スーパーSF大戦 第21話 おまけ





 こんにちは、星野ルリ(小)です。
 まだ冒頭の出来事の所為で少しボーっとしてますけど・・・ぽっ・・・気にしないでくださいね。
 さて、カワサキでの戦いが終わってナデシコBとパイロットの皆さんが戻ってきました。
 皆さん無事で良かったです。なんだかんだ云ってもう約11ヶ月も一緒に暮らして居るんですよね。今更誰かが居なくなるなんて寂しすぎます。
 今までの私だったらこんな事思いもしませんでしたけど、こう云う感情を持てるようになったのもやっぱりシンジさんのお陰ですね。
 で、パイロットの方達とナデシコBの艦長達、つまり私の保護者であるルリ(大)と高杉さんハーリーくんがこのナデシコの艦橋に集まっているのですが、お客さんが2人ばかりいました。
 ひとりはゲキガンタイプのパイロットとして先程投降し、自衛隊に拘留されている白鳥九十九さんの妹さんの白鳥ユキナさん。
 成り行きからして九十九さんと月臣さんが拘留されたのは致し方ない所です。
 知らなかったとは言え他国の領土を侵害したのですから。
 云うならば、方位を見誤って間違って中立の第3国を攻撃してしまい、投降したような感じなのでしょうか? 詳しい法律は知りませんが。
 とは言えあの人達はこの日本連合に対するテロリストと言うワケではないわけですし、また自衛隊法の不備、つまり捕虜の処遇に関しての法律が作成中だったと言う事もあって先行きは不明です。
 そこで九十九さんは自分の処遇がハッキリするまでは、と云う事でユキナさんをナデシコに預けたいと云ってそれが受理されてしまいました。
 まあ、ユキナさんは何をしたというわけでもないので別に問題はないわけですけど。
 そう、ユキナさんの方は別に問題はないんです。
 問題があるのは・・・もうひとりの方でしょう、やっぱり。
 全員がこの艦橋に揃ってからなんですけど、凄く空気がピリピリしています。
 特に2人の方達の怒りの波動が凄いです。
 もうビンビンです。
 あ、自己紹介が始まりましたね。
 ではそちらの方を見てみましょう。

 ふたりの女性の内、ピンク色の宇宙服を着ている少女の人が姿勢を正して敬礼しながら大きな良く通る声で自己紹介を始めました。

「ビシッ! こんにちは皆さん。私は木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ・及び他衛星国家間反地球共同連合体 婦女子心身協力隊準構成員 会員番号弐拾壱番 白鳥ユキナです。私達は悪の地球人を滅ぼす為に日夜研鑽を積み、欲しがりません勝つまでは、と国家を上げて戦いの為に一丸となっていたのですが・・・単純にそうとばかりとも言えなかったって事で。こう云うのも憚れるのですが、皆さんの事をよく知ってから結論を出したいと思っています。私達が教えられてきた事とナデシコの人達から見せて貰った事実、どっちが正しいのかまだ心の整理がつかないんです。ですから、何と言ったら良いのか良く分かんないけど、よろしくお願いします!」

 そう言うとユキナさんは思いっきり勢いを付けて頭を下げました。
 彼女も混乱しているようですね、まぁそうでしょう。私達だって木星蜥蜴の正体が100年も前に月から追放された独立派の人達の子孫だったなんて事は地球連合から知らされていませんでした。
 ナデシコBの記録から木星蜥蜴の正体が人間だって事を知らされた時はみんな呆然としてそれを聞いていた憶えがあります。
 しかもこの戦争も元はと言えば連合政府が彼らの活動圏に手を出した事が切っ掛けだったなんて・・・。
 ましてやユキナさんは迫害されていた側だって事ですし。
 周りの人達の反応を見ると皆さん同情的な反応をしているようです。
 ここで・・・・・・本来なら艦長の話がある筈なんですけど、はぁ、ダメですね。完全に意識がもうひとりとアキトさんの方へ行ってしまっています。
 その為ユキナさんにはクルーの皆さんからバラバラに投げ掛けられた声しか聞こえてきません。
 組織としては代表者から纏められた言葉を出して貰わないと、ホラ、ユキナさんも困惑していますし。

「こちらこそよろしく、白鳥ユキナさん。ボク達もこの見知らぬ世界で生き抜く為に足掻いている所です。数少ない同じ世界の人間として過去に囚われずに新たな関係を築けると良いですね。共に頑張ってゆきましょう」

