スーパーSF大戦


第18話 掘り出された戦ぶね A−Part



<ナレーション>
 佐世保軍港地下の宇宙戦艦用のドック毎地下に埋もれていたナデシコは、何者かの連絡を受けた政府機関により発掘されていた。
 現在の日本には是非とも重力制御技術を確立しなければならない事情があったのだ。
 その為、発掘作業は最優先で行われ、作業開始よりわずか3週間で地下ドックは地上に露出したのである。


<ルリ視点モード>
 こんにちは、ナデシコのオペレーターをしています星野瑠璃です。
 今日は私たちは私たちを掘り出してくれた日本政府のお役人さんに私たちのことを説明する為に、艦長と私、それとプロスペクターさんとあと何故か天河さんが一緒に東京の防衛庁に来ています。
 さて、それでは簡単に説明しておきますと、私たちがスキャパレリ・プロジェクトの一環として佐世保地下の秘密宇宙船ドックに集まったあの日、私たちの存在に気付いた木星蜥蜴の軍団が大挙して押し寄せたあの時、何が起こったのかは分かりませんがナデシコ毎地下ドックが隔離されてしまいました。
 後で調べたら地下ドックのあった階層より上が土で埋まっていた、いえどちらかと云うと地下ドックが地中に放り込まれてしまったような感じでした。
 その埋まってしまったドッグは外界と隔絶されていた為地上に連絡できませんでした。
 あ、スキャパレリ・プロジェクトっていうのはこの宇宙戦艦ナデシコを造ったネルガルっていう会社が計画した火星奪還作戦と言うことです。結構無茶なことを計画しますね。
 ところが、出発寸前に敵に襲われてしまい逆襲に転じようとしたらいきなり閉じこめられてしまいました、敵が攻めて来なくなったのは良いんですけどこちらも出ていけないんじゃ話になりませんね。
 地上に繋がる通路は全て無くなっていたので、ナデシコだけでなく小さな人間が通る事の出来る隙間すら有りませんでした。
 又、重力波探知機を使って上の様子を調べたのですが、地上海上共に交通の便が多くナデシコのグラビティ・ブラストを使って力技で穴を開けるわけにも行きません。
 その為、ダイゴウジ・・・もとい山田二郎さんと天河アキトさんのふたりが、エステバリス用にセイヤさんが急造したエステバリス用のスコップを使って、地上に向かって穴を掘っていたんですけど、地下深くに掘られたドッグの上に堆積した土の量は半端でなく作業は遅々として進みませんでした。
 結局1ヶ月もの間地下に埋もれていましたが、生活の方に関しては流石にナデシコは宇宙戦艦だけ有って多量の備蓄も有りましたし、低出力でしたが相転移エンジンが使えましたので乗組員の皆さんの生活は問題なかったんですが、戦闘も何も出来ずただ毎日を過ごすだけっていうのもかなりの精神的疲労を蓄積する物です。
 ナデシコの整備班班長のウリバタケ・セイヤさんも暇に飽かせてエステバリスを独自の技術を使って改造してましたし、山田さんもほぼ毎日食堂でゲキガンガーの上映会をやっていました。
 見に来る人間もほとんどいませんでしたけど。
 ほーんと、バカばっか。
 ま、それはともかく、折角地上へ掘り出されたのは良いんですが、この世界には私たちの所属するネルガル重工は存在しない訳で。
 経済基盤がなければ折角のナデシコもただの箱です。
 色々調べていたプロスペクターさんのそろばん勘定が合ったのでしょう、ナデシコに搭載されている重力制御機関技術指導と技術の売却という名目で富士山の近くにある何とか言う研究所に引き取られる事になったそうです。
 そこら辺のことはプロスペクターさんのコメントをどうぞ。

