スワン・ホワイトが運転する自動車は'第3新東京市から双子山の方へ向かっていた。
 そう、第5使徒ラミエル迎撃戦、ヤシマ作戦時にエヴァの狙撃地点として選ばれた場所である。
 しかし、世界異変の後のこの場所はその双子山ではなかった。
 車の中にはエヴァンゲリオンパイロット3人が後部座席に収まっていた。
 ただし、アスカの様子は最悪であった。
 この世界に来ていた第3新東京市の様子を調べに来た彼ら3人+ひとりであったのだが、この第3新東京市は彼らの所属していた世界のものではなかったのだ。
 ネルフ捜索を続けていた彼らが休憩のために入ったファーストフード店には綾波レイの事を知らないクラスメート、鈴原トウジ相田ケンスケ洞木ヒカリ、そして彼らの担任教師である葛城ミサトと同僚の赤木リツコに出会いここが彼らの所属する世界ではないことに気付かされた。
 それでも諦められなかった3人はこの第3新東京市にあったコンフォート17、最後のよりどころであるホームへと向かったがそこでアスカは自らを殺そうとし自殺した、惣龍・キョウコ・ツェッペリンに出会いその精神を摩耗させてしまったのだ。
 心身共に消耗したアスカを連れてスワンは車を走らせていた。
 だが、双子山近くのトンネルに入ったとき、スワンは急にクルマを止めた。
 シンジは車がトンネル内に止まったのに気付き、スワンに問いただした。

「スワンさん。どうしたんですか、こんなところで車を止めて。さっきから町中から遠ざかっているようだし・・・」
「シンジ、ここでいいノデース」

 そう言うとスワンは怪しい笑いを浮かべた。

「す、スワンさん?」
「Just Morment.チョット、待ってて下さーい。」

 そう言い、クルマのクラクションを断続的に掻き鳴らし始めた。
 その音にアスカは反応し、苦しげな表情と苦痛に満ちた悲鳴を上げる。
 シンジは痛々しいアスカの様子に居ても立ってもいられなくなった。

「スワンさん、やめて下さい。・・・アスカが、アスカが!」

 だが、シンジの抗議の声を聞いてもスワンはクラクションを鳴らすことをやめなかった。

「・・・・・・モールス信号、すべての通信の基本をなす、そして最も確実に伝わる意志伝達の信号・・・今は使われていない筈だけど・・・」

 レイはクラクションの意味に気付き、そう呟いた。
 シンジはレイの言葉に気を引かれた。

「綾波、それって一体・・・」
「彼女は何かに呼びかけているの・・・。信じて待っていることが最も有効ね」
「本当なの綾波、ボク信じられないよ!」
「どうしてそう云うこと言うの?」

 レイはシンジの方へ顔を向ける。
 シンジは自分に向けられたレイの真紅の瞳を見た。
 表情の浮かんでこない貌の中でその瞳だけが信頼の意志を声高らかに歌い上げていた。
 シンジはそれを見て恥じ入った。

「そうだった、ボク達はスワンさん達を信じたんだよね。ゴメン綾波。分かったよ。・・・アスカ、我慢してよ」

 せめてもと、シンジはアスカの耳に手を当てるとトンネル内部に響き更にうるさい効果を上げている騒音を和らげようとした。
 その瞬間、アスカは目を開けてシンジを睨み付けたが、心底心配しているシンジの顔を見た瞬間再び目を閉じた。

「アスカ・・・」

 しばらくしてスワンはクラクションを鳴らすことを止めた。

「スワン・・さん?」
「大丈夫でーす。シンジィ? あとは彼らが扉を開いてくれるのを待つだけデース」
「彼ら、彼らって誰なんですか? スワンさん」
「それは、この地に於いて、恒星間侵略戦争の混乱から地球を救い続けてきた組織、T.D.Fデース」
「ティーディーエフ?」
「イェス。テレストリアル ディフェンス フォース、つまーり、地球防衛軍の事でありますデス」
「地球防衛軍・・・」

 そう、つまりスワンはこの場所にNERVと言う組織がないことを知りつつ、エヴァチルドレンのGGGに対する信頼度を上げる為わざわざここまで彼らを連れて来たのだが、それはカモフラージュであって実際はGGGの放送に応じてGGGに連絡を取ってきたTDFとの交渉が目的であったのだ。
 実際の交渉は先ほどすべて終了していたのだが、緊急を要する件、アスカの治療に最も適した施設を検索した結果、ここが最も最適と思われたのでスワンはわざわざアンヌ隊員によってもたらされた連絡場所にて信号を取ったというわけである。
 その返事は直ぐに返ってきた。
 トンネル内の照明がすべて消え去り、それが又点いたときにはスワンたちの車は跡形もなく消えていた。




スーパーSF大戦・第5話

天の使いとのたたかい





 GGGメインオーダールーム。
 スワンたちが帰還する予定時刻21:00になったが、22:00現在を過ぎた今になっても、何の連絡も入っていない。
 渋滞と言う事は考えられなかった。
 いきなり時空融合してしまったこの世界では、加治首相が中心となって現在急速に情報が整理されつつある。
 だが、時空融合後に出現した今、同じように出現した隣の市であってもそこが知り合いが住んでいた自分と同じ世界の物か、それともそっくりなだけの別の物なのか確認出来ないのが現状である。
 その為、自動車の交通量も自然と減り、一般的な日本人の家庭では夜間の外出はほとんど無かった。
 それはここ、川崎市沖合に建造されたGアイランドであっても同様だった。
 もともとここは宇宙開発公団に務める者が住まう土地柄である為に混乱は少なかったが、GGGの放送以来すべての住民は声を潜めるように夜を過ごしていた。
 普段は夜間の照明を消している宇宙開発公団のビルであったが、ここ数日はGアイランドの住民の不安を少なくするために常時照明を点けられていた。
 その真下、GGGの本部に於いて。
 宇宙開発公団の地下、海中に浮かんでいるヘキサゴンに接続されたエリア4こと水陸両用装甲車では、先程格納されたエヴァンゲリオン3機の解析が始められていた。
 獅子王 麗雄博士をメインスタッフとしてレントゲンや触診、磁気共鳴診断装置などあらゆる非破壊検査によってエヴァンゲリオンの調査が進められていた。

