スーパーSF大戦


第18話 アバンタイトル

 昼過ぎ、SCEBAI所長の岸田博士の元へ電話が入った。
 本日は最近になって掘り出された重力制御機関を備えた宇宙戦艦がこのSCEBAIに来訪する予定だったので岸田博士も時間に余裕はなかったのだが、相手が誰かを聞いて岸田博士は何とか時間を割くことを約束した。
 その相手とは、沖縄からやって来ていた地球帝国組の人間であった。
 SCEBAI麾下の江東学園に編入していたアマノカズミとタカヤノリコ、そして彼女らのコーチとして体育教師&スーパーロボット軍団に入ったオオタコウイチロウ、直接スーパーロボット軍団に入ったユングフロイトとリンダヤマモトの5名はSCEBAIの所長室へ来ていた。
 彼らは地球帝國からの移籍組であり、彼らの乗機は縮退物質を燃料としたジェネレーターを持つマシーン兵器であった。
 彼らの技術は基本的に宇宙時代の物であったため、SCEBAIとしても大変に興味を引かれる存在であった。現在のように宇宙空間での活動が制限されてしまっている現状では大規模な追試が出来ないのが難点では有ったが、SCEBAIの面々がそんな事で諦めるわけは無かったのだ。
 その為、彼らの方から相談があるとの話に博士が飛びついたわけである。
(余談だが、日本国連合の基本方針に於いてはその世界固有の技術についてはその文明圏の固有財産として情報の公開については強制されていなかった。その為、日本各地、世界各地から送られてくる様々な文明の技術研究が進められているSCEBAIに於いても未だ謎とされている文明が数多く残されていた。特にこの地球帝国の技術は一瞬で地球そのものを破壊してしまうことが出来るほどの力を持っていたため、技術の公開を極端に避けていたのだ)
 5人の客を迎えていた所長室ではサングラスを掛けた老人岸田博士が応接用の椅子に座り、同じくサングラスに白衣と云う所員A、白衣だけの一見普通っぽい所員Bが脇に控えていた。
 その正面にはやはりサングラスを掛けジャージに松葉杖と言う独特な服装のオオタコーチが座り、その右にアマノカズミ、タカヤノリコ、左にユングフロイトとリンダヤマモトが座っていた。
 一目見ただけではどう云う集まりなのか理解しがたい。
 彼ら客人の前にコーヒーが並べられるとオオタコーチが口を開いた。
「早速で悪いのですが、ひとつ頼みがあるのです」
 お互いのサングラスに隠された視線を読み合うようにしてから岸田博士は返事をした。
「ほおう、して、それは体育教師としてですかな、それともスーパーロボット軍団のコーチとしてですかな。それとも沖縄県の地球帝国技術管理を一任されたオオタコウイチロウとしてなのかな。オオタコーチ」
 窺うような視線にオオタは平然と対応した。
「勿論、スーパーロボット軍団のオオタコーチとしてです」
 なんじゃつまらんな。重要な情報が引き出せそうにないと分かった岸田博士は内心失望した。
 だが、邪険に扱うわけにもいかなかった。
「情報は行っているでしょうが、実は先日、我々の領域で海底に沈んだ宇宙戦艦が発見されたのですが。その中に我々の文明と酷似した、いや、後継文明の作り出したマシーン兵器がサルベージされたのですが。それの搭乗訓練のために一機、出来れば2機のロボットを貸して頂きたい」
「ほほう、それは興味深いですな。後継文明なのは確かなのかな」
「ええ、コンピューター内部に残されていたカレンダーと履歴によると西暦二五〇〇年代、我々の時代より更に五〇〇年ほど未来の時代から来たようです」
「なに! と言うことは相当進んだ科学技術が使われて?!」
「いえ、我々も驚いているのですが、残念ながら人工知能の暴走によるコンピューター開発の禁忌化や心理歴史学者の粛正、惑星シリウスに始まる理力の開発に始まる人類内部の紛争の多発や宗教内乱やクローン技術の乱開発によるクローン戦争等による文明の衰退があったようで、我々の持つ技術を越えるレベル所か既に理解することが出来ない状況にあった様です。何のために我々が命を賭けて地球を守ろうとしたのか、虚しくなる話ですがね」
「ふぅむ、で、そのマシーン兵器はどういった代物なのですかな」