「このナデシコはスキャパレリ・プロジェクトを実行する為に火星に飛び立つはずでした、しかし、最早元の世界に戻ることが出来ない、つまりネルガルの支援が受けられないと言う事になります。戦艦を動かすには沢山のヒトと機械が必要です。ヒトと機械を動かすには食料や燃料、そして様々な物資が必要です。そしてそれを手に入れる為には『お金』が必要ですよねー。火星に行き、取り残された人々を救うスキャパレリ・プロジェクトを行えないのは大変に残念です、しかし、いま我々に必要なのはお金なのです。と言うワケで我々は現地政府の研究機関に身を寄せることにしたワケでして、ハイ」

 ま、いいけどね。
 まぁ現地の政府の方との交渉もかなり有利な条件で契約を結んだようだし、良いんじゃないの?
 この世界には数多くの世界が融合してしまったらしいんですが、何故かこの日本には重力制御機関を開発した文明が無かったらしいんです。
 他の場所には慣性制御システムまで持ってる世界があるらしいですけど。
 結局そのお陰でプロスペクターさんの交渉が上手く行ったんですから、ま、良いかって感じですね。
 それはともかく、重力制御機関も持たない文明に放り出された私たちってこれからどうなる事やら。
 あの脳天気な艦長の艦内放送のあとのプロスペクターさんのコメントを聞きながら、私たちナデシコのクルーとナデシコは一時的に海上に泊めてあった九州佐世保沖からこうしてその研究機関、静岡のSCEBAIに向かって飛んでいます。
 どうやら、向こうで私達の事を連絡してくれた人達と合流するそうです。
 その人達も重力制御機関を積んだ宇宙戦艦を持っているらしく、現在は低高度衛星軌道から地球を周回しつつ情報を取っているそうです。
 多分、私たちが地上を探査するために打っていた重力波を検知したのでしょう。

