スーパーSF大戦 第22話 Eパート




 圧倒的な物量の前にアメリカ軍はジリジリと後方へ退きながらも徹底抗戦を続けていたが、遂に二三〇五(午後11時5分)に東部戦線が決壊した。
 この区画の味方火力が手薄である事を知っていた司令部は二一〇〇(午後九時)に「ブロンコ U 重装改」を投入していたが、幾ら重力制御機関で重量を軽減していようと、慣性の法則によりどうしても鈍重になってしまう劣化ウラン弾搭載の機関砲を積み込んだ重たい機体は敵の火線により上空に飛び上がる事も出来ずに非常に制限された機動しか出来なかった為、次々と撃破されていったのだ。
 この通常では考えられない異様に長い戦線を維持する為にアメリカ軍は予備戦力のほとんどを振り絞っていた為、決壊した区域の様子を指をくわえてみているしかなかったのだ。
 さて、この区域が突破されたのには別の理由があった。
 実はこの近くに例の避難を拒んだ村が存在していたのだ。
 彼らムーは基本的に人口の多い方へと向かう性質を持つ為、その軍勢の進行方向がこのカンペチェ近くのこの村へと集中してしまった為、この区画だけ異様に濃密な火線が集中し土塁や塹壕、最新型の対エネルギー兵器用の重装装甲も屁の突っ張りにも成らなかったのである。
 既に空間自体が灼熱のエネルギー兵器になったかの様な集中砲火によって防衛側の派遣した機甲師団中心の増援部隊も一瞬にして壊滅。
 ムーは軍隊蟻の様に1〜2機が攻撃によって倒されようと全く意に介せずどんどんと歩を進め、遂に防衛ラインを突破したのである。
 攻撃を集中して受けたのはその区域のみで、隣接するブロックは他の戦線と同様の火力であり、特に大きな被害と呼べるものはなかった。
 しかし、その隣接区域でも正面の敵と渡り合うのが精一杯で、側面を抜けてゆくムーの戦闘ロボットを阻止する術を無くしていた。
 ただひとつ幸運だったのは、彼らムーが前方重視で突撃していった為に側面から攻撃を受けなかった事だろう。
 そうでなければ到底、その位置を保持する事は出来なかったはずだ。
 ムーは他の戦線からこの地域に援護が回らない様に巧妙な攻撃を続けつつ、背後の予備戦力を続々とこの地点に出撃させていった。

 この戦闘が開かれる1日前の事だが、日本連合から派遣された最新鋭の打撃護衛艦「ヤマト」を中心とした支援艦隊は作戦海域へと侵入を開始していた。
 ただ、その目標は当初想定していた敵本隊への攻撃ではなく、作戦開始2日前に発見されたばかりの敵機動兵器と思しき戦力への攻撃に急遽変更されていた。
 このままでは迎撃想定日時を翌日に考え準備している米軍は戦力の構築中に予想外の攻撃を受けて甚大な被害を受けてしまう可能性が高かったのである。
 現在までに日本連合が掴んでいたデーターではムーの戦闘兵器は人型ロボットのみであった為に、その飛行型ロボットの戦闘能力は未知数でありこの時点においては自軍の被破壊率も攻撃の有効性も計算できなかった。
 この機動兵器群を発見したのは南米大陸へと数多く派遣したA6M−RFX、ゼロ戦を改造した無人偵察機の内エンジンの改装を施していないプロトタイプの1機である。
 どうやらターボプロップに比べてレシプロエンジンは赤外線の発生量が少なかったのが幸いしたらしい。常にハイテクが有利という訳でもないのだ。後にこの教訓からより低認識性(ステルス性)を考慮した結果、レーダーに対する低反射率の鉄骨帆布張りの構造をした機体に赤外線の放射量が少ない定出力エンジンを積んだ最後の帆布張り複葉艦上攻撃機である96式艦攻の無人偵察機型の試作も行われている。結局採用はされなかった様だが。
 それはさておき、敵は機動兵器の移動能力を生かした電撃作戦にてアメリカ軍の後背を突く作戦と見られ、これを阻止しなければ現在戦線を維持しているだけで手一杯のアメリカ軍が手痛い打撃を受ける事は必至であった。
 既にこの偵察結果はアメリカ側へ通達していたが、遊軍までも阻止線構築に戦力を使いきっていた米軍がこちらへさし向けるだけの余力がある筈もなく、米軍の最終作戦が始まるまでの時間を稼ぐ為、その軍勢の侵攻を阻止して貰いたいと言う返事があっただけである。
 日本側はこの返答を自軍を自由に動かす許可であると捕らえ、すぐにこの新たなる目標に対して効果的な攻撃を加えるべく行動を開始した。

