作者: OkadaYukidaruma
スーパーSF大戦 外伝



 新潟県のとある山中にポツンと一軒建つ倉庫。
 その周りを男達が囲み、その中に女性が一人入っていった。
 それらを見下ろす崖の上に男が一人、藪の中で潜んでいる。彼は倉庫に隠れる男を狙っていた。
 そのターゲットは自分に隠されていた真実を知り、妻からも、四六時中密かに付いていた護衛からも離れてその倉庫に隠れたため、護衛する側もフォーメイションに混乱が生じた。
 男はその混乱を突いてこの崖の上に潜むことに成功し、狙撃するチャンスを窺っているのである。
 日が落ち、月の無い夜空の下、ようやくターゲットが先ほど倉庫に入っていった女と共に外へ出てきた。だが暗闇で目標が見えない事に男は苛立った。それでも一瞬のチャンスを求め、ターゲットが居る方向に銃口を向け続けていた。
 現実に狙われている事を知らないターゲットは、傍らに立つ妻が夜風に震えるのを見て自分の上着を脱ぎ、彼女の肩に掛けてあげた。
 その動きを、ターゲットの着ていたワイシャツがぼんやりと発光してなぞっていく。
 暗闇の中、唯一発光するワイシャツをスコープに捉えた瞬間、スナイパーは「そうか!」とその理由に思い至った。
 倉庫の入り口に設置されていた集蛾灯のブラックライトが発する紫外線が、妻のために上着を脱いだ男のワイシャツを、その布地に含まれていた蛍光材を発光させたのだと、男が理解するより早く、彼の指は反射的に引き金を引いた。
 そして狙い違わず銃弾はターゲット、『サトラレ』であり世界初の証明された核融合発電理論を発表した物理学者の胸を貫き、致命傷を与えた。男はその手応えを感じていたし、またそうなる筈であった。
「?!」
 だが発砲した瞬間、男の目は一瞬の虚無を捉えた。それが何かを理解する間もなく、ターゲットは直前まで潜んでいた倉庫や隣に立つ彼の妻、そして倉庫の周りに控えていた護衛達とともに虚無に飲み込まれ、その世界から永久に消え去ったのである。
 その世界の人々は知る由も無かった。
 その瞬間、消え去ったのが狙撃されたサトラレ物理学者だけでなく、日本国内いや欧米を含む世界中の『サトラレ』と呼ばれる人々が、関係者関係施設とともに全員その世界から消え去った事を。
 この原因がある平行世界で爆発した時空振動弾が引き起こした時空融合の影響であった事を。時空融合の波はその世界固有で、かつ一番存在感がある『サトラレ』を連れ去っていったのである。
 残された男は一人もいなくなった草原を目の前に立ち尽くしていた。
 そしてこのときの彼は知る由も無かった。自分がただ一人、その瞬間の目撃者である事を。そのために、スポンサーから成果を疑われて報酬が支払われず、ただ働きになってしまうことを。;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン



