スーパーSF大戦 第15話 D−Part



 その使徒は空中を悠々とGアイランドへ向かっていた。
 自衛隊は現時点に於いて打撃力に於いてナガト以上の攻撃力を持つ物は居なかった。
 そのナガトも通信機能をやられて攻撃不能。
 その為に日本防衛の最高司令官である加治首相は決断を下した。
 GGG機動部隊は現時点を以て使徒迎撃の任務に就いた。内閣総理大臣 加治隆介 許可。
 迎撃の指令が届いたGGGではベイタワー基地から三段飛行甲板空母が発進しようとしていた。
 この三段飛行甲板空母も以前は水中では軸流タービンジェットポンプ、空中ではターボタービンジェットで飛行していたのだが、今回の改造でウルテクエンジンを搭載しその飛行性能は格段に向上していた。
 三段飛行甲板空母は東京湾上に浮かび上がると、東京湾の玄関口、三浦半島へと針路を向けた。
 何としても使徒を東京湾へ侵入させる事を防ぎたいが為の処置だった。
 現時点に於いて、自衛隊とGGGのデーターリンクシステムは完全には機能していなかった。
 元々GGGは秘密部隊であり、総理大臣を最高司令官とする点では一致しているが組織的には防衛庁麾下の自衛隊と科学技術庁の系列であるGGGでは組織的に連携が取りづらかった。また、自衛隊自体も様々な世界から集まっていた為内部での混乱もあった。
 その為、現在はまだ自衛隊とGGGが共同して作戦を遂行する事が難しかった。
 下手をすると同士討ちを起こす可能性すらあったのだ。
 GGGが防衛を引き継いだ現時点に於いて自衛隊は防衛出動を一時的に中止、各レーダーサイトや偵察機による情報の収集を行っていた。
 その情報は総理官邸地下の司令センターを経由しGGGへと送られていた。


 さて、その頃GGGベイタワー基地地下の待機室ではエヴァンゲリオン初号機パイロットの碇シンジと零号機パイロットの綾波レイが椅子に座ってメインオーダールームからの連絡を待っていた。
 アスカが飛び出した後、学校でアスカとレイを待っていたシンジ、そして学校の外でアスカを探して走り回っていたレイは警戒警報が発令されたと同時にここへ集まってきていた。
 いくらアスカがシンジを失う恐怖に怯えていようと、シンジは我が身に代えてでもアスカ達を守りたかった。
 レイもそんなシンジを説得しエヴァへの搭乗を諦めて欲しいとは思っていたのだが、シンジの決意は固く翻意を促すことは出来なかった。ならば、シンジを失わない為に出来ることはひとつしかない。シンジと共に戦い、生き残るのだ。
 そう考え、レイはアスカを待機室で待った。
 しかし、いつまで経ってもアスカは姿を現さなかった。
 既にGアイランドの住民は地下シェルターへの避難を行っていた、しかし、その中にもアスカの名前は見つからなかったのだ。