 えっと、今のは誰・・・アオイさん!? そう言えば居たんですね。影が薄いんで、すっかり忘れてました。
 酷いですか? でもここにいるナデシコの人達みんな感嘆の声を漏らしてますけど。
 思兼のデーターを調べればアオイさんが能力が低いと云う事はなく、実に有能な人物である事は明らかなんですが・・・凄く目立たないんですよね、アオイさん。
 だからこうして副長らしい事をすると皆が驚いてしまうわけで。
 アオイさん、皆さんの反応に傷付いてないで話を進めてくださいね。
 救われたー、って感じのユキナさんには好感触を貰ったようですし 良かったですねアオイさん。

「・・・では、もうひとりの方、元の世界では私達のナデシコに乗船していたと云うカザマ・イツキさんです。自己紹介よろしくお願いします」

 アオイさんが話しを振りますが、あっ、今私の両隣りに立っている人達が怖いです。

「あの〜、カザマさん?」

 アキトさんが腕に絡みついたカザマさんに声を掛けました。
 そうです、さっきからしていた殺気・・・あ、自己嫌悪・・・まあいいです、ユリカさんとルリ(大)が放っていた殺気はカザマさんがアキトさんと一緒にこのブリッジに入ってきた時から激しい物になっていました。
 何しろふたりとも体の線がストレートに出ているパイロットスーツのままここに上がってきてますから、ユリカさんに比べれば小規模ですがルリ(大)に比べれば立派なふくらみがアキトさんの腕に押しつけられている訳でして。
 アキトさんもアキトさんで、まぁ男の人というのはそう言う物なのだとミナトさんからご教授を受けてますから良いんですけど、・・・鼻の下、伸びてますよ。
 この時、両隣りの嫉妬に燃える2人の艦長達の怨気の声が漏れてきましたが・・・ちょっとだけ教えましょうか。「くぅ〜、アキトったらあんな胸の薄い女にデレデレして・・・私の方がずっと・・・・・・」「女性の価値は胸で決まる物じゃありません、あんな体で迫る女なんか・・・・・・」「アキトには2才年上で頼りになる姉さん女房の方がいいのよー」「アキトさんの様な優しい男の人には2才年下の私の様な女の子が相応しいんです。同い年なんて不許可です」 はぁ、バカバッカ。
 所で、どうしてカザマさんがこんな状態になったのかと言いますと、戦闘に巻き込まれて危機一髪だった所を助けられてホッとした感情がそのままLOVE、だそうです。
 わたし、少女ですから良く分かりませんが、経験豊富なミナトさんがそう言うならそうなんでしょう。
 でも今回、ナデシコBの記録を見て知ったのですが、元の世界でのモテモテ振りからするとこの世界のアキトさんはふたりに限定されて居た訳ですから、やっぱり戦闘と云う非常事態に於ける男女関係の促進という心理状況に拠る物なのかと思っていたのですが、アレ? ああ、今回も戦闘で彼女を撃墜した訳ですから良いんですね。
 今回、元の世界ではアキトさんにラブラブだったメグミさん、リョーコさん、イネスさんの3名の方ですが余りアキトさんに関心が高い訳ではないようです。
 何故か過去を知っている筈のイネスさんもそれ程高い関心を示していないようですし、メグミさんのアキトさんに対する態度は完全に同僚に対する物ですし、リョーコさんもコック兼業のアキトさんよりシミュレーションで高いポイントを上げているヤマダさんの方に関心が高いようです。恋愛感情かどうかは知りませんが。

 あ、そうそう今どうなっているかでしたね。
 アオイさんの言葉に反応しないカザマさんに焦れたのか、アキトさんが再度カザマさんに声を掛けました。

「カザマさんてば」
「あ、はい。アキトさん済みません。皆さんに見せつけてしまって恥ずかしかったですね。 初めまして、と言うのも変な気がするんですけど、皆さん初めまして。私の主観時間に於いて2時間前にナデシコへ配属となりました連合宇宙軍所属のカザマ・イツキと申します。違う世界へ飛ばされた云うのにこうして皆さんと合流する事になったのも何かの縁だと思います。よろしくご教授の程をお願いします!」

 イツキさんは連合宇宙軍の軍人さんらしいキビキビした言葉遣いで自己紹介をしました。
 でも、さっきから逃れようとするアキトさんの腕は意地でも放すものかとガッチリ抱え込んだままです。
 やっぱりナデシコに来る人達って言うのは・・・・・・私もそのひとりでした。深く追及するのは止めましょう。