「ふ〜む。これは興味深い。」

大体の構造が解明された頃、獅子王博士は長官にに報告することを決めた。
 レポート用紙をファイルに挟み、博士はメインオーダールームに姿を現した。

「よぉ〜お、みんな元気にやっているかねぇ?」
「博士、何か分かりましたか、」

 その時メインオーダールームに詰めていた面々は興味津々とした様子で獅子王博士の方へと顔を向けた。

「うむ、まださわりの所なんだがの。一応調査がまとまったので報告しにきた訳じゃ」
「それでは!」
「うむ、充分戦力として使えそうじゃの。ただし・・・」

 獅子王博士は目を伏せ、言葉を途切らせた。
 大河長官は獅子王博士に先を促す。

「ただし?」
「それより長官。我らが勇者たちにも報告を聞かせたいのじゃ、よろしいかな」
「ふむ、そうでしたね博士。我々は仲間、彼らにも聞かせるべきでしょう。スワンくん!はまだ帰ってきていなかったな、ミコトくん、頼んで良いかね?」
「はい、長官」

 ミコトは自席を離れると通路を挟んで向かい側、スワンの席についた。

「それでは、メインオーダールームのリフトダウンを行います」
「うむ、承認」
「いっきま〜す」

 ミコトがスワンの席に設置されているレバーを引き倒すと、メインオーダールームは円柱状の昇降路を下へ下へと降りて行き、ビッグオーダールームへと到着した。
 ビッグオーダールームとは、超AIを搭載したGGG機動ロボットの面々が待機する巨大な部屋である。
 そこの中央に設置してある円卓上にメインオーダールームは降り立った。
 そのビッグオーダールームには時空融合現象の際に災害救助に駆け回ったビークルロボ氷竜(クレーン車型)と炎竜(消防車型)、そして先頃起動に成功したばかりのGGG諜報部所属の諜報ロボ・ボルフォッグ(忍者型)、そしてビッグオーダールームのマスコット・ピギーちゃんがくつろいでいた。
 彼らはメインオーダールームを取り囲むように席に着くと大河長官の言葉を待った。

「諸君、獅子王博士が行ったエヴァンゲリオンの調査報告を行う。諸君にも一緒に聞いて貰いたい。では博士」
「うむ、それではボクの調査した結果を簡単に報告しよう。」

 博士は、それぞれの席の画面にエヴァンゲリオンの透視図と性能諸源や構造を表示した。

「まず結論から報告しよう。エヴァンゲリオンは我々の勇者たちとは全く逆のアプローチで作られている。つまり、我々がGストーンを用いた超AIによって無機質によって構成されたロボットを造り上げたのとは逆に、人間が乗り込んで操縦する有機体によって構成された人造人間とも云うべき存在をコンピューターと神経刺激によって動かす物である。」

 ええっ!とその場にいた全員が軽い驚愕の声を上げた。

「と云う事はアレは人間なのですか? 博士」
「ううむ、それがハッキリとした事はまだ言えないのだが、人間の遺伝子と99.89%共通した信号で構成された情報体を持っているんじゃ。まぁ、構成が少し異なるが、チンパンジーと人間の中間ぐらいの共通項を持っている。ただし」
「ただし?」
「ただし、その構成物質は光に似た性質を持つ波とも粒子とも言える物で構成されている。ハッキリ言ってよくわからんのよ」
「なんだ、父さん。そのくらい分からないのかよ」
「そうは言うがなガイ、すべてを非破壊検査によって行わなければならないんじゃぞ、それにまだコンピューターシステムには手を出しておらん、あそこを調査できれば機体のマニュアルとかも手にはいると思うんじゃがのぅ。猿頭寺くん、ボルフォッグとともにエヴァンゲリオンのコンピューターに対してハッキングを掛けてもらえんかね」

 獅子王博士はボサボサに伸ばしている長髪をボリボリと掻く諜報部猿頭寺オペーレーターに協力を要請した。

「はぁ、構いませんが。ボルフォッグ、いきなりの重要任務だが、やってくれるかい?」
「はい、勿論やらせていただきます。わたくしと多次元諜報潜水艦の全力を以て当たらせていただきます」
「うむ、結構。期待しているぞ」
「光栄であります、長官」
「さて、それからエヴァンゲリオンの動力システムだが、電池で動作を行うらしい。」

 それを聞いたメカニック担当のオペレーター牛山 一男は驚きの声を上げた。

「ええ、内燃機関ではないのですか?」
「うむ。どうにも分からないんだが、駆動用のエネルギーシステムは電池しか発見できなかった。  しかし、消費電力から計算すると1、2〜5分位しか保ちそうにないんじゃが、それでは戦闘兵器としては成り立たない。  後背部にソケットのような物があることはあるんじゃが、まさか有線で戦闘を行うことなど出来るはずもないし、う〜む。さっぱりじゃな。  内部に構成素材すら分からないブラックボックスが存在するから、そこから電源を供給するのかも知れないが、良く分からんな」

 正に謎だらけの存在であるエヴァンゲリオンについての説明は深夜まで行われた。


 翌日早くGGGにひとつの電報が届いた。凄いぞ郵便局。
 さて、その電報は[ サクラサク アスカ タオレル キカンオクレル−スワン ]であった。
 その電報を受け取った大河長官は迎えを出そうとした。
 が、突然鳴り響いた警戒システムの警報によってそのチャンスは断たれた。