大西洋調査艦隊物語 インターミッション

サトラレ




『あっ』
 西山幸夫は何かの音を聞いたような気がした。
 その直後巻き込まれた時空融合の赤い衝撃でその事は直ぐに忘れたが、あたりが静まると同時に胸に痛みを感じた。
『えっ? これって』
 そこを触った手が真っ赤になっているのを見て自分が狙撃されたことを西山は知り、そしてその場に倒れ込んだ。
 西山は声なき声で苦悶を周りに漏らし、それは時空融合の衝撃で呆然としていたすぐ傍に立つ彼が愛する妻、西山(旧姓)小松洋子を正気に戻した。
「西山君!!誰か来てっっ!お願い早くっ!」
 絶叫を上げた小松はすぐに夫を抱きしめてその場に横たえると、傷口を調べ始めた。
『小松、僕は死ぬのか?』
「そんなこと無いわよ、絶対助かるからねっ!」
 呼吸が出来ず苦しい息の下で西山は思考波で傷の具合を尋ねていた。
「大丈夫、貴方は死なない!絶対死なせないっ!!」
(傷は胸部に2カ所、心臓は外れているけど出血がひどい。すぐに止血しないと・・・)
 看護師の資格を持つ小松は、その知識をフルに活用して応急手当を始めた。確認したように心臓への直撃を免れていたが、左肺の貫通傷が肺の機能を損ねていた。もう一つの傷は心臓近くの血管を傷つけているが、幸いにもどちらの傷も直ぐに死ぬような傷では無い。
 しかし、小松は西山を励ましながら止血をしようとしていたが、道具無しでは心臓近くの傷はやはり思うように血が止まらなかった。どうしてもすぐに手術を始めなければ危うい状況になることは明らかであった。
 西山の思念と小松の絶叫は周りの護衛達にも届き、皆一斉に二人の元に駆け寄ってきた。
「早くタンカーだ!タンカーを持ってこい!」
「無線はどうした!?へりをよびだせ!」
 西山が狙撃されたことで、現場は多大な混乱に陥った。それでも男達はタンカーが無いので力を合わせ、肩に西山を乗せると麓の街へ移動を始めた。
『・・・光、光を呼んでくれ・・・光に僕の全てを伝えなければ・・・』
 運ばれながら、西山は自分の娘の光を連れてくれるように周囲に頼んだ。
「大丈夫、光を乗せたヘリと連絡が取れたわ。直ぐにここに来るわ、だからしっかりして」
 西山の思考波にあきらめが見えたように感じた小松が賢明に励ましていた。だが光を乗せてこちらに向かっていたヘリは、先ほどの不可解な衝撃で不時着していたのであった。乗員乗客には死傷者はいなかったが、やはり整備を完全に終わらすまで発進を見合わせていたのである。
 予定通りヘリが飛び立っていれば、この傷の具合からぎりぎりの所で搬送が間に合っていたはずなのに、と護衛達は悔やんでいた。否、それ以上に彼を狙うスナイパーの潜入情報を入手していたのに守りきれなかった事を悔やんでいた。
 西山幸夫は核融合炉開発を成功させた立役者である。
 西山が発表した核融合理論は他の科学者からも証明され、彼が自分の理論を元に実用核融合炉を稼動させる事は、数年以内に確定する未来であった。
 エネルギー問題を究極的に解決するそのニュースに世界中が喜び湧いたが、石油資源を独占して利益を上げていた者達は別であった。影響下に無い核融合炉に成功されては石油で利益を上げられなくなり、自分らが没落してしまうと考えたのである。
 彼らは自分たちの権益を守るため、核融合炉開発を頓挫させるため研究所に破壊活動を仕掛けた。しかもその際に、警告の意味を込めて西山の娘を逃げ遅れたと見せかけて殺そうとしたのであった。その陰謀は、娘を助けるために西山が脱出を阻むコンクリートの壁をクラッカー数個分の火薬で穴を開けるという活躍で挫くことが出来た。だが陰謀家達は妨害を諦めることなく、さらにスナイパーを送り込み確実に西山幸夫を殺そうとした。
 警備当局も、西山幸夫を殺してまで核融合炉研究を妨害しようとする者達がいる情報をつかむと、西山を守るために北海道の核融合研究所から彼の故郷である、この新潟県の山里に戻して守ろうとした。
 だが護衛達は彼を守りきれなかった。
 それもあってか護衛達は息が上がろうとも、懸命に西山を麓の病院まで運ぼうと奮闘していた。
 だが彼らが覚えていたはずの、街へと続く道は記憶にないほど折れ曲がり、そして街とは違う小さな村落に至ったのであった。
 これには全員が驚いた。これでは西山を治療できないと、全員が絶望した。
 西山も胸からの出血がひどくなり、さらに咳き込んで血を吐き出した。
『・・・死ぬ前に・・・光に・・・僕の全てを・・・』
「西山君・・・」
 ふたたびあきらめたような西山の思考に、小松はそれを覆して励ませる様な言葉を今度は出せないでいた。
『ねぇ、この先にパパとママがいるの?』
 その場に突然、西山と小松、二人の娘の光の声でない声が響いてきた。
 光の声に反応して、西山もまた声でない声を張り上げた。
『ひかる!パパはここだ〜』
 小松達もあたりを見渡し、麓の方からあかりがこちらへ向かって登ってくるのを発見した。
「お〜い!今行くぞ!気をしっかりと持て!!」
 明かりの方からも普通の声がかすかに聞こえてきた。月明かりに照らされて、大勢の人々が近づいて来るのが見えた。
 彼らが近づいてくる間にも、西山と光の間で誰も想像していなかった会話が始まった。
『いいかい?光。パパはもしかすると時間がないかも知れない。パパの全てを光に預ける』
『うん、パパ』
 そして西山から光に向かって知識の奔流が発生した。西山が生涯をかけて、光を始めとした子供達の未来のために妨害を跳ね返して再開しようとした核融合研究の全てが光に向かって流れていったのである。
 西山の周辺にいた人々も驚いたが、光を負ぶって駆けつけようとした対策委員、木下も面食らった。
(これが『サトラレ』同士の会話なのか。人の認識力を越えたスピードと情報量。疑問もその答えも一瞬に理解して、全てを共有していく・・・)
 世界でも限られた科学者にしか理解できない物理学理論を、3歳に満たない幼女の頭が理解していくのを一番間近で感じていたのである。
(普通の人間ではかなえられないパーフェクトコミュニケーション。これがサトラレの真の可能性なんだ)
 西山と光の親子は『サトラレ』が持つ他人に自分の考えが伝わる不思議な能力を使い切り、西山の持つ知識全てを光に伝えきった。その場にいた周りの大人達もそれを聞いていたが、その核融合理論を理解できた者はもちろん光の他にはいない。
 ようやく知識の伝授が終わると、西山は安心したように力が抜けていった。
『ふ〜、ボクの全部を伝えられたよ。小松・・・』
「?!駄目よ、西山君!まだ助かるは!諦めちゃ駄目〜」
 今にも逝きそうな西山を、小松が懸命に励まし続ける。そんな二人の横に突然、酸素ボンベがどかっと置かれた。
「奥さんの言うとおりだ。医者が来たからには死ぬような傷じゃない。気をしっかりと持て」