 新生連合艦隊ともいうべきこの艦隊は作戦の前からこの海域へ到着していた為に余裕があり、打撃護衛艦を中心とした艦列を任務部隊として再構成し、任務部隊は一路コスタリカの北部地域にあるサンホセ沖合いへと進路を変更した。
 それが2日前の出来事である。

 この時、先行偵察及び弾着観測の為に、決死の思いでこの地に潜入していた部隊があった。
 偵察機によって発見された敵機動兵器部隊の動向を把握するために一担はムーの主力部隊の偵察に有利な場所に就いていたのだが、急遽800キロにも及ぶ移動を強いられる事になってしまった。
 彼らは低視認性に重きを置いた改造を受けたMATジャイロによって敵機動兵器部隊の状態と動向が把握し易い山麓へ移送された。
 彼ら偵察兵達は飛行時間から計算するとわずかな時間しかなかったと言うのにMATジャイロは山間を縫うようにN.O.E.飛行で敵に気付かれないよう、接近した。
 彼らは降下した場所から敵陣の全貌が掴め尚かつ敵に察知されないこの場所を選定し、確保すると言う早業を見せていた。
 その優秀な部隊指揮官の中に草薙素子一等陸尉の姿があった。
 後に発達したナノマシーンによる補助脳と神経接続による高性能擬体(サイボーグ)技術の発達(及び低価格による民間への普及)により電脳領域とゴースト(生体脳が生み出した霊魂領域)の垣根を覗き見る事になる彼女だが、この時点ではまだただの腕のいい工作員でしかない一尉は部下の馬頭、石川他数名を引き連れて観測拠点の設営を行っていた。
 元々彼女は都市内に於ける対人武装工作を得意としていたが、時空融合以前の世界にて個人の資格でSAS等の訓練を受けていた彼らは特に志願してこの任務に就いていた。


 双眼鏡で敵戦力の評定をしていた副隊長の馬頭二等陸尉の後から草薙素子一尉が声を掛けた。
 この時、部隊員達は全員擬装の為に体中に貼り付けたネットの隙間に現地の草木の枝を差し込み完璧なカムフラージュを行っていた為、パッと見ただけでは只の草地にしか見えない状態になっていた。

「バトー? 敵戦力はどう?」
「はい一尉、敵なら選り取りミドリ、ウジャウジャと密集してますゼ。敵からの遠距離攻撃とかは考慮してないんですかね」
「そんな贅沢言ってたら神様に罰当てられるわよ。そんなことより攻撃ポイントの選定は済んだ?」
「ええ、打撃護衛艦の主砲なんて言う化けモンみたいな攻撃を喰らったらイチコロでしょう」
「そうね。まさかあんな遺物が実用化するなんて、まぁどんな陳腐な戦力だろうと私達は使える物を使えるようにしなくちゃ。で、お前の選んだポイントは?」
「へいへい。北の方向を12時として3時の方向」

 そう言いながら彼は右手を小さく伸ばして指示した。

「山の稜線に著名な鉄塔」
「確認した」
「右へ指3本、白い大きな岩」
「確認」
「握り拳ひとつ、三角形の山」
「確認」
「指2本、著名な大木」
「確認」
「大木と現地点の中間点にポイント1。後は500メートル毎に左へポイント2、3,4,5で効果的な射撃が行えると思いますが?」
「ふむ・・・。いいだろう、ではいつでもレーザーマーキング出来るように準備をしておけ。間違っても試射はするなよ? 赤外線で一発で我々の居場所はバレてしまうからな」
「了解してますって」
「なら良い。私は第2班の石川の準備が進んでいるか確認してくる、くれぐれも」
「静かにしてろってんでしょ。了解」
「ふっ、じゃぁね」