 三浦半島沖合一〇キロ地点、海面下五〇メートル。
 いち早く多次元情報収集艦によって現場に到着していたボルフォッグは、彼独自の判断により単独での迎撃を行うことを決意した。
 ボルフォッグとデーターリンクした多次元情報収集艦は使徒がこのままでは、GGGの勇者達が到着した時点での使徒迎撃地点が人口密集地である東京湾内となる事を予測していた。
 ならば、例え敵わなくともひとりでも多くの人命を救うことこそ彼ら勇者ロボ軍団の使命。
「ふっ、これが私の最後の任務になるかも知れませんね。しかし! 後悔はありません! トウ!」
 ボルフォッグは多次元情報収集艦を海面へ浮上させると、サイレンを掻き鳴らしつつ空中へ飛び上がった。
 反重力作用を持つウルテクエンジンは勇者ロボ軍団の空中戦を可能にした。
 ウルテクエンジンは緑色の光の粒子を撒き散らしつつ、ボルフォッグの体を空中へ運んだのだ。
 忍者の形状をした彼は2機の眷属に向かって合図を叫んだ。
「三位一体! 」
 するとガンドーベル、1トンを越す超重級のオートバイとガングルー、無人ヘリコプターが腕の形に変形した。
 それと同時にボルフォッグ自体も再変形を成し、より大型の体へと形を変えたのだ。
 そこへ先の2機が両肩に合体。ひとつのより大きな21.8メートルの身長のロボットへと変形を遂げた。
「ビーッグゥ・ボルフォオオオーッグゥ!!」
 ビッグボルフォッグへと合体変形したボルフォッグは名乗りを上げると両腕を開いて胸の位置にあるパトライトとサイレンを掻き鳴らし、特殊音波を発振した。
「メルティングサイレン!!」
 メルティングサイレンとは、ガオガイガーの中枢であるギャレオンの放つ咆吼によってEI−01のゾンダーバリアーが破られたことから開発が進んだ対エネルギー障壁用のアンチバリアーシステムである。
 これはゾンダーバリアーに対しては多大なる効果上げた。
 しかし、使徒の形成するATフィールドは精神障壁、ゾンダーのバリアーはエネルギー障壁と生成プロセスが異なる為に攪乱音波メルティングサイレンはATフィールドに対して効果を現さなかったのだ。
 ゆっくりと進む使徒の前面に立ちはだかりビッグボルフォッグはメルティングサイレンを掻き鳴らし続けた。
 しかし、その特殊音波はATフィールドを解除する所か、呆気なく跳ね返されて大気へと拡散していった。
 ビッグボルフォッグはギリギリまで粘ったのだが、遂にATフィールドと接触して大きく弾き飛ばされてしまった。
「くっ! 駄目ですか」
 彼は無念そうに呟くと地面に着地した。
 そう、彼がATフィールドを解除しようと頑張っている内にいつの間にか三浦半島まで後退してしまっていたのだ。
 彼は使徒に背を向けた状態で膝を付いていた。
 すると、使徒は不気味な髑髏の様な面でビッグボルフォッグを見た。
「危ないビッグボルフォッグ!」
 突然聞こえてきた声にビッグボルフォッグは反応した。
「なに!?」
 ビッグボルフォッグが慌てて振り返ると、使徒が薄い紙状の右腕をダランと垂らしたところだった。
 しかしそれは瞬時に引き締まり、ビッグボルフォッグを両断しようと鋭い刃物となって迫ってきた。
「しまった!」
 ビッグボルフォッグが避けようとした時には既に喉元まで刃物状の右腕が迫っており、如何に俊敏な忍者型ロボのビッグボルフォッグであろうとも避けきれる物ではなかった。しかし!
 先程ビッグボルフォッグに叫んだ声の持ち主達が東京方面よりミラーカタパルトで打ち出されて直ぐそこまで迫っていた。
「ウルテクライフル!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」
 いち早く使徒の行動に気付いていた氷竜と炎竜は空中であるにも関わらず新装備のウルテクライフルを使徒の腕に撃ち放った。
 間一髪、本当に間一髪で軌道がずれたゼルエルの腕をビッグボルフォッグは避けることが出来た。
「ムラサメソォォォド!」
 しかし流石にビッグボルフォッグも押されっ放しではなかった。振り向きざまに右手に装着されているガングルーのプロペラを回転させゼルエルの腕に斬りかかった。
 だが、ゼルエルの腕はどの様な材質で出来ているのか、全く傷つく事が無かったのだ。
「なんとっ!」
 ゼルエルはうるさい蝿でも見るかのようにビッグボルフォッグと氷竜、炎竜を眺めた。
 実際、ゼルエルの思考パターンは人類には一切理解不能だが、彼の第一級殲滅目標は勇者ロボ軍団ではなく、間違いなくエヴァンゲリオンそのものであった。勇者達の存在はただの障害物に過ぎない。
 勇者達は焦っていた。
 戦闘が長引くほど周辺に対する被害は増える一方である。
 それは彼らのAIを成すプログラムの大原則、アイザックアシモフの作り出したロボット3原則に抵触する物であった。
「くそっ! これじゃあ埒があかないぜ」
 勇者ロボ軍団の中でももっとも気の短い炎竜は毒づいた。
 それを彼の双子のAIである氷竜(ちなみに30秒ほど氷竜が兄である)が抑えた。
「ああ、こうなったらアレしかないな」
「そうこなくっちゃ! 行くぜ氷竜!」
「ああ、炎竜!」
 ふたりの心がシンクロした時、2機のAIのシンパレート値は上昇を始めた。
 メインオーダールームのGGG機動部隊オペレーター卯都木 命隊員のコンソールではその様子がハッキリと観察されていた。
「大河長官、氷竜炎竜のシンパレート値がどんどん上昇して行きます! 50% 60%・・・90%を越えました!」
「うむ。頼んだぞ! 氷竜、炎竜」
 大河長官は戦いの模様が映し出されている正面スクリーンに映し出された2機を信頼の眼差しで見つめていた。
 氷竜と炎竜はウルテクエンジンを吹かすと同時に空中に飛び上がった。
「「シンメトリカル、ドッキング!」」
 ふたりの掛け声と共に彼らの体は変形を始めた。
 赤い機体の炎竜は右半身に、青い機体の氷竜は左半身にその形を変えていった。
 だが、いくら超AIによって制御されるとは言え、2体のロボットが変形した上に合体するといった非常に複雑かつ微妙な制御が要求されるシンメトリカルドッキングは39.009秒もの時間が掛かる。
 その間は彼らは全くの無防備な状況に曝されるのだ。
 その隙を使徒が逃すはずがなかった。
 使徒は不気味な穴が開く面の奥から光を漏らし始めた。
 それは特殊装甲板をも軽々と貫く最凶の荷電粒子砲であった。
 もしも直撃を食らえば流石の勇者であってもひとたまりもない。
 しかし、使徒から荷電粒子の束が放たれたその時、未だにシンメトリカルドッキングは終了していなかったのだ。
 氷竜と炎竜、絶体絶命の危機。
 しかし、そこにビッグボルフォッグがその身を曝すように飛び込んできた。
「そうはさせません! ミラーコーティング!!」
 ビッグボルフォッグは、体内に内蔵されたあらゆる電磁波を跳ね返すミラー粒子を蒸着するミラーコーティング発生装置を作動させた。
 ミラー粒子は一瞬の内にビッグボルフォッグを包み込んだ。
 その一瞬の後、使徒の放った荷電粒子砲はビッグボルフォッグに命中した。
 99.9%の電磁波を遮断し反射するミラーコーティングと云えども限界はある。
 その使徒の放った荷電粒子砲の威力に流石のミラーコーティングも一瞬で剥ぎ取られてしまった。
 だが、その一瞬で良かったのだ。
「ぐはぁあ!」
 ビッグボルフォッグは一瞬だけ荷電粒子砲に立ちはだかり、その直後、爆発と共に弾き飛ばされてしまった。
 しかしビッグボルフォッグの勇気ある行動により、氷竜と炎竜を完全破壊する筈だった荷電粒子砲は空高く軌道を変えたのである。
 二〇〇メートルほど吹き飛ばされたビッグボルフォッグであったが、空中で姿勢を整えると足から着地することが出来た。
「ふぅ、危ないところでした」
 ビッグボルフォッグが命を賭けて稼いだ貴重な時間を使って、今、氷竜と炎竜、ふたりの熱い勇者が今シンメトリカルドッキングを終了したのだった。
  
