作者:独逸人じゃーまんさん

 さて、さざなみ寮まで那美を送った二人。
 その2人は市街地を歩きながら戻っていたのだが…

「…ねえ、恭ちゃん。微妙におかしくない?」
「だな」

 街並みが少し違う。少なくとも記憶にある店名とは違う店が商店街にその姿を見せたりしている。

「…那美さんのところ…なんかもめてたね」

 美由希の言葉に頷く恭也。
 何かが起きている。
 でも、その何かがわからない。

「とにかく、家に帰ってみよう。」
「…家がない、とかそういうのはないよね…?」

 美由希が不安げに声を洩らした時に。

「…美由希?」

 背後から声。

「…美紗斗さん」
「母さん!」

 背後には黒を基調とした姿の女性が立っていた。御神美紗斗。美由希の(本当の)母親である。

「いつ…いらしたんですか?」
「今日の最終電車でここに来たんだ。朝になっても戻ってこないと桃子さんに泣きつかれて捜しにでたところだよ」
「うう、ごめんなさい」

 美紗斗は美由希のあたまにぽん、と手を乗せる。

「携帯が全く繋がらないからみんな心配してたぞ。」

 優しげな声で告げると「さあ、帰ろう」と促す。二人ともに頷いて美紗斗の後をついて歩いたのだった。


SSFW OutsideStory
融合とらいあんぐる


1st Campaign : 変わらない絆


2nd Chapter : 複雑奇怪な家族の肖像〜2人の母親〜



 高町家は見た目はとりあえず、2人の記憶にあるままだった。

「ただいまー」
「ただいま」
「あ、お師匠、お帰り〜」

 2人を出迎えたの小柄な女の子。イントネーションは関西人のそれ。

「お師匠、美由希ちゃん…よかった〜、うち、もう二度とあえへんかと思うてた。」
「レン、なんでそんなことを思う?」
「だって、ラジオでいってましたさかいに…」
「ラジオ?」

 レンは首をかしげる2人にこの世界で起きたという様々な事態の説明を受けた。と、その説明の途中で

「恭也〜、美由希〜お帰り〜〜〜〜〜〜ぅ!!!」

 1人の女性がぎゅうと2人を抱きしめる。高町桃子。この家の主人である。

「か、かーさん、苦しい」
「母…」
「もう、二度と合えないかと思ってずっと、心配してたのよ! 美紗斗さんもすごく心配してていてもたってもいられないのかして飛び出していったんだから!」

 …この言葉に2人は「はっ」と美紗斗のほうに顔を向ける。

「桃子さん…できればオフレコでいてほしかった…」

 恥ずかしげに顔をそむける美紗斗。

「すみません、美紗斗さん」
「ごめんなさい、母さん」
「…いい。無事、こうして会えたんだ。」
「うん」

 ここでレンが家族愛の真っ最中に声をかけるのにちょっと気後れしたのか、もじもじした感じで声をかける。

「お師匠様、美由希ちゃん、それでちょっと困ったことがあるんやけど…」
「困った事?」
「電気・ガス・水道といったのが全部通じてないんですー」

 そこで乾電池で動くラジオでなんとか情報を得たということらしい。
 ちなみに高町家。家族の性質上非常時の備えはしっかりしています。

「幸い、非常時の備えがあるさかいに水と食料についてはどうにかなるんですけど…トイレが…」
「ああ、トイレか…」

 恭也はしばし考え…

「母さん、確か家の二階の物置におまるがあったよな。最悪あれで乗り切るしかないかな?」
「んー、まあ、その道しかないでしょうね。でも、その後はどう処分するの?」
「…庭に埋めて肥料にするぐらいか…」

 いやー、というレン、それから奥から二声。

「そーゆーのは堪忍してー」

 と、レンが答えた時にチャイムがなる。

「…お客さんだ。だれだろ?」

 まだ、玄関にいた美由希が門扉を開けて来客の応対にはいる。

「かーさん、水道局の人が来たよー。」
「あ、はいはい」

 桃子が下履きを履いて美由希にかわって受け答えを行なう。
 その間にレンからラジオの内容を聞き取る恭也と美由希。

「…ふむ」
「そこでちょっと悩んでるんですけど…学校どないしましょう?」
「それは行ったほうがいいんじゃないか?」

 恭也は答える。

「そうだよね。じゃあ、私、お風呂…は沸いてもないし、水も出ないんだよね」
「はいー」
「仕方ない。着替えてくるね。」

 美由希はそう言って自室へ戻る。

「おししょは?」
「俺か?今日は昼からだ。…もっともこの状況で授業があるかどうかは不明なんだけどな…」
「そうですよね…」
「でも、レンにしろ、晶にしろ学校には友人がいるんだろ?その安否が聞けるかもしれないから行って見るといい」
「ですね。じゃあ、うちも着替えてきます」