<午前10時>
 横須賀の米軍基地に係留している駐留米海軍船籍のイージス艦からGGGに連絡があった。
 艦載3次元レーダーにより発見されたというそれは水平線の向こう、太平洋の東海上約200キロメートルの海上より東京を目指している謎の飛行物体が浮遊しながら確実に接近しつつある、と言うのだ。
 すでに横須賀係留中のキティホーク航空母艦を中核とする戦略戦隊が東京湾から太平洋へと脱出を始めていた。
 海軍の戦術偵察機が発艦し、目標の確認に向かっていたが数分後、突然 DATA LINK が途切れた。
 すぐさま待機していた救助用ヘリコプターが発進したが、それすらも消息を絶ってしまった。
 米艦隊はすぐさま臨戦体勢に切り代わり、慌ただしく出港準備を進めていたが謎の飛行物体は着々とその距離を縮めつつあった。
 大河長官はすぐさま多次元諜報潜水艦とボルフォッグに出撃を命令した。
 GGGの下、ヘキサゴンから多次元諜報潜水艦が分離、海中を目標へと近付いて行く。
 高速で現場へと移動した多次元諜報潜水艦は、目標が水平線から姿を現すと計算された海域にて待機し、その持てるセンサーの全てを用いて目標のデーターを取り始めた。
 その間に米軍は偵察機<HAWK EYE>を周辺空域に4機を周回、F−14トムキャット要撃戦闘機を迎撃に発艦させ始めた。
 編隊を組み、攻撃準備を終えた米海軍航空機は目標へと進路を取る。そこで待ち受けていたのは・・・。
 攻撃隊隊長のニールセン・コモドイは航空無線を使い、YOKOHAMA本部管制の下、目標への攻撃準備を完了ていた。

「こちら航空騎兵隊隊長アローリーダー、本部どうぞ、OVER」
「こちら本部ベースドラゴン、アローリーダー受信状況良好。これより貴方はベースドラゴンの管制下に入る。OVER」
「アローリーダー了解。ベースドラゴン、敵目標の諸源を報告されたし、OVER」
「アローリーダー、敵能力諸源は不明、目標位置諸源を送る。ロングレンジにてフォックス1にて攻撃後離脱せよ、OVER」
「アローリーダー了解、OVER」

 ニールセンは航空無線を編隊内用に切り換え、命令を伝えた。
 3機のホークアイによって送られたデーターは横浜基地にてリアルタイムで情報処理され、攻撃編隊に流された。
 データーリンクにより攻撃編隊はひとつの生き物のように動き、距離を詰め、順次対艦ミサイルを発射し、翼をひるがえして退避行動に移ったその時。
 ただただ青く広がる青空に一条の光線が放たれた。
 青いガラスの4角錐を2つ合わせたような不思議なその物体は、その側壁から強力な過粒子砲を編隊のド真ん中へとブチ込んだのであった。
 その光線の直撃を受けたF−14は一機も無かったにも関わらず、光線から千切れるように拡散した荷電粒子が致命的なエネルギーを保ちつつ近くのF−14を打ち砕き、その機体を爆発四散させた。
 辛うじて飛んでいる機体でさえも非常識なまでの電磁波によりアビオニクス(航空制御装置)を焼き切られ、その大部分が太平洋上へと消えた。

「こちらアローリーダー、ベースドラゴン応答されたし、OVER」
「・・・・ザ・・・ァァー。Zzah・・・ザザ、アロー・・・ダー・・・・・・らベー・・・D・・・ラゴ"・・・作・・・は失"s・・・・・・。'シち・・・"P'゙・・・よ。"P'゙・・・・・・。オー・・・ァー。」

 電磁波による空電状態は最悪。デジタル情報でさえも完全には通信が出来なくなっていた。
 ニールセンは怒りを露わにし、呪いの言葉を叫んだ。

「畜生!ファッキュー! 一瞬で全滅かよ! 何なんだあの悪魔は! 神よ、我々に天使を遣わし、汝の敵を討ち滅ぼし賜え」

 ニールセンは自らが信じる神への祈りを上げると、ふらつく機体を苦労して操りつつ空母キティホークへの進路を取った。
 その時彼の目に白煙を引きつつキティーホークが存在する方向から無数の飛行物体が自分の方を目指して飛んでくるのが確認できた。
 だが、彼は慌てなかった。その飛行物体が味方艦隊から発射された高性能巡航ミサイルであることが確認できたからだ。

「仇を取ってくれ!」

 ニールセンは、仲間たちの敵討ちをそのミサイル群に求めた。
 そのミサイルは過粒子砲による迎撃を何故か受けなかった。
 ミサイルは高速を保ったまま目標に接触すると次々と爆発を起こした。
 だが、それは目標の前方に展開された八角形をしたオレンジ色のバリアーに阻まれ目標に何らもダメージを与えていなかったのだ。
 その戦闘の一部始終を海面で観察していた多次元情報潜水艦のボルフォッグは記録していた。
 一連の迎撃行動が終わり、そしてひとつの結論を得るとGGG本部へと報告を送信した

 太平洋上に現れ、東京を目指す謎の飛行物体の情報は双子山の下に隠されているTDF極東支部にも報告されていた。
 極度の緊張状態に陥ったアスカとその付き添いであるシンジ、レイの3人は第2医療室にいた。
 だが、GGG研究部オペーレーターであり又、アメリカ軍特別情報部員でもあるスワン・ホワイトはウルトラ警備隊の作戦司令室にて状況の推移を見守っていた。
 いかなる技術を用いたのか分からないが、如何なる航空機も存在しない場所からの映像がウルトラ警備隊室の正面モニターに映し出されていた。
 ウルトラ警備隊隊長であるキリヤマはスワンに訊いた。