 酸素ボンベを置いた男がそのまま西山の口にマウスを押し当てた。その声は先ほど気をしっかりと持てと呼びかけてきた声であった。
「奥さん、このまま酸素を彼に与え続けてくれ。富永、麻酔!」
 ボンベの世話を小松に預けた男は後から到着した若い男に麻酔を取り出すように指示を出した。
「はい、K先生!」
 K先生と呼ばれた医者は西山に局部麻酔を施し、そして続けて渡されたメスや鉗子を使い、銃創の応急手当を始めた。目も鋭く、マントを羽織ったその服装は決して医者には見えなかったが、助手が照らすか弱い懐中電灯の明かりの下でも的確に手当を進め、小松が止めきれなかった出血を止めたのであった。
「さて、これで応急手当は済んだ。続きは病院でだ」
 医師はそう宣言すると、男達に引き続き彼を搬送するように命じた。彼の助手を務めた富永はそれに先立って村落へ走っていった。村民に手術への協力を依頼し、患者が病院に着く前に準備を終わらせるためである。
 ドクターKが先頭に立ち一行を麓に見えた村落に案内して移動する最中にも、富永が村中に呼びかける放送の声が聞こえてきた。
 そして村落を外れた位置にその病院はあった。外見は診療所と言っても良いほど小さく古びた洋館であったが、手術室は本格的な設備が整っており人工心肺装置まで置いてあった。
 この手術室で西山の手当は完全に終了し、夜明け頃には病室で麻酔が効いて静かに眠る西山と、手術が終わるまで起きているつもりがいつの間にか眠ってしまった光が仲良く並んで眠る姿があった。そして病室の前には小松と、対策委員の木下と西山を手術したK医師の姿があった。
「K先生、本当にありがとうございました。主人だけでなく、光まで手当てしてくださっていたなんて。なんてお礼を言えばいいか」
「いや、礼を言われることではない。医者として当然のことをしたまで」
 あの時空融合の直後、光と木下が乗ったヘリは時空融合に驚いたパイロットの手によって、この村の真ん中に緊急着陸した。
 そのとき、光が漏らした悲鳴に導かれてKと富永の二人が、そして村人が救出に出てきたのであった。
 二人は幸いなことに怪我一つ追わずに済んだが、この近くの山に重傷を負った西山がいると木下から聞いたKと富永が救助に向かったのである。
「あの〜、ところで貴方は?私たちはこの近辺に住んでいた筈なんですけど、貴方のような医者がいたとは知りませんでしたし、この村落も初めて見ました。いったいここは?」
「それを言うなら、この患者と症例はいったいなんだね?あの子の思考波を初めて聞いたときは驚いたが、木下さんを始めとしたヘリの乗員やあなた方まで当たり前のように振る舞っている。俺はこんな症例を初めて知った」
「え?!先生、『サトラレ』を知らないって・・・」
「どういう事ですか?」
「だから、その『サトラレ』とはなんだね?」
 これを聞いた小松と木下は顔を見合わせた。『サトラレ』、正式病名を『先天性R型脳梁変性症』は口に出さなくても思ったことが周囲約50mに筒抜けになってしまう謎の奇病である。原因となっている脳の異常部分を取り除けば思念を止めて普通の人間に戻せる治療法が確立されたとはいえ、その原因は今もって不明である。ただし、『サトラレ』は例外なく天才であり、精神力や情念が強すぎるため、水瓶から水があふれるように脳から思念がこぼれるのだとも言われている。西山も専門の物理学で核融合を成功させた様に彼ら『サトラレ』たちはありとあらゆる分野ですばらしい業績を残し、それもあってサトラレ保護法という法律をもって国家的に保護されているのである。それを知らないとはいったい何事と二人は思った。
 とりあえず『サトラレ』の事を簡単に説明したが、そんな中に富永が飛び込んできた。
「K先生!?テレビを見てください。東京が偉いことになってます!」
 富永は返事を待たず、待合室に置いてあるテレビをつけた。
 果たしてそこに映っていたのは、時空融合を伝えるニュースの画面であった。あの剣歯虎や日本狼が住まう原生林と化した皇居が説明されていた。
 そのうち誰もが初めて見る加治総理大臣が日本の現状を説明し始めた。
 これでようやくお互いがお互いに対して抱いていた違和感の正体を知ったのである。
 そして時空融合を理解した瞬間、木下は急いで局長と連絡を取らねばと思った。
「たっ、大変だ。小松さん、自分はこれから東京に戻って局長を捜し出してきます。それまで小松さんは二人をお願いします。先生もお願いします!」
 木下は返事を待たずに診療所を飛び出すと、昨夜村の真ん中に着陸したままのヘリに飛び乗って一路東京へ向かった。彼が探す相手はサトラレ対策委員会の国光局長である。テレビを見た限りにおいて東京の政府は混乱しまくっているようなので、会えるかどうかも判らないまま飛び出していったのだが、西山親子を守るためにはどうしてもサトラレ対策委員会の力が必要なのである。木下は一縷の望みをかけて東京へと向かっていった。
 それを見送った富永がドクターKに話しかける。
「大変なことになりましたね。自分も大学がどうなっているか」
「それを言っても始まらん。我々はどんな時も医師の本分を尽くすしかない」
 そして残された西山は、そのままドクターKの診療所に入院した。その後順調に回復し、1週間後にはベットから離れて移動できるようになった。
 入院中の間も彼の元に色々なお見舞い客が訪れた。
 たとえば西山親子の警護を担当していた対策委員の二ノ宮主任とその娘。
 二ノ宮主任と西山とは、研究所テロで幸子(光)を助けに火災現場に飛び込んだ間同士で面識があった。その彼が西山博士のお見舞いに、自分の娘を一緒に連れてきたのである。
「さぁ、幸子。西山さんに挨拶をしなさい」
「こんにちは、おじさん」
 まだベッドに寝ていた西山に挨拶した後、(これで良いの?)と問いかけていそうな目で二ノ宮を振り返った幼女である。この子は西山が光と会うとき光の身代わりを務めた女の子で、これまで西山博士と会うときは「パパ」と呼ばせていた。だから普通に呼びかけても良いのと、その瞬間まで疑問に思っていたのだ。
『こんにちは、幸子ちゃん。そっか〜、二ノ宮さんが光を助けに(炎に)飛び込んだ訳は、本当の娘さんだったからですね』
 今まで光と思っていた、命がけで助けもした幼女が、実は身代わりの別人であって、彼は幼女を見ながら変な気がしていた。
『あっ!でもそれを非難しているんじゃないですよ。ただ今まで自分の娘と思っていた子が実は違っていたなんて、変な気がするものだなと』
 西山の考えがダイレクトに伝わるため、特に女の子の方が泣きそうな顔になったので、西山は慌てて幸子を慰めた。
『ほら泣かないで。本当は僕の子じゃなかったけど、幸子ちゃんの笑顔は僕を元気づけていたんだから、もう一度笑顔を見せて』