 レンはそういって二階へと上がって行った。

「はあ、水道のほうはあともう少ししたら回復するって」
「あ、そうなんですか?」
「うん。とりあえず、トイレ問題は時間で解決ね」
「で、母…仕事のほうは?」
「あ、そうだ。状況が状況だし…冷蔵庫の中身の確認しないと」
「多分全滅」

 恭也の言葉に頷かざるを得ない桃子。

「そうなのよねー…うーん、恭也、ごめん!」
「わかった…でも、この家に誰もいなくなるか、なのはだけになるが…」

 ここで晶が顔をだす。

「おししょー、それなら俺が残りましょうか。俺の友人の安否はレンに任せればいいですし」
「うーん…」

 ここで美紗斗が手をあげる。

「私が居るんだ。家のことを気にする事はない。それに数回ここに脚を運んだ事があるんだ。家の事もわかる」
「…そうね。じゃあ、美紗斗さんすみませんけど」

 美紗斗の好意に甘えるかたちで家のことは決着がついた。

「ところで…聖祥までのバス、今日でてるんでしょうか?」
「ああ…それはわからないな」

 恭也はここで帰ってくるときの光景を思い浮かべる。
 とりあえず、バスに出会った覚えはない。

「いや、多分…バスは無い可能性が高い。」
「えーっ!?」

 小学生の女の子が声をあげる。なのは。この家の最年少だ。

「あたし、学校いけないの…?」
「まあ、事態が事態だ…怒られる事はないとおもうけど…」

 ここで着替えてきた桃子が現れる。

「恭也、ごめん。いくわよ」
「わかった。じゃあ、美紗斗さん…なのはのことをお願いします」
「わかったよ。じゃあ、なのはちゃん」
「…うん」

 恭也、桃子に続き、レン、晶、美由希の三人もでていく。

「「「いってきまーす」」」

 3人は駆け出して行った。

「いってらっしゃーい」

 なのはは手をふって見送った。

 その後、ガス、電気会社と立て続けにきたあと、最後に電話会社が来た。
 電話会社だけ別の会社だったが、とりあえず復旧を行なうことになった。

「あとでいろいろいわれそうですけど…電話が復旧しない事には連絡つきませんからね」
「そうだね…携帯電話のほうはどうなのかな?」
「さあ…それは私ではわかりませんね…。ただ、一部のアンテナは生きてますから携帯電話どうしなら繋がるかもしれませんよ」
「そうか…」
「それでは点検のほうは終わりましたので」
「お疲れ様。」
「そちらこそ。…ところで、そちらの女の子はお子さんですか?」
「あ、違う。姪になる」
「そうですか。…私の家族はどうもこっちにきていないみたいなんですよね…。それを思うと羨ましい。それでは幸運を」

 電話会社の社員らしき女性は一礼すると高町家を去って行った。
 その後姿をしばらく見守る美紗斗だった。

「あ、電気がついた。」

 なのはの声で美紗斗は振り返る。なのははTVをつけてチャンネルを替え始める。

「なのはちゃん。お姉さんと一緒にみようか」
「うん。」

 2人はまだ、上りきらない太陽の灯りのもとでテレビに流れる報道をみるのだった。


 ところ変わって翠屋。
 ちょうど2人がきたときに商店街のチェックにあたっていた電気会社の人間と出会い、点検に立ち会う。そのご、冷蔵庫・冷凍庫を開ける。

「ああああ…アイスクリーム関係全滅…」

 あけて最初の一声。

「母、冷蔵庫のほうは見た目は大丈夫そうだ。電気が直にとおることを考えれば、氷を移してこっちを守ったほうがいいと思う」
「そうね…冷蔵庫の作りおきを守るほうが大事ね」

 そういってまだ残っている氷などを移し変える。

「それで…店は?」
「そうね…今日は半舷開業にしましょう」
「半舷?」
「どのみち、新規に当面作れないんですからそれなら、売れるものだけ外にだして営業しましょう」
「承知した」

 ここでうーんと一言唸る桃子。

「なにか?」
「アルバイトの子達…何人これるのかしらね…」
「…ああ、そうか…」
「ごめん、恭也。今日は大学自主休講してっ!」
「…了解」

 恭也は頭を掻いて頷いたのだった。



 さざなみにくらべ短いけど、これで高町家は終了。
 …というか、全員居るんだもん。変わらずに。
 3はクロノやリンディたちの話、マジカルなのはの後の時間軸になってます。
 美紗斗さんが何度か来た、という話でこのあたりは解るでしょう。


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