 さて、現在ナデシコの艦橋にはいつもの主要メンバーが揃っています。
 まずはオブザーバー席にはネルガルから出張してきているお目付け役のプロスペクターさん。この人も色々と何かたくらんでいそうな感じです。
 次にそのプロスペクターさんの監視役? の無口で大きなオジさんゴート・ホーリーさん。
 1番目立つ場所にある艦長席でいつもキャピキャピ騒いでる、この人本当に艦長?って感じのミスマル・ユリカ。何とかして…。
 あと、副長アオイ・ジュン。それなりに出来る人なんだけど・・・印象薄いです。
 第一次火星会戦の英雄フクベ・ジン提督。英雄と言われる割には良いおじいちゃんって感じです。
 その提督の後で偉そうにしているのが副官ムネタケ・サダアキ。
 いつも小さな事に目くじら立てて騒ぎ立てるので私たちブリッジのクルーは閉口しています。この人、宇宙軍に居た時もこんな感じで騒いでいたのでしょうか、部下の人達に同情してしまいますね。
 わたし、この人キライ。
 あとナデシコブリッジオペレーター、つまり私の職場仲間の方々ですが
 元どこかの会社の社長秘書と云う変わった経歴の操舵士ハルカ・ミナトさん。一見お色気過剰なゴーゴーガールって感じですけど何かしっかりした人のようです。
 元声優で活躍していたって云う通信士メグミ・レイナードさん。普通の人っぽいけど、結構地味に意地悪です。
 それからどうしてここにいるのか、よっぽど暇なんですね整備班のウリバタケ・セイヤさんが顔を見せています。
 この人、整備の腕は確かなんですけど元々不法改造屋だったそうで、ナデシコの備品を改造しまくっています。最近何だかナデシコのコンピューターで私の友達の「思兼」に目を付けたようでちょっと不安です。  それからここブリッジはパイロットさん達の待機所にもなってますのでパイロットの人5名もここに来ています。
 一人目はネルガルにスカウトされた元地球連合宇宙軍士官学校で優秀な成績を収めたと言われてる山田二郎さん。
 腕は良いんでしょうけどいつもゲキガンガーがどうとかうるさくっていけません。
 それに山田さんと呼ぶといつも「ちっがーう! それは仮の名! 俺の魂の名はガイ! ダイゴウジガイだ、ま、よろしくな」てうるさいからいけません。ゲキガンバカですね。
 それから山田さんと一緒に宇宙コロニー「サツキミドリ」・・・変な名前、で合流する筈だったパイロットのスバル・リョーコさん、男勝りで元気な人ですね。
 ヤマダさんと一緒でゲキガンガーに萌えているのはアマノ・ヒカルさん。
 明るい人ですけど、時々鋭い突っ込みを入れてくるので要注意です。
 ゲキガンガーに燃えているダイゴウジさんとは意見が合わないらしく、
「ケン×ジョー萌え萌え〜」
「バカヤロウ! 男と男の熱い友情をそんなのと一緒にするな」
「えーっ、絶対間違いないって。#6のBパートのあのシーンなんて絶対萌え萌えじゃ〜ん」
「ダー! あの燃える展開をそんな風にしか見えんのかお前は!」
「いいえ、絶対あのふたりは萌え萌えよ!」  バチバチ!
 萌え萌えってナニ?
 あとひとりマキ・イズミさん・・・理解不能な言動が多い人で、周りの人達は寒い人って言ってますが。何がどう寒いんでしょう・・・分かりません。
 もうひとりがテンカワアキトさん。コックさんです。
 え? 何故コックがパイロットかって? 
 分かりません、ワタシ、少女ですから。
 少し気弱なところが有りますが、基本的にいい人みたいですね。
 でも最近、山田さんの影響を受けてきたようで、山田さんが主催しているゲキガンガーの上映会にもちょくちょく見に行ってるようです。バカ。
 そして最後が私、ナデシコのオペレーター、星野・ルリ(11)です。
 遺伝子調整をしてIFS適合体質となっています。
 本当の両親も分かりませんし、ずっとネルガルの研究所で育ってきましたが気にしないで下さい。
 さて、そうこうしている内にもうSCEBAIとかいう研究所に着いてしまいました。
 流石に地上を走る自動車なんかと違って早いですね。あっという間です。
「メグミさん、向こうに連絡入れて貰えませんか?」
「はい、艦長。あ、ルリちゃん、通信用のチャンネルくれないかなぁ」
 いま声を掛けてきたのが通信士のメグミさんです。
 周波数のチャンネルくらい最初から設定しておけば良いのに、プロの通信士じゃないから仕方ないんでしょうか。
「メグミさんどうぞ」
「サンキュ、ルリちゃん」
 私が目の前のデーターウィンドウの中にデータを入れてからメグミさんの方へ送るとメグミさんがお礼を言ってくれました。まぁ最近流行りだした私の愛称「ルリルリ」よりはまだマシです。
「こちら機動戦艦ナデシコです。SCEBAI管制塔、応答願います、Over.」
「ハイハイ、こちらSCEBAIコントロール、アポイントメントを取ってたナデシコさんですねー。A滑走路から進入して6−3区画に停めといて下さい」
