作者:EINGRAD.S.F

スーパーSF大戦 【外典】


アルフォンスの気持ち



 新世紀2年6月某日。
 ここ、特車2課第2ハンガー内には第二小隊の全装備と第三小隊の装備の半分と言う膨大な量が置かれていた。
 そもそも一個小隊だけでも、レイバー、レイバーキャリアー、指揮車各4台もあるのだから、幾ら元倉庫を改装した広い空間とは言え6人の巨人達の住処としては些か手狭であると言える。
 現時刻は〇七一五、夜半に起きたレイバー暴走事件は当番任務に就いていた第一小隊の0式AVピースメイカー2台が出動、酔っぱらい運転をしていた暴走レイバー四菱製タイラントの運転者を確保して決着が付いたそうだ。
 もっともその為に整備班の班員達は先程まで向こう第1ハンガーで夜を徹しての作業を続けていたらしい。
 日月火水木金金で休日出勤何のその、残業時間それ見たか、という労働基準法って何?という激務を続けてらっしゃる整備班の方々も流石に今は仮眠中の方達が多く、ここ第2ハンガーの人影はまばらである。
 ここ第二ハンガーには特車二課第二小隊のAV−98イングラム1号機2号機3号機とAV−0 プロトタイプと最近新設された第三小隊のAV98Sが2機の計6台、同じく第1ハンガーには第一小隊のAV−00 ピースメイカー4台と第三小隊のAV−98S 2台があるのですから整備班の方々の労力も並大抵の事では有りません。
 まず、施設が元工場を買い取った物であるので広いのですが、三つの小隊に12台のパトロールレイバー、この規模の台数にしてはかなり手狭です。
 また、運用施設最優先で予算を使って来た影響で職員の福利厚生施設がかなり貧弱で、単純に人員の増化、とも行かないのが悩みの種です。
 それに、あの方達も時空融合後帰る所を無くした方々が多く、その反動からかより仕事に打ち込む事が多くて・・・皆さんの健康状態が少し心配ですね。
 もっともそのお陰でそれ以来レイバー犯罪以外にも駆り出される様になった特車2課の整備が完璧に行われたのですが。 感謝。
 彼らの不休の働きはここから眺めていると良く分かりますから。
 あ、私の名はAV−98イングラム 特車2課配備型1号機です。
 でも出来れば私の搭乗者が付けてくれた愛称のアルフォンスって呼んで下さいね、アルちゃんはちょっとって思いますけど。
 実はここだけの話なのですが、私の自意識が確立したのは時空融合後の事なんです。
 それまではな〜んの感情も持たない単なる機械だったのですが、ある事件の時に霊力って言うんですか? それの攻撃を受けてから劇的な変化が私に与えられました。
 あの時、私の体に張り巡らされたセンサーや制御機器用の電気回路や電子回路に激しい霊的なインパクトが与えられ、起動しているのにそれらの反応が無くなってしまったのです。
 焦りはしませんでした。だってその頃には自意識はありませんでしたし、当然感情なんて物もありませんでしたから。
 これが普通の機械ならば制御が回復した時点で元の状態に戻ったのでしょうが、私達パトレイバーの場合はちょっと事情が違ったのです・・・。
 風の噂に聞いた所、何やら人型っていうのには魂が宿りやすい傾向があるそうなんです。
 ですから四菱のブルドックや同じ篠原のボクサーの様な完全な人型でないレイバーでは私達の様に霊的なインパクトを受けても今の私達の様な事にはならないと思います。
 相手に対する心理的な形状までも考慮に入れて設計されたカ・ン・ペ・キ・なプロポーションを持つ私達だからこそ可能になった奇跡とでも言えるでしょう。 (自慢気)
 とは言え、自分の意志で自由に動ける訳ではないんですね。
 今のところ以前よりも多少霊的なインパクトに強くなったと言う事と、不意に短時間だけ機体が動いてしまう事位で。
 ですから操縦者の方達の運転が乱暴だとちょっと怖いです。
 特に2号機さんなんか、太田巡査が暴走するたびに泣きながら悲鳴を上げてました。
 もっとも最近は少し逆ギレしちゃったみたいで、犯罪レイバーを相手にしているとフェイスガードの所に青筋立てて雄叫び挙げていますけど。
 この前なんか現場に来ていたちょっと霊感の高いマスコミの方に青筋が見つけられちゃいまして「こんなふざけたイルミネーションなんか付けて特車2課第2小隊は不謹慎だ!」なんて叩かれちゃった事がありました。
 困ったもんだ。
 ま、そんな訳で元々私達の個性にはほとんど差はなかったのですが・・・なんだかどんどん搭乗員の方達の性格に影響されていくのが分かる今日この頃です。
 ですが、私達にこんな意識が有るなんて事、まだ誰も気付いてませんけどね。
 だってばれちゃったら大変な事になりますよぅ?
 それこそ勇者刑事デッガードになってしまいますから。
 この事は絶対秘密です、ねぇ〜2号機さんに3号機さんとゼロちゃん?
 ちなみにワタシの仲間は今のところあの事件で霊的衝撃を味わった第2小隊のパトレイバー四台だけです。
 ピーちゃんスーちゃんスーメイちゃんメイちゃん(ピースメイカー)達や廉価板達にはそう言った事は起きてません。寂しいなぁ。