 西山の優しい気持ちと頭に置かれた温かい手が幸子のこわばった顔をほぐし、僅かながら笑みを浮かばせた。
『そうそう。幸子ちゃん、良ければ光とお友達になってくれるかな?さぁ、光。幸子ちゃんと仲良くなってくれないか?』
『うん、パパ。わたし光。なかよくしましょ!』
 同い年の子供に興味があった光は、パパの言葉に素直に従って握手を求めて幸子に手をさしのべた。そしてこの二人は長くつづく友情をこの時から紡ぎ始めたのであった。
 この他にも小松が結婚する直前に『サトラレ』と結婚した先輩として相談に乗ってくれた星野夫人、『サトラレ』達の主治医を自任する山田教授(もっとも山田教授は西山の知識を完全に受け継いだという光の方に興味を持っていたようである)等々、色々な人が見舞いに訪れた。
 そして東京で発生した数々の事件後に日本連合政府が成立した5月1日、明日にも退院しようかという頃にサトラレ対策委員会の国光局長が見舞いに訪れたのである。
「元気そうで何よりです。どういう訳かあなたの検死報告書が私の机まで上がってきましてね」
 西山の病室に入ってきた初老の男はそれから話を始めた。思いがけない出だしに西山も小松もあきれた表情になって、思考と言葉がハモって伝わった。
「『局長、なんですかそれは・・・』」
「これが時空融合がもたらす冗談じみた状況って言う物でしょうか。どうやらあなたが本当に死んでしまった世界から紛れ込んだようです」
 ちなみにその検死報告書には、西山の死亡原因を心臓近くの2カ所に及ぶ傷からの出血多量によるショック死となっていた。同時に死亡の直前、西山 光に彼の核融合理論のすべてが受け継がれている報告書も付いていた。こっちはこの世界でも起きていたことであるが、時空融合の次の日に木下が報告に来なければ国光は検死報告書の情報を信じていたところであった。
「さて、お二人には良いニュースと悪いニュースがあります。どちらからお伝えしましょうか」
 西山は光共々自分自身には秘密にされていたとは言え、国家の保護を受けていた身であった。時空融合後、政府が日本連合政府に変化した後もその立場に変化があるかどうかで、光の将来を左右するのである。国光局長がもたらす情報は二人にとってとても重要な物である。
「では、悪いニュースからお願いします。『局長のお顔には笑顔が出ています』それほど悪いニュースではないでしょう」
「おや、表情に出ていましたか」
 国光局長は一旦笑いながら、ふたたび顔を堅い物に戻すと『悪い』ニュースから伝え始めた。
「まず西山博士が戻りたがっていた研究所ですが、その希望を叶えることが出来なくなりました」
『まさか出現しなかったんですか?』
「いえ、出現してきたことはしてきたんですが・・・」
 国光局長は時空融合直後に核融合研究所で起こったことを説明し始めた。
 西山幸夫が単身赴任し、実用核融合炉理論を発表し実用化研究に励んでいた北海道核融合研究所はこの世界でも北海道は名寄に出現した。しかし運が悪いことに、その近くに共産主義国家日本人民共和国、通称『赤い日本』も出現していたのであった。北海道核融合研究所は時空融合後散発的に行われた赤軍のゲリラ活動のターゲットにされたのである。
 おかげで研究所は赤軍と自衛隊との戦闘に巻き込まれ、研究所員は札幌まで避難し、研究所そのものは廃棄するしかなくなったのであった。
「つまり、今の連合政府としても核融合のような重要な研究を、何時戦場になるか判らない最前線近くで行うことに難色を示しているのです」
『そうなんですか・・・』
 西山の感情は、落ち込んだ思考波という形で表に現れた。
「それで局長、悪いニュースはもう無いんでしょうねぇ」
 それを励ますように、小松がわざと明るい調子で、局長に先を勧めた。
「まぁ、そうです。良いニュースは幾つもありますが、悪いニュースはあと一つだけです」
 国光局長は笑顔に戻ると、良いニュースを伝え始めた。
「でも最後の悪いニュースの前に、まず、あなた方の立場が変わらなかったことからお知らせしましょう」
 この世界に出現した『サトラレ』は、西山親子だけではなかった。サトラレ対策委員会が把握している14名と彼らの家族、その周りで護衛に付いている対策委員達、そして北海道核融合研究所の様に彼ら『サトラレ』が活動している関係施設全てがこの世界に出現したのである。もっとも日本西南の孤島に一人暮らしをしている白木重文と木村 浩については普段使用している携帯もインターネットもダウンしていたため、後日海上保安庁の巡視船に確認に行って貰うまで連絡は取れていなかったのだが。
 木下を始めとした『サトラレ』を保護していた委員達の連絡が入る中、それを知った国光局長はこの世界でも彼らを守るべく時空融合直後の数日間、政治の中心となる市ヶ谷の防衛庁へ向かった。だが、国光は良い感触を得られなかった。
 その日は臨時政府が立ち上がる前で、加治隆介を始めとする現職経験者問わず総理大臣が大勢集まって少しでも方向性を見いだそうと話し合っている最中である。自分では重要と思ってはいても、総理大臣達から見れば『サトラレ』は初めて聞く話であり重要なこととは受け取られなかった。そう、国光局長にとって不幸なことに彼の上司である総理大臣は来ていなかった。どうやら『サトラレ』に引きずられて出現した人々は、彼らが直接知る周囲の人物かサトラレ対策委員会の面々でしか無かったようである。
 そういう訳でその日の局長は総理大臣達との面会も断られ、その他諸々の人々と同じく次回の面会予定日を予約して置くしかなかった。
 気落ちした国光局長はこれからの考えをまとめるべく、大学生時代の下宿跡地へ赴いた。彼はそこでサトラレ保護を一生の仕事にすべき決意をする切っ掛けとなった人物と死に別れていた。『サトラレ』で悩むことがあると国光局長はいつも彼女を思い出していたのである。今回も少しでも考えの足しになればと、悲しい思い出の地へ足を運んだのである。
「これは・・・」
 その場に立つ国光局長は自分の目を疑った。火災にあって焼失したはずの、彼女が住むあの下宿が目の前に立っていたのである。半信半疑で中にはいると、果たして彼女の思考波が聞こえてくる。
『またお巡りさんかしら?また変な目で見られるの・・・』
 これを聴いて、国光はこの時ばかりは時空融合に感謝した。力及ばず、自分の目の前で死を選択した彼女、日本で最初に確認された椎名由紀と再開できるのである。彼は喜び勇んで二階に駆け上がり、彼女の部屋のドアを叩いた。
「ごめん下さい。椎名由紀さん。国光ひろみです。お話しがあります」
「国光ひろみだって?!」
 意外なことに若い男の声がした。その声と同時にドアが開かれ、局長の目の前には大学に入りこの下宿に越してきたばかりの若い自分が立っていた。