 今、ここに新たなる勇者がいた、その名は超竜神!


 待機室にて使徒迎撃の状況を聞きながらアスカを待っていたシンジは、メインオーダールームへ連絡を取った。
 アスカが見つからないこの状況下、未だに致命傷は受けていないが使徒の勢いに押され、勇者ロボ軍団と使徒の戦いの場は確実にこのGアイランドへと近付いてきていた。
 もしも、アスカがあの戦いに巻き込まれたら。
 そう考えるだけでシンジは限りない不安感に身を包まれたのだ。
「すいません。シンジです。アスカは、アスカはまだ見つからないんですか!?」
 シンジに対応したのはスワン・ホワイトであった。
 彼女は慌てふためくシンジに落ち着くように言った。
「ヘーイ。ドウシタのデス、シンジ落ち着いて下さイ」
「落ち着けません。アスカが行方不明なんですよ? 早く見つけないと」
「分かっていまス。現在GGG諜報部が彼女の行方を追っています。直ぐに見つかりますカラ、待っていて下さい。シンジ、私達を信じて下さイ」
「・・・・・・よろしくお願いします、スワンさん」
「いえ、シンジの心配ももっともです。でも私達はアナタたちを絶対に見捨てたりしません。一緒に戦いまショウ」
「はい、失礼します」
 シンジはメインオーダールームとの回線を切った。
 レイはそんなシンジを横目で見ながらも、モニターに映る使徒の姿から目が離せなかった。
「・・・最強の使徒、ゼルエル。裏死海文書に於ける来訪者番号は壱拾四・・・」
 レイは以前、この世界に来る前、碇司令から教育されていた裏死海文書の情報から、この使徒が使徒の中でも最も猛々しいと呼称される存在である事を見抜いていた。
 しかし、その呟きは誰の耳にも入らず、薄い空気に溶けて行くばかりであった。