 彼らの様なバックアップに支えられて、今、南米派遣艦隊の攻撃が開始されようとしていた。
 改装された戦艦達は打撃護衛艦という艦種に類別された訳だが、改装の際に戦闘指揮所は装甲の厚いバイダルパートの中にほぼ完全な対衝撃仕様の電子制御機器によって固められたCICが設けられ、WW II の様に昼間艦橋での戦闘指揮は行われなくなっていた。
 そのCICにて。
 専門の教育を受けたオペレーター達はコンソールを操作し、必要とされているデーターを的確に且つ分かり易い形で画面上に提供していた。
 指揮官たちはそれを見て状況を把握し、判断を下すのである。
 その情報は偵察兵達が危険を犯して集めたデーターもあれば貴重な偵察衛星からのデーターもある。
 そんな状況を見て第二次世界大戦の際に情報不足で苦労した、と歴史認識の授業で自分達がミッドウェーでどれだけ苦労したのかを知らされていた旧軍からの士官達は隔世の感でこの部屋に溢れかえる情報を眺めていた。
 シミュレーションでそれまで訓練を受けていたが、実戦ともなれば命掛けである。
 画面の向こうでの戦いだけしか経験していない生っ粋の自衛隊員と違い、実際に硝煙の匂いを嗅ぎつつ猛訓練に励んだ彼らはわずかな判断ミスがどれだけ味方の被害を増やす事になるのか、体感的に把握していた。
 画面上に表示されるのは光点(ブリップ)と注釈だけであり、キャラクターグラフィックが投影されないのでゲームのように余計な主観的思い入れが無いだけにその時の状況は冷静に判断されてしまう。
 そして冷静に判断する事が可能な故に大きな戦果のために、と味方の犠牲が必要な判断を下してしまう事もある。
 さて、どちらがより軍人らしいのだろうか。
 ともあれ、彼らは情報の洪水に溺れる事無く、必要な物を抜き出し整理して計算されていた計画に修正を加え始めた。
 元々のシナリオでは彼ら打撃艦隊は敵本隊に対して支援砲撃を加える筈であった。別動隊に対する攻撃のシナリオも想定されてはいたが、細部にかなりの手を加える必要があったのである。
 艦隊の司令室があるこの超大型打撃護衛艦「ヤマト」に設けられた艦隊司令室では艦隊機動に長けた参謀達があーでもないこーでもないと作戦のプログラムを組んでいた。
 戦艦から打撃護衛艦に区分が変わり近代化改装を受け、最も大きく変更があったのは主砲塔の改良による飛距離の増大である。
 戦争の技術史に於いて、戦艦の衰退期とレーダーの出現時期は微妙に重なっており、レーダー管制による主砲の直接照準も行われた事があるのだが連合艦隊にはその技術の蓄積は無く、自衛隊に編入されてからもレーダー射撃の実験を兼ねた訓練は行われたのだが、海軍時代に培われた月月火水木金金と言う休日返上の猛訓練によって使用方法を習得するに至っていたとは言え、その練度を充分に高めるまでには至っておらず、ほとんど本番体当たりの実戦訓練という一種無茶な作戦参加となっていた。

 今回の射撃管制は艦隊からの直接照準によらず、現地観測班からのデーターに基く間接射撃管制が採られている。
 何故なら狭い陸橋部とは言え、敵の集結地点は山を挟んで大西洋側であり目視であれレーダーであれ直接的を見る事は出来ないからだ。


 作戦は電子の言葉に乗せられて連係して進められて行った。
 赤い照明に照らされ、薄暗いCIC内では戦闘準備が静かな声によって命令されていった。

「第1射撃準備。弾頭種別、<チャフ>」
「了解。装填弾種<チャフ>。高度500にて炸裂設定良し」

 艦隊司令官の下命が下ると射撃官制官はコンソールを操作し弾薬庫から帯電微粒子が詰め込まれた弾頭を自動制御にて砲塔へ挙げた。
 この新式の主砲塔であるが、旧主砲塔と違い有人制御の設備こそ備わっているが、無人制御である。
 何故なら新式の液体火薬を用いた多段薬室式の砲塔の反動は想像するよりも強力で、爆風の漏れ込みが無いにも関わらず駐退機の反動の引き起こす衝撃だけで中にいる人間に致命的なダメージを与えてしまうからだ。
 自動装填装置によって砲塔内部に詰め込まれた弾頭は特殊な帯電微粒子を火薬によって圧縮拡散させる事によって強力なEMP効果をもたらす対電子兵器用の弾頭である。
 この他にもEMP兵器は開発中であるが、グレートマジンガーのサンダーブレークの技術を応用した弾頭は開発中であり、開発済みの2式弾頭は評価実験中で間に合わず、このチャフ効果兼用の弾頭のみが持ち込まれていたのだ。
 現地に潜入した偵察兵達が決死で送ってきた敵の位置情報を元に割り出された発砲諸源となって砲塔に伝えられ、砲身が敵機動部隊のど真ん中に向けて狙いが定められた。
 最初の砲撃となるこの砲撃準備が整い、艦長は艦隊司令に肯いた。