「スワンくん、この敵性体は君たちの敵である異星知性体であるゾンダーと関係があるのかね?」
「イイエ、ソウは思エません。バリアーシステムを所有するナド共通項モ多いのデスが、バリアー形式などがゾンダーと異なるマス」
「ふむ、しかしコレが人類に対する攻撃システムであることに違いない。我々は地球の安全を守るため異星人の侵略を許すわけにはいかないのだ。これよりこの物体を異星人の侵略と認め直ちに攻撃に移る。フルハシとアンヌはウルトラホーク3号で出撃、残りは私とウルトラホーク1号で出撃だ!」
「了解!」
「キリヤマ隊長、ちょっと良いですか?」
「どうしたソガ」
「さきほどのバリアーの出力を計算した所、ウルトラホーク1号ならびに3号の火器ではこれを破ることは出来ません」
「ナニ?! それは本当か!」
「はい。あれを突破するには現在開発中の質量兵器<MIM−031a>を用いるのが最適だと思われます」
「ふむ、使えるのか?」
「現在、試作品が1発だけですが完成しています。ただしまだ誘導システムなどのテストを行っていないため慎重な運用が大前提となりますが・・・」
「かまわん! 敵を倒すことが出来なければ何にもならないからな。ソガは新型質量兵器を直ちにホーク1号に搭載せよ。フルハシとアンヌはホーク3号で直ちに発進」
「了解しました。」

 地球防衛軍の精鋭であるウルトラ警備隊の面々はダッシュで任務に取りかかった。
 キリヤマ隊長はスワンの方に振り向いた。

「スワンくん。君はあの子供たちの所へ行きたまえ。こちらの方は心配いらない」
「イエ、でも」
「これは命令だ」
「・・・分かりまシタ」

 スワンは肩を落としながら第2メディカルルームへと足を進めた。
 彼女はGGGの事が心配なため状況を常に把握しようとしていたのだが、それは叶わない様である。
 出来るだけ早くGアイランドへ戻れるように画策する必要が出来た。
 さてその頃、GアイランドのGGGメインオーダールームでは。
 猿頭寺オペーレーターがボルフォッグからの報告を解析していた。

「ううむ、コレは・・・。獅子王博士! これを見て貰えませんでしょうか」
「どうしたのかね猿頭寺くん」
「敵性体の解析概念図なんですが、構成パターンが人類の遺伝子とパターンの99.89%と共通しています。これは・・・」
「なにぃ! ふうぅむ。エヴァンゲリオンと共通しているというわけか。つまりこの敵性体は彼らの言っていた<使徒>であると考えて間違いあるまい」
「ええ、そしてその目的も」
「この基地に格納してあるエヴァンゲリオンと言うことか!」
「まず、間違いないでしょう」
「なるほど、しかし敵の目的が分かっただけでも対処方法の検討がし易いものと言うものだ。長官」
「うむ、直ぐにGアイランド並びに周辺地域に避難勧告。GGG機動部隊直ちに出撃し、Gアイランドを死守せよ!」
「「「「「 了解 」」」」」

 獅子王ガイと勇者軍団は3段甲板空母へと乗り込み、発進を待つ事になった。
 その間に獅子王ガイは獅子型ロボットのギャレオンとのフュージョンを敢行した。


「フュージョン!」


 ガイはギャレオンの口中に飛び込むとギャレオンの中枢経路との融合を行った。
 ガイとギャレオンが融合し、ギャレオンの制御をガイが執り行い獅子の外観を持つギャレオンから人型のガイガーへと変形が行われるのだ。


「ガイガー!」



 ギャレオンとフュージョンしたガイは汎用メカノイド・ガイガーへ変形を完了した。

「3段飛行甲板空母発進!」
「了解。エリア1、3段飛行甲板空母発進!」

 GGGベイタワー基地から分離した3段飛行甲板空母はまっしぐらに海面めざして上昇を始めた。

 さて、ここは平和な光景が続いている第3新東京市の郊外。
 元々湿地帯のこの場所には荒れ果てた様な耕地跡が広がっている。
 GGGの勇者ロボット軍団がGアイランドでの迎撃準備に追われていた頃、ここで第3新東京市市立第1中学校2年の相田ケンスケ(14)が独自の軍事教練に励んでいた。

「ズズーン、バリバリバリ! グワァー! 小隊長殿! うう、私はもうダメだ後を頼む! イヤです、自分は小隊長殿を置いてなど行けません! バカ! バキ! うわぁ! いいか相田3尉生きていればいつか必ず勝つことが出来る、さぁ直ぐに行け! しょ・・・小隊長どのぉぉぉ! がんばれよ! ハイ相田3尉がんばりマスであります」

 と言うようなことを無人の荒れ地で大げさな振り付けとセリフでひとり芝居している物だから、ハッキリ言って誰かが通りがかったらそのまま警察へ通報されるであろう事は間違いなかった。

「あー、虚し・・・」

 だがしかし、さすがに虚しくなったのか深く溜め息を付くとテントを張ったキャンプへと戻ってきた。

「はぁ〜。なんかつまんないなぁ。真司も桃児もこういうことに興味ないようだし、今頃明日香や委員長とよろしくやってんのかなぁ。あーああ、なんかこう今までの常識がひっくり返る様な凄いことでも起きないかなぁ。せっかく世界的な大異変が起こったって言うのにここら辺じゃ何の事件も起こらないんだもんなぁ」

 知らぬが仏とは言え、それが一番いいことなのだが彼はそう思わなかったらしい。
 彼はボーっと山の方を眺めていたのだが、急にその山から鳥たちが一斉に飛び立った。
 彼が興味をそそられその一帯を観察していると、双子山の山腹がスライドし、その中から超近代的なメカニックの固まりが姿を見せた。

「凄ぇ! まるでSFの秘密基地みたいだ」

みたい〜じゃなくって本物だっちゃ。

『4th gate open.Force gate open! All light? Let‘s Go!』

 双子山の山腹に開いたゲートから管制官のアナウンスが微かにこぼれてくる。
 突然そのゲートからもの凄い煙が立ちのぼったかと思うと、まるで火山が噴火したかのような凄まじい地響きと大音響がケンスケを襲った。
 彼が耳を押さえながらもゲートの方を見ていると、その中から50メートルはありそうな巨大な戦闘機が飛び立とうとしていた。
 だがカタパルトの推力だけでは足りずアフターバーナーとVTOL用のエンジンを全開にしてようやくフラフラと空へと飛び立つ事が出来たウルトラホーク1号の姿が見えた。
 UH−1はそのまま一気に高度を稼ぐと北東の方角へと姿を消した。
 ケンスケはビデオに撮り忘れたことに悔やみながらも、目をランランと輝かせ興奮した口調で叫びだした。

