JASDFの事情



 自衛隊の所属航空機にまつわる混乱。
 日本各地に出現した自衛隊に所属する航空機。その大概はアメリカ系の戦闘機F−86F,F−86D,F−104J,F−4EJ,F−15J,支援戦闘機F−1,F−2,F−4EJ改,等であるが、中にはフランスダッソー社のラファールやMig−29Jファルクラム改(CCV&ベクトルノズルの採用及び電子兵装と対電子塗装等の日本改装)等もあった。
 彼の世界に於いて自衛隊がMig−29ファルクラムを採用した経緯には、北アメリカ大陸西岸に於いて大規模な放射能汚染が発生したため、アメリカ並びにカナダ、メキシコの各国が西部海岸を放棄したためである。
 その為、日米安保の放棄とその後に起こった日中間の関係悪化とロシア経済が悪化し、Mig−29の不採用により工場が空いていたミヤコン社から短期間に大量に発注出来る点が注目された為である。


 その他にも様々な情報が中央に寄せられたのだが、中には時代の壁によって却って混乱を引き起こしてしまうような事態も発生していたのだ。
 そのうちのひとつを挙げてみよう。
 収容機体情報の混乱は昭和四〇年世界の航空自衛隊基地からの報告による物だった。
 当時の自衛隊では使用航空機に大戦時のように愛称を広め、国民に対する自衛隊の親睦感を高めようと画策していたのだが、結局それはJR東日本のE電の様に全然普及しなかったのだ。
 その基地の司令官は張り切ってその愛称で中央に報告した。
 しかし、自衛隊内部に於いては30年以上経った書類は廃棄することになっている。
 防衛庁ではその報告を受けて混乱した。それはそうだろう、結局誰もその愛称を付けた事すら忘れ去られていたのだから。
 府中市にある自衛隊総司令部には日本各国から日本の国防に就いていた各基地の司令官達が報告に訪れていた。
 その内のひとり、愛知方面の国防を担っていた酒島司令官がいた。
「愛知航空基地には戦闘機は栄光20機、旭光20機、月光10機、高等練習機にまつかぜ、はつかぜ5機、初鷹3機、若鷹10機、輸送機として天馬5機、捜索救難ヘリとしてしらさぎ2機を保有しております」
「ハイ? ええと、こちら航空自衛隊(JASDF)の記録にはその様な機体の登録は成されていません。機体の報告をもう一度お願いします」
「そのような筈はない。航空自衛隊は昭和40年に民間に対する感情緩和策として自衛隊機に対する愛称を設定し、コレを広めるように通知されている。この名称で間違いないはずだ」
「・・・少々お待ちください。此より広報課の資料を確認します」
「了解した」
 基地の担当官が退出すると酒島司令は部屋の中を物珍しそうに見回した。
 西暦一九六五年から西暦二〇一五年相当の時代差は五〇年。
 幾ら自衛隊の装備更新が渋チンで有名であってもそこには補いきれないほどの時代感覚に差が出ていたのだ。
 一例を挙げると、流石にインターネットに繋いではいないとは言え部屋の中に置いてあるコンピューターがそれであろう。
 酒島司令の時代にはすでにシステムエンジニアという職業が成立していたのだが、それはメインフレームと端末で構成される旧世代のコンピューターであり、この部屋に置いてあるようなPC−APLWINの様に単体で彼の時代のスーパーコンピューターを凌駕する性能を持つPCなど影も形も無かった。
 もっとも、昭和一桁の悲しさか、その凄さを実感する所か理解すらしていないのであったが。
 担当官は戻ってくると渋い顔をしていた。
 彼はファイルにプリントアウトしてきた資料を携えてきていた。
「調査の結果なのですが・・・」
「ええ」
「自衛隊が資料の電子化を進め始めたのが西暦二〇〇五年の事なのですが、それ以前、紙によって情報を保存していた頃は容積が嵩むことから30年の期間で資料を廃棄していたらしく、現在西暦一九七五年以前の資料は残っていません。済みませんが識別番号の報告をお願いします」
「つまり、自衛隊機の愛称付与は失敗に終わったと」
「遺憾ながらそう言うことらしいです。今ではマニアしか知らないのでは?」
「そうですか。分かりました。愛知航空基地には戦闘機はロッキードF−104スターファイター 20機、ノースアメリカンF−86Fセイバー 20機、ノースアメリカンF−86D 10機、高等練習機にノースアメリカンT−6D、ビーチクラフトT−34A 5機、富士T−1B 3機、ロッキードT−33A 10機、輸送機としてカーチスC−46D 5機、捜索救難ヘリとしてバートルKV−107U 2機を保有しております。以上です」
「了解しました。F−104を使用していると言うことは基地で用いている航空燃料はレシプロ用のガソリンとジェット機用のジェット燃料の2系統を使用しているのですか」
「ええ、先日燃料関係の工事が済んだ所で今回の災難に巻き込まれた物ですから、まだ運用の面ではぎこちない所がありますが」
「滑走路の全長は」
「一応、F−104の使用を前提にしていますので」
「了解です。では受け取った資料は電子化して保存してありますので、そちらのモニターで確認して貰えないでしょうか」
 一応説明しておくと2015年頃では電脳化が進んでおり、コンピューター操作が出来るのは当然のことであった。
 為に酒島司令官がコンピューター操作出来る事を前提としてしまったのだが勿論彼に操作できるはずもない。
 彼は椅子に座ったまま途方に暮れてしまった。
 そうなると流石に気が付いたのか担当官は彼を机に座らせると天井のプロジェクターを用いてコンピューター画面を映し出し説明を始めた。
 そこに映し出された映像はコンピューターには文字しか映し出せないと言う彼の常識をうち破るグラフィカルな操作画面が出ており、彼が持ってきた紙の資料をスキャナーで読みとり識別ソフトで文字化した画面が出ていた。
 担当官がその機体名称をクリックするとその機体のスペックと共に3D化されたモデル映像が表示されてクルクルと回っていた。
 説明を受けた彼はカルチャーショックを受けていたが、間違いないと答えるとそのまま指定された宿舎へ行った。
 翌日、彼は埼玉県の入間基地から連絡機として使用されていた近代化改修を受けた超音速高等訓練機T−2改に搭乗し基地へ帰っていった。
 この様に司令官を呼びつけて近代化した自衛隊の様子を見せつけているのには当然の如く訳がある。
 彼らに対する意識革命は勿論だが、時代や世界によって異なる中央政府に対する忠誠をより強固とするための物だ。
 こうして各地の自衛隊、並びに防衛軍関係者は順次中央に呼び寄せられて行った。


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