(こういう事も想像すべきでした・・・)
 国光局長は、若干嘆いた。
 とりあえず三人で話し合えた国光局長は、サトラレ対策委員会の責任者として日本で確認されたサトラレの全てを保護してきた事と、かなりのサトラレがこの世界に出現してきたことも伝えた。そして・・・
「椎名さん、サトラレ対策委員会の局長として貴方も保護下に置きたいです。でも以前の世界ならともかく、時空融合で政府が消滅した今、これから作られるであろう新政府にサトラレ対策委員会が同じように設置されるとは限りません。このままでは保護してきたサトラレ全員が貴方と同じようにサトラレであるために苦しむことになります」
 『サトラレ』がサトラレであることを知るのは最悪の事態である。
 国光の前に座る椎名由紀が死を選んだのは、自分の心をさらけ出して生き続けることに疲れたからである。二人目のサトラレ、白木重文はPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患った。平たく言えば対人恐怖症である。サトラレであるが故に心を覗かれ続け、逆に社会を拒絶するようになり、今でも孤島で一人暮らしを続けている。彼はサトラレ保護法の成立に力を尽くしたが、その時「サトラレであることを知るのが一番辛い。サトラレであると知らなければ平温に暮らせていた」という意見を残した。それを取り入れて三人目のサトラレからは本人に気付かれることの無いように、国家を上げて『優しさからでたウソ』を吐き続け、『サトラレ』であることを知らせないように保護し続けたのであった。
 それでも彼らの成長と行動半径の拡大に警備体制が追いつかず、無理が出てきたのか西山親子以外にも『ウソ』がばれてしまっていた。
 そして例外なく、自覚したサトラレはパニックに陥り、それまでの生活が出来なくなる。
 小学生のサトラレ、木村 浩も自分が『サトラレ』であることに気が付き、やはりパニックになって人が居ない山の中に逃げ込んだ後、白木の住む同じ孤島で一人暮らしをすることになった。
 西山親子の場合、西山幸夫が小松のいる家に帰ってくることが解っていたため光をそこから離れた場所に連れて行った。しかし、二人とも感情が高ぶるといつもの数倍数十倍も思考波が広がるのである。
 光の場合は外で蜂に刺されて、西山の場合は自分の所為で崖に落ちそうになった小松を何とか掬い上げたことにホッとして感情が高ぶり、二人がお互いを感じ合うまで思考波が広がってしまった。その結果、二人は思考波で会話し、自分たちが親子で『サトラレ』であることを自覚したのである。そして、もう人間社会で普通に暮らせないことを知って絶望した西山幸夫は、この一編の冒頭のように一人山中に閉じこもっていった。
「椎名さん。貴方に政府を説得する証人になって、『サトラレ』を説明する手助けをしていただきたいのです」
「そんな、あんたは椎名さんがどれほど苦しんだか、それを十分知っているんでしょう!?それがなんでそんな苦しめるようなことを頼むんです!?」
 国光局長のお願いに、若い方の国光が非難の声を上げた。だがその非難通りであることを十分自覚している局長は、あえて反論せず、繰り返し椎名に頼み込んだ。
「お願いします、椎名さん。自分が『サトラレ』であると知りながら、政府に『サトラレ』を説明できる人はもう貴方しか居ないのです」
 国光局長は椎名に頭を下げた。自分を『サトラレ』だと自覚している者は、椎名、白木、木村、星野、そして西山親子だけである。しかし、先にも言ったように白木と木村はこの時点で音信不通。連絡が取れてもPDSDを患っている白木に大勢の人々の前に立つかもしれないことはもう二度と出来ない。小学生の木村 浩にも、幾ら天才『サトラレ』であろうと才能だけで政府を説得するのは無理であろう。ロケット技術者の星野勝美は開発中の事故で脳を損傷し『サトラレ』の能力を失っていた。過去の蓄積があって引き続きロケット開発の責任者を務めていたが、思考が漏れなくなったのと引き替えに『サトラレ』特有の天才的思考能力も失い、今は全くの普通人である。西山親子も重傷者と幼児である。幸夫は病院から出すことは出来ず、光も父の知識を受け継いだとは言えそれを一般人に解るように説明するには無理がある。
 そして自覚していない『サトラレ』に真実を告げることは既に述べたように問題外である。『サトラレ』を自覚し能力を説明できる者は、本当に椎名由紀しかもういないのである。
「お願いします。十四人もの彼らを助けられるのは、もう貴方しかいないのです」
『解りました。でも、なぜ貴方がそれほどまでサトラレを助けようとする、その理由を教えてくれませんか?」
 椎名由紀が手を差し出して、国光に協力することを約束してくれた。ただ一つの質問と引き替えに。
「それは、ですね」
 ここでちらっと若い自分を見て、
「彼が告白できなかったら教えることにしたいのですが・・・駄目でしょうか?」
 そして数日後、加治総理との面会前に(流石の加治隆介も体一つだけで全ての面会希望者に会うことは出来ない)日本全国から集まってきた科学者達が参加する、後の総合科学技術会議に繋がる科学技術審議会に国光局長と椎名由紀の姿があった。国光はそこで『サトラレ』を説明するつもりではあったが、審議会は時空融合の解明の方に力を入れていた。だが、『サトラレ』の存在がその解明を押し進めた。
 椎名由紀は天文学者を希望する大学生ではあるが、その場でも『サトラレ』の天才的能力を発揮し、科学者達が次々に出す時空融合の仮説をその場で理解し、分析し、矛盾点、さらに証明する必要がある理論を次々にまとめていった。
 椎名由紀が理解した理論は、また科学者達にフィードバックされて行き、西山親子ほどでなくても『サトラレ』の能力抜きで話し合うよりも遥かに早く、科学者達の間で時空融合の理論的裏付けを一致させるに至ったのである。
 もちろんこの場で成立したのは理論も理論、全ての解決に向かう糸口だけでしかない。完全に証明するにはさらなる観測と理論構築が必要であるが、科学者達はこの結果に至る要因になった椎名と『サトラレ』の存在に興味を持ち、彼らが今まで受けてきた措置をこの新世界でも存続することに全会一致で賛成したのであった。
 そしてその意見は臨時政府、敷いては新生日本連合政府でも取り上げられ、旧世界でも一部の世界でしか成立していない法律を融合後も他の世界由来地区で問題が発生しない限り全国的に公布する方針を取る根拠の一つとなった。
 長々と語ってきたが、つまり日本連合政府でもサトラレ保護法はそのまま運用され、『サトラレ』達はサトラレ対策委員会で引き続き保護されることになったのである。ちなみにサトラレ対策委員会は行政省庁が落ち着くまで首相府で仮に預かることになった。