「凄い凄い! スゴ過ぎるーっ!」

 彼はいつまでもウルトラホークが消え去った方を見続けていた。

 一方、ウルトラホーク1号を操縦するソガ隊員は冷や汗を流した。

「ひゅう・・・。危なかった。カタパルトを用いてアフターバーナー全開の上にVTOL用エンジンを目一杯使ってもギリギリでしか離陸できないとは、未だに改良の余地があるな、新開発の質量兵器<MIM−031a>は」
「なんだ、重量計算はやっていなかったのか?」
「いえ、キリヤマ隊長、計算上は問題ありませんでしたがMIM−031a弾頭は運搬用のミサイルの形状の空気抵抗が大きすぎたために予定外の抵抗が掛かってしまったようです」
「未だ、改良の余地があると言うことだな」
「はい、何分試作段階な物ですので。なにしろミサイルの大きさはこの巨大なウルトラホーク1号の約半分の大きさがありますし、その重さは小型タンカー1隻分の超純水に金属イオンを添加し超高圧、超低温で圧縮した金属氷を弾頭にした物ですからその合計重量は8万トンを越えています。通常装備で大気圏外へ往還出来るウルトラホーク1号でも流石にきついですね」
「整備班泣かせだな」
「その点は反省しております」
「よし、攻撃準備に入れ」
「了解!」

 MIM−31a質量弾頭弾は弾頭が目標に衝突するエネルギーが直接の破壊エネルギーとなる。
 通常は動くことのない要塞などに使用されるべき物だが、今回のような比較的低速で移動する目標になら使用することが可能なのである。
 さて、質量兵器の効力を発揮するためには、弾頭が目標に高速で命中するほど威力が上がる。
 だが地上を超音速で飛行すると発生した衝撃波で地上に大きな被害が出てしまう為ウルトラホーク1号は一旦相模灘から三浦半島沖へ移動し浦賀水道を北上し始めた。まだこの時期は水上運送がそれ程活発ではなかったので出来た対応である。
 ウルトラホーク1号はエンジンをフル回転させ、超音速で目標空域に向けて突き進んでいった。

 その頃使徒、元の世界では既に撃破された筈の第5使徒ラミエルはGGGのあるGアイランド沖合1キロの地点にまで侵攻してきていた。

「畜生! あんな空の上にいたんじゃ、俺たちじゃ攻撃しづらいぜ」
「落ちつけ炎竜、もうすぐ我々の火器の射程距離内に入る。ここはジッと待つんだ」
「でもよぉ」
「氷竜の言うとおりだぞ炎竜」
「ガイ隊長!」
「いいか、オレがステルスガオーを使って奴の目を攪乱する。その隙にお前達が奴に攻撃を加えるんだ、頼むぞ氷竜、炎竜」
「よっしゃあ、任せて下さい隊長」
「了解です、」
「よし、それではこれから作戦を開始する。ステルスガオー!」

 ガイガーは腰からロケット噴射で空に躍り上がると、背後より接近したステルスガオーが合体し、ガイガーはラミエル目がけて空を駆けた。
 ガイガーがラミエルの周囲を旋回し始めると、ラミエルの周辺部が光を帯び始めた。

『ガイ、気を付けて、目標周辺部でエネルギーが収束し始めてるわ』
「わかったミコト、バックアップよろしくな」
『任せててガイ!』
「おおっと!」

 低出力で発射された過粒子砲がガイガーを掠めた。
 幸い、ガイガーに与えたダメージは少なく、ヒラリヒラリと旋回を続けた。
 そうして使徒の注意を引き、使徒が完全に射程内に入った時、地上にいた氷竜・炎竜がすかさず攻撃を加えた。

「フリージングライフル!」
「メルティングライフル!」

 彼らはビークル形態の時にクレーンであったライフルを使徒に向けて打ちまくった。
 だが、その猛攻も使徒の張ったATフィールドに虚しく阻まれてしまった。

「なんてこった!」
「僕らのライフルが効かないとは!」

 計算外の出来事に氷竜と炎竜は茫然として攻撃の手を止めてしまった。
 そこを狙ったかの様に使徒は過粒子砲を発射した。

「「 うわぁぁぁぁぁ 」」

 辛うじて直撃は避けられた物の、地上には巨大なクレーターが開き二人とも50メートル以上弾き飛ばされてしまった。

「氷竜! 炎竜! 」

 ガイガーが地上に転倒したままの氷竜炎竜の方を心配のため見てしまった。

『ガイー! 避けてーっ!』
「しまった! 」

 ガイが氷竜達に気を取られた瞬間、使徒の体の周辺部にエネルギーが収束していた。
 荷電粒子砲発射の兆候である。
 だが、西の方角から光線兵器が使徒に照射され、使徒はそちらの方へ気を取られたようだ。攻撃はキャンセルされた。
 ゴゥッ!とソニックブームを巻き起こしながら3枚の主翼を三方に広げたような特異な形状の巨大戦闘機が一瞬で東の空へスパンして行く。

「なんだ、今のは?」

 ガイが呟くと通信回線に無線が入った。

『こちら、TDF、ウルトラ警備隊のウルトラホーク3号です。援護しますので攻撃を続行して下さい』
「TDF、地球防衛軍?」
『はい、そうです。私はウルトラ警備隊のアンヌ隊員です。30秒後に我々の新兵器が攻撃を開始しますので、それまで目標の位置に変動がないように調整して下さい』
「了解した! こちらこそよろしく」
『了解』

 ピッ!と断絶音を立て、通信が途切れた。
 ガイガーの機械の眼を持ってしても判別できなくなるほど遠くまで行ってからウルトラホーク3号はUターンし、今度は北の方角からマッハ3の高速で機動行動をとりつつ突進してきた。
 使徒も今度はウルトラホークを狙って過粒子砲を発射したが、ウルトラホーク3号を操縦するフルハシ隊員は使徒の殺気を感じてあっさりとそれを回避していた。
 フルハシは使徒に向かって吠えた。

