甘く見てはいけません。時空融合前から不況に喘いでいた大田区の工場街では、下請けの立場から脱出しようと協同で自分達の持つ固有技術の商品化を試み、インターネットを利用して直接ユーザーと情報交換を行って実際商売が成立し始めていたんです。政府といたしましては、これらの経験から技術者を直接取り込むような行政機関の設立は百害あって一利無しと判断しております」
 こうして、土井垣氏の企みは構想倒れに終わった。後に、社会主義平和連合の息がかかった人間がその技術教育機関の構成員にする、つまり一技術者の提案を大義名分として失業に苦しむ社会主義平和連合関係者を優先的に公務員にする計画が有ったとのニュースが流れたが、既に融合景気の波が高まりつつある中で日の目を見なかった技術教育機関の話など誰も関心を持たなかった。

「新民自党議員、竹上登志雄君」
 議長により新しく発現を許可された一人の議員が壇上に向かった。
 質問に立ったのは、元の世界では総理大臣であった竹上登志雄氏である。彼とその内閣は一自衛官が引き起こした国難を何とか乗り切り、その元自衛官が遺した『沈黙の艦隊・世界政府』構想を実現させようと帰国して活動を始めた途端、時空融合に巻き込まれた不幸な総理大臣であった。加治首相とその協力者たちの後手後手に廻り政府与党にはなれなかったが、彼とその後継者の実力は加治首相も一目置いており、5〜10年毎に政権政党交代が起きる理想的な与野党を築けるというのがもっぱらの観測である。
「では加治首相に質問します。首相は今回のご提案を意味が無いものとして捨て去る所存なのでしょうか」
「日本連合首相、加治隆介君」
 議長の指名により加治隆介が壇上に立った。
「ご提案には参考にすべき点が多々あると考えております。唯一ご提案どおりに出来ない点は行政機関として設立するただそれ一点だけです。これを除いた民間の技術交流支援は政府が率先して行うべき産業政策であるといえます。具体的な計画は関係省庁が立てている最中ですが、首相として来週までに次の4点に付いて説明できる予定であるとお約束します」
 この時加治が約束した事は次の4点である。
 まず、科学技術省技術管理庁が収集した各世界固有技術情報の公開。これは危険度の少ない技術情報であるならば自由に技術情報が閲覧できる体制を整えることである。もっとも実際にはこれを利用もするが、同程度に直接技術者や会社どうしが海援隊などのコンサルタント企業に情報を持ち寄って商品開発をする事例が多かった。
 次に技術交流団体への税制優遇措置。これは技術者が造る技術交流団体や実業として活動する技術交流コンサルタント会社等に、技術交流や新技術の開発で得られた利益に掛ける税金を減税するものである。
 3点目が特別融資制度の設立である。実際は金融機関の融資制度に新技術融資制度を追加するもので低金利融資減税を行い、金融の面から新技術開発を支援しようとするものである。
 そして4点目が意外と見過ごされがちな、訴訟の迅速化といった司法改革である。もっともこれは行政というより裁判所が行うべき問題ではあるが、経済活動する上でのトラブルを、法律上で迅速に解決する事が求められていたのである。

 この審議の視聴率は10%から始まり土井垣氏の論戦も腰砕けに終わったのだが、加治首相への期待からかそれでも最高30%を記録したそうである。


Ver.1.0の後書き
 まずは小さな一読者さんへ。あなたのご提案がアイングラッドさんを通じて知ることが無ければ、国会事情を書くことはあったとしても相当先のことに成ったと思います。これを書こうと思ったのは、ひとえに一読者さんのご提案をどう取り入れ、切り捨てる点はどう切り捨てるべきか、こう考えたからです。もっともアイングラッドさんから例の下書きを読ませていただいた時は、「民間主導の経済政策を取っているから行政機関は作らないだろう」の一言で済んだんですけどね。(^_^;)
 しかし、良い落ちがつかなかったな。精進せねば。


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