 さて、今日から待機シフトです。
 ですから朝から私の搭乗者の泉野明巡査がそろそろやってくる筈なのですが・・・遅いですね。
 道が渋滞でもしているのでしょうか。
 例の巴里自治区がお台場に着いてから、ここ埋め立て地も少しずつ道路が混雑して来だしたようですし。
 あ、原付の音がしますからそろそろですね。
 整備ハンガーの入り口からボサボサ寝癖の色気のない顔をしたまま彼女が飛び込んできました。

「整備班の皆さんおはようございまーす!」
「よぉーお泉ちゃん。今日も元気だねぇ。朝っぱらから」
「えへへー。これだけがアタシの取り柄ですから」

 イエイエそんな事はないですよ。私の機体の使い方など大した物です。
 いつも元気な彼女を見ていると私も挨拶位してみたくなります。

「あ、オハヨー、アルフォンス! 今日も一日頑張ろうね」

 ハイ。よろしくお願いしますね。

「え!? ・・・えぇっと」

 おや、何故絶句するのでしょうか。

「あ、あはははははっ! イヤだなぁシゲさん。アルフォンスにイタズラしないで下さいよぅ」
「え、あははバレちゃった? あんまりイズミッちゃんが親しそうにしてたからちょっとねぇアハハハハ・・・(あんな細工したっけ? 頸部アクチュエーターの故障かなぁ? あれじゃまるで挨拶して頭を下げたみたいだよ)」

 泉さんがシゲさんに笑いながら言うと、シゲさんもそれに合わせる様に答えましたが…おや? 何故か泉さんの顔が引きつっていますね。

「ほぉ・・・シゲ。大事な機体にあんな仕掛けをするなんて大した余裕じゃねえか? ええ?」

 いつの間にかシゲさんの背後に忍び寄っていた榊さんが鬼の形相で立っていました。
 なるほど、確かにこれでは泉さんが引きつるのも仕方ないでしょうね。…シゲさんには悪い事をしてしまいました。

「は、班長。い、いや。これはですねぇ・・・」
「言い訳なんかするんじゃねえ! 今度こんな事しやがったら東京湾にたたっこんで魚のエサにするからそう思えっっ!!」
「ひゃい! すみませんんん」

 あらら。こりゃ失敬。




 と、言うワケで後書きです。
 二〇〇三年、平成一五年初回更新の今回は外典にチャレンジして見ました。
 と言っても以前掲示板に書いた物の再録ですが。
 外典は本編の設定に遵守しないシリーズです、が、本編の展開次第ではあっちに移行するかも。
 




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