「甘いんだよ! このアストロゲーター共め!」

 流石は地球防衛軍の精鋭中の精鋭、ウルトラ警備隊の隊員だけのことはある。既に超人の域に達する技量を持っているのだ。
 フルハシは必中の構えでメーザー砲を使徒に撃ち込んだ!
 大気を引き裂いてウルトラホーク3号から放たれたメーザー光線は突き進み、一瞬で使徒に命中したのだが、必殺のメーザー砲もATフィールドの前に敢えなく弾き返されてしまった。

「くそぅっ! 防備は万全ってか!」
『フルハシ、こちらキリシマだ。これより質量弾を撃ち込むので周辺より友軍の撤退を勧告してくれ』
「こちらフルハシ了解。アンヌ、頼む」
「了解。こちらウルトラ警備隊のアンヌです。GGGの機動兵器パイロット各機へ、…」

 アンヌはGGG通話帯へ一方的に無線を放った。

「これより、攻撃を開始しますので敵性体より500メートル以上離れないと攻撃に巻き込まれる可能性があります」
「こちらGGG機動部隊隊長獅子王ガイだ、ただいまより避難する。よろしく!」
「了解。(カチッ!)キャップ、友軍に対する避難勧告終了。敵性体に予定外の移動はありません。照準誤差2%以内です」
『分かった、これより攻撃を開始する!』

 キリシマの搭乗するウルトラホーク1号はGアイランド目がけ全推力を用いて加速を開始していた。
 浦賀水道沖から加速を始めたウルトラホーク1号は重力も利用して加速を開始し、横浜沖上空でミサイルを切り離した時点での速度はマッハ5、ミサイルは更に加速し、最終的にはマッハ10以上まで加速していた。
 もちろんとんでも無い衝撃波が発生したため、周辺住民には多大なる被害が発生した。
 ガイガーは地上からその様子を窺っていた。
 東の方向から大気との摩擦により光に包まれた巨大なミサイルがレーダーにより確認されたのだが、秒速4000メートル以上の速度に達していたミサイルは使徒のATフィールドに接触した。
 その瞬間、ミサイル前部の誘導装置と金属氷の冷却装置である液体ヘリウムの容器が一瞬でひしゃげ、加熱された液体ヘリウムは爆発的に膨張した。
 本体中央に設置されていた、8万トンの超純水を極超冷却超高圧縮した直径50センチメートル全長500センチメートルの鉛より遙かに重く硬い金属氷で造られた質量弾頭は、何者にも耐えてきたATフィールドをあっさりと貫き通し使徒の側面に穴を開け突き抜けた。
 使徒体内で僅かに方向を上向きに変えた質量弾は関東上空を北上、そのまま地球の重力圏を脱出し、静止衛星軌道上の相剋界の壁に激突し消滅した。
 使徒はその質量の5分の1を粉々にされ、クルクルと回転しながらGアイランドに墜落した。

「よっしゃあ! ようやく俺達の出番だぜ! 行くぜ氷竜!」
「わかってる炎竜!」
『シンメトリカル・ドッキング!』

 氷竜、炎竜の双子の超AIビークルロボは、その最終形態へと変形を開始した!
 GGGメインオーダールームの卯都木 命のコンソールでは二人のシンパレート値が急速に上昇していることが確認できた。

「長官! 氷竜、炎竜のシンパレート値が急激に上昇を開始しました! 30,40,50,凄い! 90%を突破しました!」
「博士これは!」
「うむ、これぞ奇跡の超合体ロボ、超龍神の誕生じゃ!」

『超ゥゥゥゥゥーっ!龍ゥゥゥゥゥーっ!神ンンンンー!!!!!』


 氷竜、炎竜、2体のビークルロボが合体した超龍神はその巨体を揺るがし、地上に倒れた使徒に殴りかかった。
 だが、その拳が使徒に触れる直前オレンヂ色の壁が形成され、意外と情けない音を立ててその拳は弾き返された。

「くそぉ、コイツまだバリアーを張ってやがるぜ!!」

 超龍神は次々に拳を繰り出すが、ATフィールドはビクともしなかった。

「ちくしょう! どうすれば」
「ここは私にお任せを!」
「ボルフォッグ!」
「フッ、行きますよ! メルティングサイレン!!」

 ボルフォッグは空中に飛び上がると体内に内蔵されているスピーカーからパトカーのサイレンにも似た特殊な音波を発生させた。
 ボルフォッグは特殊音波によってバリア構造を分解破壊するメルティングサイレンを装備している。
 彼らGGGがEI−01戦でのデーターを元に開発したそれはゾンダーに対しては充分な抗力を発揮する性能を持っていた、しかし・・・!。
 彼は全力でメルティングサイレンを掻き鳴らしたが、ATフィールドの特性は崩せず、一向にバリアが破れる様子はない。

「クッ、ダメですか、こうなったらアレしかありません。超龍神!」
「そうか! 本部!」

「長官、超龍神がイレーザーヘッドの使用許可を求めています」
「よし! 至急イレーザーヘッドを超龍神へ転送せよ!」
「了解しました。3段飛行甲板空母、イレーザーヘッド、射出!」

 使徒にトドメを刺そうと悪戦苦闘するGGGのメンバー。

 そんな激しい戦闘の最中、彼らを見守るひとりの少女がいた。
 カモメ第1中学校の屋上で彼女は手に持ったPHS(改造済み)で相克界の外にたたずむ恒点観測員340号と交信していた。

「私が行く必要はないんじゃない?」
<いや、彼らの力では、あの使徒の力を打ち破ることは出来ない。まだ、経験が必要だ。今は私たちの力がなければ彼らに勝ち目はない>
「ふぅ〜ん。それじゃあ仕方ないか。私たちの勇者に負けて貰っちゃ困るもんね」
<それでは頼むぞ、初野 あやめ!>
「いいわよ! 変身!」
<デュワ!>

