作者:EINGRAD.S.F

スーパーSF大戦 23話


プロローグ3



 さて、このSCEBAIの訓練場はロリアル専属ではない、各スーパーロボット達が機体の調査や技量訓練の為に使用しているのであるが、戦闘用に特化した設計のスーパーロボット達に比べて(ARIEL&ロリアルも戦闘用として最適の設計と岸田博士は明言していたが)異彩を放つ物である事に違いない。
 そんなエピソードのひとつ。
 ロリアルが訓練を初めて2日目、上空ではゲッターGチームが過酷なGに耐えつつ合体特訓を繰り返していた。
 既に高度10,000メートルでの訓練に何の支障も無くなった流竜馬、神隼人、弁慶の三人は気流が激しく渦巻く対流圏、つまり地上付近での訓練に移った。
 ほぼ無風の成層圏に比べて対流圏では気流の変化が激しく合体に失敗する要素が格段に増えていた。
 それはなにも気流だけではなく、地上の障害物にも言える。
 異常に頑丈なゲッターと言えど、戦闘速度で地上に激突すればパイロットは只では済まない。
 正に命がけの特訓と言えよう。

「行くぜ竜馬! 最初はゲッターライガーから行かせて貰うぜ」
「了解だ隼人! オープンゲーット!!」

 ゲッタードラゴン形態で急降下を続けていたゲッターは瞬時にして三機のゲットマシンに分離した。
 SCEBAIの訓練場は非常に広大で、三機の航空機が音速に近い速度で降下しても近隣の市街地に衝撃波が届かない程である。
 隼人は先頭をきって降下を続けた。

「おぉ〜い、そんなに早くすんなよぉ」

 弁慶が隼人に抗議するが、隼人は歯牙にも掛けず増速を続ける。

「へっ、実際の戦闘じゃもっと無茶をするんだぜ?! これくらいでビビっちゃ話にならないんだよ。チェーンジゲッターライ…、ん?」

 隼人が地上の様子を見ると、地上に人影が見えた。
 高度計を見間違えたかと思った隼人は一瞬計器に気を取られた為に操縦かんを引くタイミングを誤った。

「隼人ッッ!!」

 竜馬の声に我に帰った隼人は瞬時に操縦かんを引き起こした

「クッ! この野郎っ!!」

 正に間一髪のタイミングで隼人の乗ったゲットマシンは地上スレスレをすり抜けて行った。
 その瞬間、地上にはゲットマシンが引き連れて来たソニックブームが地上に叩きつけられ、地上にあった物は突風と共に空中へ巻き上げられた。
 合体準備状態であったため、隼人の後に続いていた弁慶と竜馬も続けて地上スレスレで引き起こしに入っていたのだが、そこで彼らは衝撃的な物を目にしてしまった。
 地上で訓練していたロリアルの腰部に基部を持ち、釣鐘状になった布状のカウンタースカートが風で捲れ上がっていたのだ、まるで神風の術である。
 アフロダイA、ダイアナンAよりもより人型に近いロリアルのそれに思わず竜馬と弁慶の目が向く。

『きゃあああああっ! エッチィ! 何すんのやおっ!!』

 ドゲシッ!!
 反射的にノリコがロリアルの足を使って繰り出した蹴りがドラゴン号のテールを蹴飛ばした。

「どわぁっ!」

 一気にバランスを崩したドラゴン号は勢い余ってポセイドン号に激突、二機はもつれるようにして山の向こうへ消えて行き…数瞬後に地響きが届いた。

『はらー…』

 ノリコは飽気に取られた顔で立ち昇るキノコ雲を眺めてしまった。
 その後、救急車や消防車は駆けずり回るわヘリは飛ぶわB17は緊急離陸するわで大騒ぎとなってしまった。
 流石に頑丈なゲッターの機体とパイロットだけに小破で済んだのだが、後にノリコはスーパーロボットパイロット達の間でゲッターを墜としたパイロットとして妙な尊敬を集める事となってしまったのである。
 唯一被撃墜を逃れた神隼人のコメント:「オレはボインちゃんが好きなんでな」だそうである。