 そして、病室では国光局長が西山の進路を説明し始めた。
「と、言うことで西山さんはこのまま我々の保護下に置かれ、核融合研究に励んでいただくことになりました」
『「本当ですか?』」
「ええ、科学技術審議会に参加していた科学者達が博士の経歴に興味を持ち、論文を評価していただきました。また、政府の方も貿易が途絶えた現在、至急エネルギー自給体制を整えるために博士にも協力していただきたいと言うことです」
 国光は彼が退院次第SCEBAIへ行って貰い、そこで核融合炉研究をして貰うという政府の計画を伝えた。
 もちろん小松も光も一緒である。既に対策委員の方で新しい住居の準備を手配済みで、後は彼らが体一つで移動するだけである。
「では、私はこれで失礼します」
 話しが済み伝えることは全て伝えたと国光は思い、東京へ戻るつもりで腰を上げた。だが、まだ一つ話してくれていないことがあるのを思い出した西山は、彼を引き留めた。
『あぁ、局長。悪いニュースがあと一つ残っていた筈ですが』
「あっ、申し訳ありません、私としたことが」
 西山の思念を受けて、国光は再度椅子に座り直した。そして大変申し訳なさそうに、悪いニュースを伝え始めた。
「ご存じのように色々な世界が混ざり合ったのが今の日本なのはご承知ですね。実はその中に、既に核融合炉の発明に成功した世界が出現していたのです。西山博士に行って貰うSCEBAIも、実はその一つなのです」
 それはご存じ、ARIELに搭載されているトカマク型レーザー核融合炉のことである。これを聴いた西山は、俄然興味を持ち始めた。
『トカマク型レーザー核融合炉だって?!一体どんな構造なんだろう、早く確かめてみたい』
 西山の知識ではトカマク型核融合炉とレーザー核融合炉は一体化できる物ではなかった。そんな想像もしていなかった核融合炉が存在することを知った西山は、自分の先を行く論文を見つけたとき以来の興奮を抱いて活発に思考し始めた。その結果、彼の思考波はまたいつもの到達距離を遥かに超えて30Km先にまで及んだのであった。