 あやめがPHSを掲げると彼女の周囲を光が取り巻いた。
 一瞬の後に彼女の姿は消失していた。

 3段飛行甲板空母からミラーコーティングされ飛んできたイレイザーヘッドを超龍神は重々しく受け取った。

「よぅし、ボルフォッグ、イレイザーヘッドとメルティングサイレンの同時攻撃で行くぞ」
「あのバリアーの構造が解明されていない以上、非効率的ですが仕方がないですね。やりましょう、超龍神」
「ガイ隊長! バリアーを破ったら頼みますぜ」

 ガイガーにフュージョンしているガイは答えた。

「ああ、お前達の勇気はこのオレが引き継ぐ! 安心しろ。だが、早くしなければ・・、この使徒は再生能力を持っているという話だからな。いつまた復活して過粒子砲を打ち出すかも知れない。急げよ」
「「 了解 」 しました。」
「よぅし、オレも行くぜ! ミコト!」



「長官! ガイよりファイナルフュージョンの要請が来ています」
「ようし! 承認!」
「了解! ファイナルフュージョン、プログラム・ドラーイブ!!!」

 ファイナルフュージョン・プログラムVer.4.86がガイガー及び各ガオーマシンに伝達され史上最強のメカノイド・ガオガイガーへと合体を完了した!

「ガオ・ガイ・ガー!!」


 ガオガイガーは史上最強の勇者王である。
 地上の平和を守るために今日も戦え! ガオガイガー!



「ウォオオオオオーッ! イレイザーヘッド! 射出準備良し!!!」

 超龍神はイレイザーヘッドの発する超エネルギーに対するために、腰溜めに構えたそれを全力で支え、ようやく照準を合わせた。

「ゥウオォォォオオオ!! こっちはいいぜボルフォッグ!」
「こちらの準備も万端です! 行きます! メルティングサイレン!」
「イレイザァァアアーヘッドォォ!! 発射ぁあああ!!」

 二つのエネルギー除去作用を持つエネルギー兵器を喰らい、さしものATフィールドもしばらくの間、その効力を失った。
 後日これを参考にATフィールド用のイレイザーヘッドの開発が行われ始めたのは言うまでもない。

「行くぞ! ヘル・アンド・ヘブン!!」

 ガオガイガーは必殺のヘル・アンド・ヘブンの攻撃態勢を取るため左右の手を組むと前へ突きだした。

「ゲムギルガンゴーグフォー! ハァァアアアアアー!!」

 鮮烈な位に緑色に握りしめた光る両拳を敵に突きつけるように突進したガオガイガー。
 二人の勇者によって弱められたATフィールド、その間隙を突くように拳を先に突っ込んで行くが未だそのバリアーは健在だった。

「何だ!!」

 拳の緑のフィールドがオレンジ色した八角形のフィールドに接触するとその中間に斥力が発生し、ガオガイガーを弾き飛ばそうとした。

「クソッ!! ここで負けるわけには行かないんだ! ディエリャー!」

 ガイは更に力を込めてATフィールドに突っ込んで行くが、しかし、ガオガイガーの必殺技ヘル・アンド・ヘブンはその体に必要以上の負荷を掛けている。
 その多大なる負荷がガオガイガーの限界を超えるときが来たのだ!
 ゴキッ、ガイの耳朶に右腕のフレームが断裂する音が響いた。

「しまった!」

 右腕のエネルギー伝達システムであるGリキッドが体の外に溢れ、暴走したエネルギーは右腕を吹き飛ばしてしまった。
 ガオガイガーは爆発の閃光に包まれ、姿が掻き消された。

「隊長ォーッ!!」
「ガイ隊長!!」

 それを目撃していた二人の勇者、それにメインオーダールームの面々は絶望的な声を上げた。

『ガイィィーッ!!!』
『ガイ!!!』
『アアッ!』
『勇者よ!』

 やがて煙は晴れた。

 そこには一瞬の判断で右腕を構成するライナーガオーとステルスガオーのエンジンポッド部を切り離し、守りの左手のプロテクトシェードによって九死に一生を得ていたガオガイガーの姿があった。
 生きているガオガイガーの姿にGGGのメンバーは安堵の溜め息を吐く。
 しかし、それ以上ガオガイガーの動きは見られなかった。

「卯都木くんっ! ガイの状態をっ!」
「はいっ! マシンハートは正常に稼動しています。しかし、サイボーグ体の各所に異常発生。生体部分には異常は見られませんが、現在意識を失った状態です。…ガイ…。」

 ミコトはホッとした様子でガイの情報を監視していたが、涙がこぼれていた。

「しかし、厄介なことになった。超龍神、ボルフォッグによってよわめられたバリアーをガオガイガーのヘルアンドへブンでさえも破れないとなると。」
「博士、ディバイディングドライバーでもあのバリアーは破れなかったのですか?」
「確かにディバイディングドライバーならばあのバリアーに対抗できたかもしれんが、あのバリアーは強力すぎる。今のガオガイガーのエネルギーでは……、ウルテクエンジンさえ完成していれば何とかなったかも知れんが」
「それでは、今の我々に打つ手はない…と、」
「うむ、今はあの敵も動けぬようだし、出来るだけ早くガオガイガーの修理と再戦に備えるしかあるまいて」
「そうですか…。超龍神、ボルフォッグ! ガオガイガーの回収と援護を!」
『分かりました』
『了解』

 超龍神、ボルフォッグは長官の命令に従いガオガイガーに近付いたが、その時。

「長官! 敵内部で再度エネルギーが収束されて行きます!!」
「何! あの状態で過粒子砲が使えるというのか!」
「過粒子砲発射まであと推定10秒しかありません!」

 既に超龍神、ボルフォッグともガオガイガーに近付いているため、避けている余裕はなかった。
 彼らはせめてもとガオガイガーの前に立ちふさがった。

「ミラーコーティング!」

 ボルフォッグの体はほぼ全ての電磁波を弾き返すミラーコーティングによって包まれた。

「ミラーシールド!」

 超龍神は炎竜が装備していたミラーコーティングされた盾を眼前に構えた。
 彼らは死を覚悟しながら過粒子砲が発射される瞬間を待った。
 だが、今まさにエネルギーのテンションがMAXに達した瞬間、赤い流星が地響きを立てて彼らの前に躍り立った。