 超竜神は腰の両側に付いている2丁のライフルを乱射してゼルエルを止めようと試みた。しかし、ウルテクライフルとしてその出力が格段に上昇しているにも関わらず、その弾丸はゼルエルの前に展開している分厚いATフィールドによって完全に弾かれていた。
「くそぉ! このままじゃ奴を人口密集地帯に入れちまう。どうするビッグボルフォッグ」
「残念ながら私のメルティングサイレンを以てしてもあのATフィールドは解除できませんでした。今となっては使徒の正面から攻撃を続け、少しでも時間稼ぎをする事位しか手段はありません。それよりもイレーザーヘッドの使用を検討してみては」
「いや、アイツの持つATフィールドは時空湾曲場だ。如何なるエネルギー場や物質を宇宙空間へ吹き飛ばすことの出来るイレーザーヘッドとは言え、アイツに効果があるとは思えない」
「では、残された手段としてはこのまま攻撃を続ける他に我々には打つ手は有りませんな」
「そういうこった! 行くぜ! ビッグボルフォッグ」
「望むところです」
 超竜神とビッグボルフォッグはゼルエルに対してありったけの弾を撃ち込み、拳を打ち込み更には体当たりまで行なった。
 勿論ゼルエルも黙って攻撃を受け続けた訳ではない。
 少し離れれば加粒子砲を撃ち、接近すれば薄い布状の両腕を突き刺してきた。
 だが、人命を守る為身を捨てて戦うふたりの勇者はその攻撃を紙一重でかわし続け、時には機体の一部を砕かれながらも戦いを続けた。
 だがしかし、健闘虚しくゼルエルはとうとうGアイランドへと戦場を移した。
 既に戦闘が始まってから2時間が過ぎていた。
 彼らに掛かった負荷は見た目以上に大きく、装甲板が脱落しているだけならまだしもフレーム自体にも歪みが発生していた。
 戦闘終了後、整備主任オペレーターの牛山一男が泣くことになるだろう。
 その時、Gアイランドの地下から凱がギャレオンにフュージョンしたメガノイド、ガイガーがようやくその姿を現した。
「待たせたな! 超竜神、ビッグボルフォッグ」
「遅いぜ隊長!」
「お待ちしておりました、ガイ隊長」
「それじゃあ行くぜ! ファイナルフュージョン!」
 ガイガーは空中に飛び上がった。
 凱から送られたファイナルフュージョン要請シグナルは、GGGメインオーダールームへと届いた。
 それは機動部隊オペレーターの卯都木隊員のコンソールに表示された。
「長官! 凱からファイナルフュージョン要請シグナルが届いています」
 命はそれを確認すると、後ろで全体の戦況を確認していたGGG最高司令官である大河長官へ伝えた。
「よぅし! ファイナルフュージョン、承認!」
「了解! ファイナルフュージョン、プログラム ドラァァアアアイヴ!!」
 命はファイナルフュージョン起動プログラム操作画面を呼び出すと、コンソールに備え付けられているアクリル板に拳を叩き付けた。
 命の一撃によりアクリル板は砕け散り、その下に保護されているファイナルフュージョン起動ボタンが押し込まれた。
 メインオーダールームから発動された起動プログラムは米軍軍用規格に適合した通信形式の通信機を通じてガイガーへと伝達された。
 それらは各ガオーマシン、飛行ユニット・ステルスガオー、鉄道ユニット・ライナーガオー、地中走行ユニット・ドリルガオーにも伝達されファイナルフュージョンを行うべく集結を開始した。
 ガイガーは緑色のGリキッドを含んだ霧状の電磁波攪乱物質を放出した。
 それはガイガーが回転することによってガイガーの周りを渦状に取り囲み、電磁竜巻がその姿を隠した。
 そこから漏れだした緑色の霧がGアイランドの町を包み込む。