エピローグ

『あっ、パパの声だ』
 村はずれの雑木林で遊んでいる光達の元にも西山幸夫の『声』が届いた。西山夫婦と国光局長の難しい話しを避けて、二ノ宮主任が自分の娘と共に光を連れ出していたのである。
 二ノ宮主任以下サトラレ対策委員会の面々が離れて見守る中、光と幸子は仲良く落ち葉やドングリを拾い集めて遊んでいた。この子達が遊ぶ雑木林は、時空融合前には周りとはまた別の季節であったらしい。
「『ほんとう。おじさん、またすごいことおもってる』」
『あれ?』
 幸子が口に出した瞬間、光は違和感を覚えた。パパの『声』が聞こえたときのように、幸子の声も聞こえたのである。それは周りの対策委員達にも伝わった。
「光ちゃんとは別の声なのか?」
 そんな疑問が浮かぶ中、二宮主任が光と幸子に近づいた。
『今のはどちらの声なのかな?』
 今度は大人の声が聞こえた。
 それは光には二重三重にも聞こえた。つまり、二宮主任の疑問の考えが光になぜか聞こえ、それが光のサトラレ能力によって二宮主任や周りの委員達に伝わり、それをまた光が聞いて・・・ということになっていた。
『きゃっ』
 理屈は解らないまま二宮主任や幸子の考えを読み取っている感覚に驚いた光は、小さな悲鳴と広大な思考波を出すと同時に、手に持っていたドングリの実を落としてしまった。その瞬間、周りに伝わっている光の思考波から主任と幸子の思考が消え去った。
「大丈夫か!?」(いったい何が起こっているんだ?)
 あわてて二宮と幸子が光に駆け寄ると、今度は幸子が不思議そうな顔をして言った。
「あれ?パパもサトラレになったの?」
 幸子は二宮主任の思考が聞こえたのであった。その子のポケットには小さなドングリの実が一つ入っていた。

 二人が集めたドングリの中に後に「テレパ椎」と呼ばれることになる、それを身につけると周囲数メートルにいる人の考えを読み取るテレパシストにしてしまう、不思議な木の実が有ったことが解るのは直ぐのことであった。



おまけ  サトラレ達のその後

 椎名由紀。政府への説明を終えた彼女は天文学者への道を進むべく、サトラレ対策委員会の保護の元、大学生活に戻っていった。
 苦労の末に最短期間で単位を取り、新世紀2年からは院生として国立天文台ハワイ観測所に暮らしながら博士号を取得した。しかし大きな評価を受けながらも、やはり他人も一緒に暮らすためストレスが溜まっていた。
 そのうち日本連合も社会的に安定し、技術の普及が進むにつれ、あの『ふわふわ』を使った高度3万メートルに常駐する成層圏プラットホーム計画が実行されることになった。データ通信や気象観測などで人工衛星とはまた違った角度で利用出来るのが成層圏プラットホームである。
 最初無人で実験されるはずの1号機に天体観測機器も搭載されることに目を付けたサトラレ対策委員会が、椎名由紀を観測員として乗り組ませることに成功し、彼女は新世紀3年以降そこで暮らすことになる。

 白木重文は、今でも孤島に一人暮らしを続けていた。
 彼も国光と連絡が取れ、サトラレの先輩として日本連合に協力することを誓った。彼の場合は科学知識よりも、彼と共に出現した彼が保有する会社を通じた経済支援、技術支援である。もっともインターネットが完全に復活するまで、彼の能力がフルに使われることは難しかったが、それでも彼の経済分析能力は今の日本でも有数な物である。
 3大財閥とはひと味違う支援に、日本連合は助けられていくことになる。
『・・・白木様何時までも貴方のことを愛してます。          フェイ』
 東南アジアから届いたその手紙を読み終えた白木重文は子供だった彼女を思い出し、笑みを浮かべた。彼の元に東南アジアから女性が一人嫁いでくるのは、そう遠くない日のことである。