「えー・・・ではおふたりに質問がある方はいませんか?」

 アオイさんはそう言ってクルーの方々を見渡しますが、普段なら整備部当たりの方達から凄い勢いで質問が浴びせられる筈なんですけど・・・勢い良く上げられた2本の腕の勢いに他の人達は気圧されて誰も手を挙げられる人は居ませんでした。

「えっとぉ・・・じゃあユリカ・・・」

 ちょっと逡巡したアオイさんが指差したのは、やっぱりユリカさんでした。惚れた弱味だそうですけど、依怙贔屓はちょっと副長さんとしてどうかな? て思うのですけど。

「ありがとうジュンくん。ヤッパリ友達だね。エライエライ」

「トモダチ、良いんだどうせボクなんて・・・シクシク」



 アオイさん、女々しいですね。

「ちょっとカザマさん!」
「はい? 何でしょうか艦長」
「私のアキトから離れなさーい!!」

 結局それですか、ルリ(大)と初めて会った時と反応が一緒です。
 とは言え、ルリ(大)も似たような事を言おうとしていたみたいですけど。
 でもそれ故、ふたりは反発してしまう訳ですね。
 艦長の「アタシのアキト発言」にカチンと来たルリ(大)は我を忘れて艦長に食って掛かって行きました。

「ユリカさんのアキトさんだなんて誰が決めたんですか?」
「そ、そんなの当たり前でしょ。アキトは私の王子様なんだもの。それに、結局アキトは未来のあたしと結婚した訳だし、アキトは私の物、それで私はアキトの物(ぽっ)」
「それはあの世界での話しです。この世界のアキトさんはまだ誰の物でも有りま、いえ、アタシのアキトさんです!」
「アキトはあたしの王子様なの!!」
「誰が決めたんですか?! それはユリカさんの独断です。アキトさんの意見は違います」
「だってそうなんだもん、アキトは私のなの」
「違います!」
「そう!」
「違います!」
「そう!」
「違います!」
「そう!」
「違います!」
「そう!」
「違います!」
「そう!」
「違います! 私のです」
「そう! ・・・・・・じゃなくてアタシのよ!」
「チッ、一体何を根拠にそこまで自信を」
「だって火星の草原でアタシとアキトはいつも一緒にいたんだから・・・ねーアキトー・・・あれ? アキト? アキトー? アーキートー? ねぇ、恥ずかしがってないで出てきなよー、アキトってばー、ねぇー」

 ようやく気付きましたか。
 幾ら何でも気付きますよね。
 でも、周りの人達も面白がって見ているだけで誰も忠告しないって云うのが、ナデシコらしいと云えば言えるんですけど。

「アキトー、ねーアキトってばどこへ行っちゃったのー? 恥ずかしがらないで出てきてよー、ねぇええー、アキトってばぁ。どこなのアキトォ? アキトー」

 艦長、アキトさんは椅子の下になんか隠れていませんよ。
 はぁ、仕方ありませんねぇ。

「カンチョ、艦長」
「ほえ? どうしたのルリちゃん。今アキト捜してるから後にしてくれないかなぁ」
「アキトさんだったらカザマさんに連れられて艦内を案内しに行きましたよ。おふたりで口論している最中でしたから気付いてなかったかも知れませんが」


「な、な、な、なんですってぇ!! 」とか言って駆けて行くと思いましたが予想は外れました。
 艦長はルリ(大)とアイコンタクトを取ると肯きました。

「・・・可愛くないわね・・・」
「ええ、そうですねユリカさん」
「アキトの問題は私達ユリカとルリの間で決着を着けるべきであって、あんな小娘の言いようにされて良い訳がないのよ。そうでしょ違う? ねえ、星野艦長」
「はい、こうなったら」
「アキトにまとわりつく悪い虫カザマ・イツキを葬り去るまで・・・」
「一時共闘、ですね」
「苛めちゃおうぜ!」
「おうっ!」

 あれま、共通の敵が出来た途端に団結してしまいました。
 今までの諍いは一体どこへ行ってしまったんでしょうか。
 良く分かりません。
 とは言え、あの二人が本気になったら幾らカザマさんが有能とは言え太刀打ち出来る物ではありませんし、私が密かにバックアップするしかありませんね、思兼、協力してね。

 




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