「うむ。全艦敵に向けて斉射! 順次計画通りの弾種にて敵を攻撃せよ!」

 命令が下ると「ぐわーん!」と云う衝撃と共に砲弾が天に向かって撃ち出された。
 通常の砲弾と異なり、長飛距離のため、ほぼ50度の角度で撃ち出された砲弾は成層圏に抜け高度3万メートルで頂点に達しほぼ垂直に落下し始めた。
 このヤマトに搭載された主砲弾の最大射程は約100キロである。
 しかし現在研究中の技術だが、主砲弾の後に固形燃料式の推進カートリッヂを付ける事により空気の薄い成層圏での加速が可能になり最大射程が200キロ延びて約300キロとする事も可能、の予定である。
 地を這い、レーダーに映りづらい巡航ミサイルに比べてレーダーにて確認され易い弾道弾の魅力は何と云ってもコストが安い事だろう。
 一発当たりのコストが数億円もする巡航ミサイルに比べて、打撃護衛艦の主砲弾頭(徹甲弾と榴弾に限るが)は基本的に旧軍の物をそのまま使用している。元々旧海軍は水中弾の効果を得る為に被帽(コーン)を被っていたのだが、時空融合後の打撃艦は現代戦に対応する為の高射程を得る事と併せてスマート爆弾(賢い爆弾)並みの命中率を得る為の誘導装置を採用していたのであるがそれが被帽の代わりに取り付けられた複合誘導被帽で、弾頭を目標へ誘導する為四方に向けられたガス噴射装置によって方向を変更するのである。
 予備推進装置と合わせても砲弾一発当たり壱千万円と大変にお買い得である・・・。他の兵器に比べたらコストパフォーマンスは大変に宜しいのである。
 この低コスト化は旧自衛隊の様に製造メーカーが一元化されていなかった為、きちんとコスト競争が行われた結果であった。
 現在の自衛隊なんてロクに使えない上にコスト削減努力を怠っている世代遅れの旧式欠陥兵器を必要数以下しか揃えていない為、実際の戦闘になったら兵隊さんは成す術もなく敵に返り討ちになってしまうと考えられている。これが世界第3位の軍事費大国の実情であるのだから悲しい物だが、産業界の癒着も無くなったこの世界の自衛隊は本当に使える兵器を配属されており、現場の自衛官達が泣いて喜んだ事は、マスメディアで周知されたので、良く知られている所である。
 コスト削減に一番喜んだのは自衛官の奥さんかも知れない。何しろ今までは着心地の悪いセーターを高いPX(普通PXの製品は安い筈なのだが)で買わねばならなかったのだ、自衛隊の予算がほとんどコストの悪い兵器にバラ撒かれていた為その皺寄せが彼らに寄っていた訳だが、漸く世界一般並みに制服の無料支給が行われる様になったのだ。安い給料をやり繰りしていた官品(Qマーク)の奥様方には大好評であったという。
 それはさて置き、多段式装薬室によって順次加速されていった主砲弾は弾道軌道を描いて成層圏から対流圏へと降下、弾頭に被された被帽によって弾着誘導班がレーザーマーカーにて付けた目標の位置に向かって誘導されていったのである。
 高比重と低空気抵抗の結果、自由落下によって加速された砲弾はM3を記録、地上班のレーザーマーカーに従って軌道を修正したチャフ砲弾はムーの迎撃を受ける事もなく敵上空へ落ちてきた。
 攻撃準備を進めていたムーの飛行型ロボットによって構成されたムーの機動部隊の頭上500メートルにて弾頭は炸裂した。
 その爆発により帯電粒子は高電圧の電磁パルスを地上に照射、その後にチャフは爆発と共に空中に投げ出され、EMP効果によって鈍らされた彼らムーの戦闘ロボットの鋭い目を奪った。
 そして第二射撃は各通常型護衛艦に搭載されたVLSより発射された振動弾頭ミサイルである。
 これは機械獣に効果を上げた振動地雷を小型化した物で、地面を液状化し人間よりも高い接地圧を持つ人型兵器の足を奪う物である。
 先に撃ち出されたEMPチャフ弾によって目を鈍らされたムーの戦闘ロボット達はロケットモーターによって近付くこれらを迎撃する事が出来なかった。
 ARIELに採用された事も有る大型のマルチモードミサイル、アマテラスY型改造の対地対艦ミサイルは目標近くでホップアップすると地面に突き刺さった。
 すると特殊な周波数を発生させていた弾頭が地面に震動を与え、砂の粒子の間にあった水分が浸み出し、あっと言う間に固い地面の筈のそこが泥沼と化してしまった。
 飛び立つ間もなく、飛行型のロボット達の足が地面にのめり込み自重によって抜け出せず、その行動の自由を奪われてしまったのである。