 格闘訓練

 バスタービームの砲撃用としてあるマイクロガンバスターであるが、人型である以上近接格闘戦も想定に入っている。
 その為の訓練も実習に組み込まれていた。
 その仮想敵機(アグレッサー)になったのが、ベテランパイロットである兜甲児とマジンガーZである。
 普段は兜式反重力装置の研究に従事している兜だが、生来の性格が彼を研究室に留めて置けず、時々ストレス発散の為に愛機マジンガーZの操縦を行っていた。
 この日もたまたまスケジュールがロリアルの格闘訓練日に重なっていた為にノリコの特訓に付きあう事になったのだ。
 さて、元々超合金Zで作られていたマジンガーZは後の改修の際に超合金ニューZに換装されていたのだが、装甲が硬いという特性から相手の火器をくぐり抜けて格闘戦で相手を消耗させて必殺技で相手に止めを刺す「ロボットプロレス」タイプの戦闘パターンを持っていた。
 その為、兜は素手(ロケットパンチを含むが、百歩神拳みたいな物と考えていただければ)での戦闘技術が優れていた為、仮想敵機役にはうってつけだったのである。
 ロリアルの身長は17.5メートル、対してマジンガーZの身長は18メートル。
 ほぼ同身長であると言う事も格闘戦の訓練には最適だ。これがグレートマジンガーの25メートル辺りでもかなりキツイのだが、身長が38メートルのゲッター1辺りになるとよほど格闘能力が優れていないと話にならない。
 そうした点で言えば、自分よりも大きな機械獣と格闘したマジンガーZや「大雪山降ろし」と云った大技を持つゲッター3の巴武蔵(故人…であったが、後に時空の揺り戻しにより出現、生存が確認される事になる)は手練れと言える。
 さて、この日の訓練にはロリアルのタカヤノリコ+アマノカズミ、マジンガーZの兜甲児と補助としてマリア用に再設計されたミネルバX(有人機)の姿が有った。
 既に天才の血筋からか、博士として活躍している甲児も二十代であり、少しはあの熱血も収まって…いるとは云い難かった。

「おい、タカヤって言ったな!」
『ハ、ハイ!』
「今からこの兜甲児様とマジンガーZが相手になってやるから覚悟して置けよぉ!」

 そう言うと甲児はマジンガーZの人差し指で「ズビシッ!」とロリアルを指差した。
 バリバリの戦闘ロボットであるマジンガーZにそう言われてノリコは思わずひるむ、が次の瞬間マジンガーZの後頭部に巨大なハリセンが叩き込まれる。
 「スパーンッ!」と良い音を立てて炸裂したハリセンによってマジンガーZのコクピットに乗っていた甲児は不意の衝撃に見舞われた。
 マジンガーZのコクピットは機体の動きがダイレクトに伝わる為、パイロットに優しい設計では無い。それを対衝撃用の戦闘服を着る事で対応しているのだが、後頭部からの衝撃は乗用車で追突された運転手が鞭打ちになるように大変に対応が取りづらい。
 くらくらした頭を落ちつかせながら甲児は後ろにいたミネルバXに怒鳴りつけた。

「マリア! いきなり何すんだよっ!」
「甲児! なに訓練で熱くなってるのよ!? 傍から見ていて、何か弱い者イジメしているみたいに見えるよ」
「弱い者イジメェ?」
「そうよ、歴戦の戦闘マシーン・マジンガーZが可愛らしい女の子をいじめてる様にしか見えないわ」
「でもよお、格闘戦の訓練だろお? 少しくらい勢いが無くちゃ出来ないぜ」
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜、美女と野獣みたいな構図がダメだって言うのよ」
「…どうすりゃ良いってんだよぉ! オレには出来ねぇって!」

 甲児は知的な雰囲気を微塵も見せずに雄猛んだ。

「はぁ〜、ダメだこりゃ。じゃあ分かった、私がノリコに必殺技を伝授するから、アンタはその訓練の成果の試し台になりなさい」
「へっ、そう簡単にこのマジンガーZがやられるもんかよっ!」
「だから試し台になりなさいって言ってんのよ、甲児。じゃノリコ、こっちに回線開いてくれる?」
『はい、マリアさん』

 自信満々のマリアに一抹の不安を感じつつもノリコは通信回線を開いた。

「だから…… ボソボソ こうすれば…ネッ? 絶対いけるって」
『でもそんな事したら…… ボソボソ しちゃいませんか?』
「良いって良いって、甲児には良い薬よ」
『マリアさんがそう言うなら』
「絶対大丈夫、あたしが保証するから。じゃ、甲児、今から始めるわよ」

 マリアが合図を送るとマジンガーZは格闘戦の構えを取った。
 対してロリアルは少しおどおどとした態度で半身になっていたが、戦闘体勢と呼べるレベルの物では無かった。
 その隙だらけの格好を見て甲児は高笑いを上げた。