「中規模小惑星を丸ごと縮退した縮退炉を2基持つ、現在我々が保有する中では最も高出力のマシーン兵器です。技術的には、そう、我々にも理解できるレベルの物ですよ」
「ふむ、地球を滅ぼしかねないエネルギーを持っている訳ですな。で、具体的にはどの様なロボットが必要なのかね。SCEBAIで研究しているのはARIELしかないのだが」
 ARIELは40メートル級のトカマク型核融合炉によって稼働するSCEBAIが誇るスーパーロボットである。(リアルロボットではないのか、と言う意見もあるでしょうが、この世界では全ての人型戦闘ロボットの事をそう呼んでいます。彼らにとってはどれもが全てリアルな代物なので、スーパーな実力を秘めたロボットと云う事から全ての戦闘ロボットはスーパーロボットなのでした)
 だが、彼らの発掘したマシーン兵器の身長は約25メートル、少し大きすぎる。
 身長の差は質量の差となって如実に現れてくる。
 通常ロボットの動作スピードは人間を基準にしているため、その大きさが大きかろうが小さかろうが一動作が終了するまでの時間は変わらない、しかし、身長が2倍になると言うことは身長2倍×面積2倍×体積2倍の計8倍の質量を持つことになる。
 末端慣性質量だけでも相当に制御が困難になる為、設計者は出来るだけ身長の低減化を図るのが普通である。(目的に必要で有ればバスターマシーンの様に200メートルと云う物もOKであるが)
 その事から、操縦感性の差からARIELをそのマシーン兵器の訓練に使うことは難しいであろう。
 だが、オオタコーチは何か情報を掴んでいるらしく、強気に話を続けた。
「我々に必要なのはマスタースレイブ方式の25メートル前後のロボットシステムです」
 マスタースレイブ方式とは、操縦者の動作をそのまま読みとってロボットが同じ動きをトレースする別名パワードトレーサー方式とも良い、操縦方法が単純化されるため最も古典的な操縦方法と言えるだろう。
 だが、ロボットが受けた動作のフィードバックが大きいと操縦者に対するダメージが大きいし、フィードバックを軽減するとロボットと操縦者の間の動作に乖離が生じ易く余り普及していないシステムでもある。
 具体的な例を挙げればGガンダムやジャンボーグAが挙げられる。
「25メートルのマスタースレイブ方式・・・」 まさか、アレのことを言っているのか。我々の記憶から消し去った、あの悲劇の機体の事を。
「そう、我々の情報では第13番秘匿装甲倉庫の中にあると聞いています。是非、アレを使わせていただきたい」
「アレは、・・・我々が封印した代物だ。もう2度と使わないと決めたのだよ」
「しかし、現状ではアレを使うしかないのです。それに、彼女たちは」
 オオタコーチはそう言うと横に座っている4人を指し示した。
「第2次成長期も終わろうとしています。それほど操作系の調整は必要有りません」
「えー、コーチ、アタシはまだ成長終わってないですよぉ〜、特に胸の辺りとか」
 オオタコーチの交渉に横槍を入れるようにユングは言った。ご丁寧にアクションまで付けて・・・。
「・・・とにかく、訓練に使えれば良いのです。是非お願いしたい」
 オオタコーチはサングラスを外すとその隻眼を真剣に輝かせて岸田博士を見続けた。
 その眼力に押されたのか、打算が成立したのか、岸田博士にしか分からないが彼はひとつ肯いた。
「分かった、その用件は引き受けよう。よもやアレを使う日が来ようとは、な」
 岸田博士は遠くの窓の外に視線を向け、遠い目をした。
 こうして、厳重に封印されていたロストナンバーズ、ARIELの実力に脅威を憶えSCEBAIから不正に入手した情報に基づき自衛隊が開発したローコスト・エリアル。
 マッドサイエンティストとして岸田博士と天野博士が、遠き日に亡くなった岸田の妻あゆみのクローンである少女に操縦を妨げる要因である成長を止める処置を施すという非人道的なプランに苦悩し、取りやめたと言う経緯を持つローコスト・エリアル、通称ロリアルは封印から解き放たれることになったのだ。






 後日、倉庫から姿を見せたその少女の姿を象った機体にユングが改善を喚き散らした事は言うまでもない。

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