 アスカは鈍い振動を体に感じた。
 惰眠を貪っていたアスカであったが、その時彼女の胸ポケットから鋭い電子音が聞こえてきた。
 半分目を覚ましていたアスカはそれにより目を覚ました。
 暫くボーっとしていたのだが、続いて起こった激しい振動を感じて窓の外を見た。
 だが、窓の外は緑色の霧に包まれよく見えなかった。
「霧? なに? もう朝なの?」
 アスカは窓に近寄り天候を見ようとした。
 するとその目の前に広がっていたのはゼルエルとGGG勇者ロボット軍団が戦いを繰り広げる戦場であったのだ。
「何・・・あれ。何で、緊急警報とか鳴らさなかったのよ!」
 アスカがGGGポケベルの着信スイッチを入れるとメインオーダールームのスワンのコンソールにアスカの現在位置が表示された。

「大変デス、長官。アスカは今自室に、Gアイランドの地上にいマース!」
「何だと! スワンくん。それは本当なのか!?」
「ハイ、GGGポケベルはアスカの自室にて着信信号を発しています。」
「何てこったぁ! 卯都木くん! 今すぐビッグボルフォッグに連絡を取ってくれたまえ」
「了解! ビッグボルフォッグ、聞こえる?」
『ハイ、卯都木隊員。状況は分かりました』
「頼むわね。アスカちゃんを助けて上げて」
『了解です。お任せ下さい』
 ビッグボルフォッグは連絡の後、直ぐにアスカの自室へと駆けつけた。
 しかし、そこはゼルエルの正面に位置していた。
 ゼルエルは宇宙開発公団タワーへ向かって前進していた、このままではあと1分ほどでアスカの部屋はゼルエルによって粉砕されてしまう。
 ビッグボルフォッグは可能な限りの速さで大地を駆けた。
 だが、それがゼルエルに刺激を与えてしまった。
 ビッグボルフォッグの巨大な腕が部屋の窓を割りアスカを掴んだその瞬間ゼルエルは荷電粒子砲をアスカ達に向け放ったのだ。
「キャアアアア! シンジィ!」
「しまった!」
 悲鳴を上げるアスカとビッグボルフォッグ。
 しかし、神はふたりを見放さなかった。
「プロテクト・ウォール!」
 ファイナルフュージョンを終了したガオガイガーがふたりの目の前に降り立ち、左腕を前に突き出すと左腕から反発エネルギーの奔流が溢れだした。
 右腕に宿る破壊のエネルギーと対を成す左手の持つ能力、防御的反発エネルギーはゼルエルの放った荷電粒子ビームを受け止めた。
「どぉおおおおおりゃああ!」
 凱が気合いを込めるとプロテクト・ウォールの光は更にその力を強めた。
 不意に、それまで拡散していた荷電粒子ビームが五芳星の形に流れを変えた。
 受け止めていたビームが完全な星形になると、それはゼルエル目掛けて弾き返されたのだ。
 すかさずゼルエルもATフィールドを全開にしてそれを受け止めようとしたが、今回は楯よりも矛の威力の方が強かった。
 自分が放った荷電粒子ビームは数倍の衝撃となってそれを打ち出した本人に襲いかかったのだ。
 その為に荷電粒子はゼルエルのATフィールドを砕くとゼルエルの自身の体に突き刺さったのだ。
 閃光は天高く立ち上り、十字の柱となって輝いた。
 最強の使者ゼルエルの体は閃光の中に消えた。