「はぁーっはっはっは! そぉ〜んな姿勢じゃ戦いになんかならねぇっての。マリアになに吹き込まれたか知らねえが、実力の差を思い知らせてやるぜぇ」

 そう言うと甲児はマジンガーZの両腕を広げて伸し掛かるように近付いた。

「ノリコ、今よっ!」

 たかを括っていた甲児が不用意に近付いたのを見てマリアがノリコに合図を送った。

『えいっ!』

 ノリコは合図に従って姿勢を後ろに反らせつつ、右脚を思いきり振り上げた。
 鈍い轟音が響き、マジンガーZは完黙した。

「よしっ! 狙いはバッチリ。流石ねノリコ」
『えっと、それは良いんですけど甲児さん、大丈夫なんですか?』
「平気平気、これくらいでどうにかなる男じゃないから」
『ハハッ…でも、これって生身の男の人だけじゃなくてロボットにも効くんですね』

 ノリコは軽く言っていたが、その光景を記録していたSCEBAIの男性職員は戦慄を持ってマジンガーZに同情を送っていた。
 何故か、それはロリアルの攻撃が見事マジンガーZの股間に決まっていたからだ。
 実際の所、これは生身の男性に効くのとは違う理由があるのだが、人型兵器に取って垂直方向から行われる金的攻撃は致命的に近いダメージを被る可能性が非常に高い危険な攻撃なのである。
 その理由とは…。

『その理由はつまりこう云う事なのよ』
『お姉さま!』

 ノリコが疑問を呟くと空かさず離れた場所から機体のオペレートをしていたアマノがその理由を説明し始めた。

『理由は大きく分けて二つ、機体に対する物とパイロットに対する物ね。まず、機体に対するものだけど、ロボットにとって腰部は歩行システムが詰った、人型ロボットとしての基盤がここにあるわ。多くの機体には通称FUNDOSHIと呼ばれる保護装置が採用されているんだけれど、ここには極めてデリケートな部品が多くて、ウィークポイントになっているわ。そしてパイロットに対して与える影響だけど、ノリコ、分かる?』
『うぅ〜ん、ちょっとわかりませぇん』
『つまり、人間のデザインが垂直方向に対する脆弱性を持っている点ね。人間は二本脚で重力に対して垂直に逆らって立っているわ。その基盤となっているのが背骨、この垂直に積み上げられた骨によって頭蓋骨とその中身と云う重量物を支えているの。この垂直方向に掛かる過重に人間が弱い事は宇宙ロケットの座席が90度傾けられて設置されている事でも分かるわね』

 アマノは自分が知っている知識から以上の事を考察し、説明した。

『えっと、じゃあ男性パイロットにも女性パイロットにも同じくらい効くって事なんですか?』

 ノリコはどうしても「金的攻撃」から思考が離れられずそう質問してしまったが、アマノは少し口篭った後云った。

『そう…とも云えないわね。やっぱり座席に座っている以上、最初に過重が掛かるのは接地している部分だし…瞬間的に1メートルも蹴り上げられたら…気絶しちゃうでしょうね。神経に掛かる衝撃以上にあの所に衝撃が行くでしょうし』
『つまり、効くんですね?』
「その通りだタカヤ!」

 突然コクピットの画面に大きくオオタの顔が写し込まれた。

『うわっ! 相変わらず心臓に悪い出かたをするんだから』
「なにか言ったか? タカヤ」
『いいえ、別に〜何でも〜』
「ふん、まあいい。一見便利そうな股間への一撃だが、忘れてはならない事が有る。それが何だか分かるか?」
『努力と根』
「違うっ! 機体のスケールだ。今回はほぼ互角の体格を持つマジンガーZが相手であり、また、自機の脚幅が相手の股間よりも細かったと言う好運が有ったから攻撃が効いたが、体格差が大きい相手には大小共に有効になり辛いという欠点が有る。そう云う相手の時に初めて「努力と根性」が必要になるのだ。分かったら罰として「努力と根性」と復唱しながらグランド五十周!」
『ええ〜!?』
「文句を言うな!」
『はいぃ〜。「努力と根性」「努力と根性」「努力と根性」「努力と根性」「努力と根性」「努力と根性」「努力と根性」「努力と根性」「努力と根性」「努力と根性」「努力と根性」「努力と根性」……』

 そう言うとノリコはロリアルに乗ったままグランド…つまりこの世界に現れなかった成田の新東京飛行場を凌駕する面積を持つSCEBAI離着陸場の外周道路を駆けて行った。
 その動きは当初乗り込んだ頃よりも遥かに洗練された動きであり、如何に今まで行われて来た特訓が効いて来ているかが分かる物である。…もっとも、罰ゲームのグランド云十周の方が効いているみたいだったが。




日本連合 連合議会


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