「え? えっとぉ。艦長、どうしましょうか・・・。滑走路、必要ないですよ・・・ね」
 メグミさん、困ってしまってますね。
 向こうの人もこちらが重力制御してるって知ってる筈なのに、マニュアルに書かれた対応しか出来ないなんてプロ失格だと思います。
「そのまま停めちゃえば? わざわざ地上すれすれに運転するなんて面倒くさいし」
 ボヤキを入れたのが操舵士のミナトさん、それは少し乱暴な意見だと思います。
「うーん、そうですねそうしちゃいましょう! メグミさん、一応管制塔の方へ言っといて下さい」
 艦長もそのまま採用するなんて、
「あ、そうそうルリルリ」
「ハイ? なんでしょうかミナトさん」
「6−3区画ってどこかなぁ?」
 滑走路から進入していけば、何か表示が出たんでしょうね。まぁその線で探査してみましょうか。
 思兼、お願い。
<OK ルリ>
 地上に表示されている表示板なんかを思兼が探査し始めたかと思うと、直ぐに結果が帰って来た。
<ルリ おそらくここだと思うよ>
 ありがとう、思兼。
<どう致しまして>
 思兼が送ってきたデーターを読んでみたら、意外なほど早く探査が済んだ訳が分かった。
「ミナトさん、データ送ります」
「サーンキュ! ルリルリ」
「いえ・・・」
「えーと、どれどれ。・・・何コレ、」
 へぇ、ミナトさんでも言葉を失う事があるんですね。
 日本国内にしてはやたら広い敷地にある滑走路の脇に一辺が60メートルは有りそうな巨大な黄色い文字で区画が書かれていました。
 単純明瞭なのはいいんですが、常識を疑ってしまいますね。
「それじゃあ、着地しちゃいまーす」
 ミナトさん張り切ってますね。まぁ、あそこに着いたら2〜3日の休暇が貰えるって話でしたからその所為でしょう。
 ナデシコはミナトさんの操縦により、ほとんど振動もなく指定された区画に着陸しました。流石、能力優先で選ばれただけのことはあります。
「それでは総員、ナデシコの停泊準備を進めちゃって下さい。あ、停止作業はルリちゃんに頼んじゃっていいかな?」
「はい、構いませんが、艦長は何か用事が?」
「わたしはここの所長さんに会ってきます。よろしくね」
「分かりました。コミュニケはオンになってますので何時でも用事があればどうぞ」
「うんうん、ルリちゃんていい子よねー」
 余り子供扱いして貰いたくありませんが、仕方ないですね。11歳ですから。
「それじゃあ艦長御統百合花より副長葵準へ任務引き継ぎます」
「葵準了解、任務引き継ぎます。気を付けてね、ユリカ」
「だいじょーぶ大丈夫、ちょっと挨拶してくるだけだし。って事でアーキートー」
 あっさりアオイ副長と話を打ち切って艦長はパイロット待機所に駆け込んでアキトさんに飛びつきました。
 あ、アキトさんを巻き込んで床に転んでいます。
 余りのことにパイロットの方たちも目を点にして眺めているだけです。
「何すんだよお前はぁ」
 アキトさん怒って怒鳴りつけました。当たり前ですね。
「ユリカ達これからあそこのビルまで行かなきゃならないんだけど、連絡艇使うほどの距離じゃないし自動車もないでしょ? だからアキトにエステバリスで送って貰おうと思って」
「私たちって、ユリカとあと何人?」
「えーとね、私とプロスさんとゴートさんの3人よ」
「3人も乗せらんねーって。向こうの人に迎えに来て貰えよ」
「ダメダメ。折角だからエステバリスの勇姿を見せつけとかなくちゃ。ネ、プロスさん」
「そうですなぁ、確かに艦長の言う事も確かですが・・・、私たちは迎えの自動車に乗せて貰うことにしますよ。艦長は天河クンと一緒にどうぞ」
 プロスペクターさんが艦橋の窓から外を覗くと、10人乗りのマイクロバスがこっちに近付いて来ているのが見えました。
 艦長のやろうとしていた事を砲門外交って言うんでしょうか、大人の世界って良く分かりません。
「や、ヤダもぅプロスさんたら、私達ってそんなにお似合いですか?」
 艦長、誰もそんな事は言ってません。勝手に話を作らないで下さい。
「オレはイヤだからな。折角向こうの人が送迎してくれるんだから好意を無にするんじゃない」
「ちぇーっアキトのケチー!」
 艦長・・・・・・コドモ。
「じゃあ、行って来まーす」
「ルリさん、ナデシコのことは頼みましたよ」
「よろしくな」
「分かりました、行ってらっしゃい」
 でも、こう云う場合、副長のアオイさんに言うべき事なのでは、ってアオイさん、艦橋の隅でイジけてないで堂々として居て下さい。
「良いんだ良いんだ、どうせボクなんて・・・」  イジイジ
 確かに、こんな人に任せるのは少し不安かも、ですね。
 ま、そんな事はともかく、仕事を進めておきましょうか。
 それでは思兼、よろしくね。
<はい、ルリ>




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