「これが、ガオガイガー」
 生身で初めて至近距離からガオガイガーを見上げたアスカは、機械科学の結晶、勇者王ガオガイガーに力強い信頼を感じていた。


 激しい輝きを放っていた閃光は消えた。だが、その中にいたゼルエルの姿はそのまま残った。
 あれだけの攻撃を喰らって尚、その姿に異常は見当たらなかった。正に最強の使徒の面目躍如である。
「なんだと! あの攻撃に耐えたって言うのか。バケモノめ。ならば!!」
 ユラリと揺らめく大気の向こうにATフィールドを展開しているゼルエルの姿があった。
「出番だ! プライヤーズ!!」
 ガオガイガーは新たなる勇者、プライヤーズを呼んだ。
 3体の円筒形をした比較的単純な構造のロボットが、機械言語でそれに答えながらビッグオーダールーム直送口から射出された。
「ツールコネクト!」
 凱が叫ぶと3体のプライヤーズはペンチ型に合体し柄の部分であるDP−R2がガオガイガーの右腕にDP−L3が左腕に装着された。
「空間修復! ディメンジョン プライヤァアアア!!」
 凱の叫び声と共に右腕の破壊エネルギーと左腕の防御エネルギーがプライヤーズに伝達された。
 そのエネルギー流はプライヤーズの内部で変換増幅され、DP−C1の先端から放たれた特殊なエネルギーは時空の縺れを強制的に解除するのである。
 その為、例えバリヤーの種別が何であろうとバリアーと言う空間歪曲場はディメンジョンプライヤーにより強制的に通常空間から引き剥がされ、その時発生する反時計方向の回転遠心力により時空の彼方へ吹き飛ばされてしまうのだ。
 果たして、ディメンジョンプライヤーはその効果を十二分に発揮した。
 ゼルエルの前に展開していたオレンジ色の分厚いATフィールドは、ペンチ状をしたプライヤーズの先端に挟み込まれた。
 そしてガオガイガーは両腕からエネルギーを送り込み、力任せにATフィールドをゼルエルから剥ぎ飛ばした。


「凄い。最強の鎧ATフィールドをあんな方法で突破するなんて」
 アスカは自分の常識を越えた展開に目を疑った。
 使徒のATフィールドを突破できるのは同じATフィールドを持つエヴァンゲリオンだけ。
 人類を守ることが出来るのは自分たちだけだと自負していただけに、この光景はアスカにとって衝撃的だった。


「今だ! ゴルディオンハンマー」
 ガオガイガーは傍らに置いてあった巨大なハンマーを手に取った。
 そのハンマーの大きさはほぼガオガイガーと同程度、そのシュールな光景にアスカは目が点になってしまった。
「何よ、あれ。ピコピコハンマー?」
『ピコピコハンマーは酷いなアスカくん』
「獅子王博士」
『あれぞ人類科学が生み出した最強の破壊ツール、ゴルディオンハンマーだ』
「ゴルディオンハンマー・・・」
『ああ、正式名称はグラビティ・ショックウェーブ・ジェネレイティング・ショックツール。Gツールと読んでくれたまえ』
「グラビティ・ショックウェーブ。重力衝撃波!?」
『ああ、一定の周波数の衝撃波を相手に叩き込み、あらゆる物質の粒子構造を強制変更し光の粒子に変換してしまうんじゃ』
「すごーい。(アレ? 何か心に引っかかる感じがする)・・・でも・・・」
『? 何か不審な点でもあるのかね、アスカくん』
 獅子王博士はアスカの答えに不信感を抱いた。彼は人を見る目に優れていると自負していた。
 そして、浄解されたあとのアスカは彼の眼鏡に適う優秀な人物のひとりとして数えられていた。
 そのアスカが何か感じている、これは無視できる事ではなかった。
 そうしている内にもガオガイガーはゼルエルに向けて攻撃を敢行した。
 最強のGツール、ゴルディオンハンマーをそのまま右手に掴んだガオガイガーは、ディメンジョンプライヤーによって剥ぎ取ったゼルエルのATフィールドの裂け目からそれを叩き付けた。
 それを見ていたアスカは、獅子王博士の説明からひとつの結論を導き出し、使徒に対してのGツール運用に重大な欠点があることに気が付いた。
「駄目! ゴルディオンハンマーでは使徒は倒せない!」
 アスカの叫び声がメインオーダールームに響き渡った。
『何!?』
『いったいそれはどういうことなんだアスカくん』
「だって使徒は!」
 アスカが説明しようとした瞬間、スピーカーから凱の声が聞こえてきた。
「天使の名を持つ人類の敵よ! 光になぁれぇぇええ!!」
 黄金色に輝くガオガイガーは、その巨大なハンマーをそのままゼルエルの頭上に叩き込んだ。




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