<ディヤァアアアーッ!!!>

 白銀の鎧に身を包んだ赤い巨体のウルトラセブンは、攻撃のために一瞬ATフィールドが解かれるこの瞬間を待っていたのだ。
 セブンは自分の頭上からアイスラッガーを取り外すと使徒目がけて投げつける。
 アイスラッガーは目にも止まらぬ猛スピードで使徒の体をバラバラに切り刻み、セブンの手元に戻ってきた。
 静寂が戦場を包み込む。
 次の瞬間、青い水晶の様な使徒の身体は細かく角切りにされ、崩壊した。
 材質の分からない青いそれの中にただひとつだけ赤い球体のパーツが見える。

<ジュワッチ!>

 セブンは使徒の残骸に歩み寄ると埋もれていた赤黒い光球を掴み、かけ声と共に大空へと姿を消した。

「あれは一体、何だったのでしょう」

 ボルフォッグは身も蓋もない展開に呆然とし、セブンの消えた空を眺め嘆息した。

「博士…。アレは一体…」
「う〜む。一見した所ではエヴァンゲリオンと同系統の人型兵器の様だが」

 それまでコンソールのキーボードを叩き続けていた猿頭寺隊員が報告を入れた。

「博士、多次元諜報潜水艦からの観測結果では人類に酷似した情報体を持ち、粒子とも波動ともつかない性質を持つ物によって構成されているらしく、物質と言うよりもプラズマに近い存在なのではないかと・・・良く分からない存在という意味では確かにエヴァンゲリオンとよく似ていますなぁ」
「なんと! これは良く研究せねばならないな。これはEI−02と考えるべきなのだろうか? うーむ、異星の知的生命体の存在を感じるのだが・・・なんとも判断材料が足りんわい」
「うむ、その件は後に検討するとして。牛山君、ガオガイガー及び超龍神、ボルフォッグの回収は進んでいるのかね」
「はい、ガオガイガーは既に水陸両用装甲車内に格納済み、既にフュージョンアウトに入っています。超龍神はシンメトリカルアウトし、ビークル形態で待機中です。ボルフォッグは多次元諜報潜水艦へ向かっています。」
「そうか、卯都木くん、ガイの様子はどうだね?」
「サイボーグ体の応急処置は終了しました。生体部分には異常は見あたりません。脳波正常、ただし未だに意識の復調はありません」
「分かった。これで第1次使徒迎撃戦を終了する。研究班は使徒の残骸の調査を、整備班は機動部隊各機体の整備の続行を、火麻参謀」
「なんだい孝ちゃん」
「孝ちゃんはやめろって、スワンくんたちが心配だ。君にはスワンくんたちの保護を頼む」
「あいよ! オレに任せとけって」

 肉体行動派の火麻参謀はそう言うとメインオーダールームを飛び出していった。

「場所はわかっているのか? 相変わらずだな火麻くん」
「長官!」
「なにかね卯都木くん」
「先ほどの質量弾による攻撃を行ったTDFより連絡が入っています」
「回線を回してくれ」
「了解」

 ミコトがコンソールを操作すると、大河長官のコンソールの受話器に灯が点った。

「はい、こちらGGG長官の大河です。そちらは?」
『初めまして、私は地球防衛軍ウルトラ警備隊のアンヌ隊員です。お伝えしたい事がありますので連絡いたしました』
「それはどうも、先ほどは我らの勇者のピンチを救っていただき感謝します」
『いえ、こちらこそ。それに我々の使命は地球を侵略者の手から守ることです。それはそちらも同様の筈では?』
「まったく、その通りです。それでご用件とは?」
『はい、実は昨日われわれの基地にGGG隊員であるスワン・ホワイト殿が訪れまして、彼女の連れていた少女ひとりを我々の基地にて現在治療しています』
「ええっ、怪我をしたのですか?」
『いえ、何らかの原因により極度の緊張状態になり、ヒステリーを起こしたようです。現在の状態は落ち着いていますので安心下さい』
「そうですか、それは良かった。かれらは今回の時空混乱現象の被害者です。我々が保護しなければ、彼らは天涯孤独になってしまいます。」

 大河長官はホッと溜め息を付いた。

「手遅れにならなくて幸いでした。」
『ええ、実はかなり酷い恐慌状態になりかけていましたので、下手をするとトラウマが残ってしまう可能性もあったのですか、無事で何よりですわ』
「それで、現在治療中と。いつ頃、迎えに行けるでしょうか」
『現在クスリで眠っていますので、今晩中には。明日、こちらからヘリを出します。明朝0900にこちらに到着予定です。よろしいですか?』
「無論、結構です。よろしくお願いします」
『それでは失礼します』 プチッ!

 大河長官は受話器を置いた。

「そうか、アスカ君はウルトラ警備隊で治療を受けていたか、あっ! 火麻くんを早く呼び出さなければ。卯都木くん」
「はい、長官」
「至急火麻くんを呼びだしてくれ賜え。先ほど出した命令は中止だ。」
「了解しました。(ピンポンパンポ〜ン)火麻参謀、火麻参謀、至急メインオーダールームへ出頭して下さい。繰り返します。火麻参謀、火麻参謀、至急メインオーダールームへ出頭して下さい。以上」
「連絡は取れそうかね?」
「はい、シグナルは施設内、格納庫ですのでまず問題は無いと思われます」
「それは良かった。それから卯都木クン、厚生担当の榎本くんに連絡を取ってくれたまえ。エヴァンゲリオンパイロットたちの居住施設を世話して貰わなければならないからね」
「はい、了解しました。そうですね、かれらの精神的負担も相当な物の筈です。私たちが支えてあげなければいけませんよね」
「うむ。それが大人の責任と云うものだろう」
 続く。to be contuned.


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