 里見健一は外科医のサトラレである。人を救うのが生きがいであるのが患者にストレートに伝わるため、時空融合後の今でも彼を主治医に希望する患者は引きも切らない。
「どうだね、この術式は・・・」
『凄い、あんな技法があったなんて』
 ドクターKがとある患者に手術を施し、それを山田教授の解説で里見健一が見学していた。手術も無事に終わり、出てきたドクターKに里見が声をかける。
「『凄いです、K先生。今回の術式も大変参考になりました』」
 サトラレ嫌いの山田教授がサトラレの能力を今は素直に認めていたので、山田は里見の外科医としての才能を完全開花すべく指導している毎日である。もっとも当人はその動機も自分がサトラレであるとも知る由もないが。
 また西山以来サトラレの存在を知ったドクターKも同じ外科医として彼と交友関係を持ち、山田教授と協力して里見健一を鍛えていた。

 木村 浩、小学生のサトラレである。白木と同じ孤島に住むが、連合政府は彼を江東学園に呼び寄せられないか検討し、サトラレの思念波を物理的に遮ることが出来ないか、科学者達に研究を依頼している。

 片桐りんは思ったことをすぐ口に出す女性のサトラレである。今では環境省の地球環境局に属し、あちこちの大学や研究期間と協力して時空融合後の地球環境を研究している。プロ棋士、宮本名人との婚約も決まり、彼女は幸せの真っ最中である。

 その他にも、時空融合後の航空宇宙技術研究所で地道に航空宇宙機の開発に携わる星野勝美、高校卒業後の進路に江東学園大学部を希望し始めた大槻 翔、世界の変化も関係無しと気に入った風景を描き続ける画家の田中 歩、連合政府与野党間で連合議会議員選挙へ出馬してもらおうという考え(水面下の引き抜き合戦)があるとも知らず市議会議員として活動し続ける岩田 治郎、等々今の日本で活躍し始めたサトラレ達がいる。

 またアメリカ合衆国でも唯一、彼女が住む研究都市毎出現したクリスティン・ブラウンもいる。アメリカ合衆国のチラム化と共に彼女にも激動する運命が待っているが、それはまた別の機会に。

 そして一家を挙げてSCEBAIに移り住んだ西山幸夫は、何よりも先にエリアル搭載のトカマク型レーザー核融合炉に取り組んだ。
 彼は自分が持っていた知識とSCEBAIで学んだ新しい知識を発展させ、エリアルに搭載されてはいるが試作品とも言えるいまいち不安定だった核融合炉を、市井の技術者にも扱える実用核融合炉として完全な物に仕立て上げたのである。
 その結果、5年後にはかなりの発電所がAN型(エリアルと西山それぞれの頭文字を取ってこう呼ばれた)核融合炉で発電するに至る。
 小松洋子も彼と光と3人で暮らせることに満足していた。広大なSCEBAIの敷地の中でも他人から離れた所に新居を構えることになったがそれでも不便に思ったことはない。それでも小松は強すぎる光の思考波を抑えられないか他の世界を調べ、後年、神鉄という物が強力なテレパスの読心能力を遮っていた事を知り、それを使おうと手配することになるがそれは別の物語である。


後書き

 と言うことで久しぶりの新作は、「サトラレ」(佐藤マコト、講談社イブニングKC)からです。
 この作品は好きなんで、こんな感じで参加させました。
 そしてとうとう2005年10月25日、第2部開始。\(^-^)/バンザーイ
 ついでに西山君の出身が新潟県南部らしいことも判明。
 そしてとうとう2006年4月21日、コミック新刊発売予定。\(^-^)/バンザーイ、/( )\モヒトツ、\(^o^)/バンザーイ
 「K2」も、その村が東北地方かと最初考えていましたが、まぁ雪深そうだし過疎の村は新潟にも山ほど有るし(をぃ)、時空融合で両者が隣り合わせで出現したと言うことにしました。
 本当は別の地方だったら、ごめんなさい。

今回の元ネタ
本文
元ネタ
原作者
コメント
サトラレ
サトラレ対策委員会
サトラレ 佐藤マコト 後書きの通りです
ドクターK、富永、村落 K2 真船一雄 現在イブニング誌に連載の方です。最近名前が判明。しかも漢字で。少年マガジン連載のドクターKはKAZUYAで済んでいたのに、えらい違い。
ネタとして『K対K2対BJ史上最大の対決』も考えましたが諸般の都合により没(^^ゞ
テレパ椎 SF短編「テレパ椎」 藤子・F・不二雄 サトラレ→テレパシー→テレパ椎という風に思い出しました。まぁ乱用すると人間不信に陥るでしょうねぇ。
このギミックをこれからどう使おうか?


 <アイングラッドの感想>

 OkadaYukidarumaさんから「大西洋調査艦隊物語 インターミッション サトラレ」を戴きました。

 私自身が「サトラレ」を読んでいないのでなんですが、スーパーSF大戦の視点からすると随分と日本連合の科学、特に神秘学の発展に影響がありそうです。

 それから、出て来ましたスーパードクターK。 この人の活躍も期待したいところです。

 では、頂いてから結構時間が経ってしまい申し訳ありませんでした。




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