 第三射/主砲塔よりクラスター榴弾。
 放物線を描いて落下してきた砲弾は敵の上空200メートルで炸裂し、弾頭内に仕舞い込んでいた無数の子爆弾を周囲へ撒き散らした。
 湾岸戦争にてイラクの戦車部隊に絶大な効果を上げたクラスター弾は子爆弾の威力を向上させており小銃が通じない装甲を有するロボット兵器にも無視し得ない被害を与えた。
 先の振動弾により身動きを封じられていたムーのロボット兵は飛行型だったとはいえ探知機の有効範囲を超える距離からの慣性飛行という方法を使って行われた先制の遠距離攻撃に不意を突かれた挙げ句に目を塞がれ、ボコボコにされてしまい、この時点での戦力は既に規定値の3/5まで下がっていた。

 第四射/主砲塔より無数の翼安定型徹甲弾を詰め込んだ多弾頭が発射された。
 相手がGアイランドに攻め込んだイリスのような大型の物体で有れば個別に誘導した砲弾を撃ち込んだ方がよいのだが、ランダムに存在する小型の敵を屠るにはこの様な面制圧兵器の飽和攻撃により蹂躙するのが一番効率的であった。
 陸上兵器とは比較にならない規模を誇る艦載型プラットホームから撃ち出された直径46センチ全長150センチを超える巨大な砲弾に無数に詰め込まれたタングステンという強固な金属にて作られた無数の銛の様な撤甲弾は上空にてばらまかれ、マッハ3もの高速で地表に徹甲弾の雨を降らせて地面に縛り付けられたムーの戦闘ロボットの大半をスクラップに変えた。
 だが、個々の目標に対しての誘導によって確実に仕留めた訳ではなく、あくまで確率による命中率しか割り出せない面制圧兵器による攻撃は結構な数のロボット兵器が生き残る結果として現れてしまった。

「攻撃状況はどうか」

 艦隊司令がオペレーターに質問すると、そのオペレーターは現地にて待機している偵察部隊から刻々と入ってくる情報の分析結果を報告した。

「はっ、敵飛行型戦闘ロボット群は離陸以前の状態にて攻撃を受け80パーセントが大破と判定。残り敵部隊の動向ですが、現在新たな隊列を組み直しつつ有るもののアメリカ軍の対空射撃でも対処が可能な数かと・・・」
「ふむ・・・」

 とそこで考え込む司令に参謀長が声を掛けた。

「如何なされますか。追撃を掛けるなら絶好のチャンスですが」
「そうだな・・・いや、ここは本来の作戦に戻る。タイムリミットまでさほど無いだろう」
「はい、それはそうなのですが」
「確かに目の前の敵を撃滅するというのは大変に魅力的だが、今回の作戦は日本の将来を見据える上で大変に重要な作戦である。直ちに全艦作戦域に急行せよ! 艦隊運用は任せる」
「了解」

 先程までは戦場に残った敵戦力に対して何やら未練がましい物を持っていた参謀長であったが、そこは軍人(と言うか特殊国家公務員)、ひとたび命令が下されれば目の前の任務に集中するべく配下の参謀陣へ命令を下し始めた。

「艦隊参謀、輪形陣を組み作戦海域北緯15゜00’ 東経100゜00’ へ移動を開始する」
「了解」

 艦隊運用の第一人者である艦隊参謀は矢継ぎ早に命令を下し始めた。
 とは言え、第2次世界大戦時と異なり艦隊内情報リンクが完備している現在の艦隊の運用の難易度は格段に減っているのだが。
 機動兵器群を攻撃し終わった中米派遣艦隊は米軍にも秘匿しているある兵器を使用すべく、使用場所であるアカプルコ沖へと全力で移動し始めたのである。


 その頃、米軍がムーの実力を知る為、実験的に編成した第二次世界大戦時の軍事力を元にした特殊機動部隊がそれとの針路を交差する方向で南へと突き進んでいた。
 その様子はまるで猛犬のようであったという。






日本連合 連合議会


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