作者:独逸人じゃーまんさん

 3人と一匹がたどり着いたところからさざなみ寮までは約20分ほどの道のりである。参道のように道がなくなっている…という可能性があったが、そういうことはなくすんなりと寮の前までたどり着いた。
 時計を見る。時間は朝の6時をちょっと過ぎた頃。

「じゃあ、俺たちはここで。」
「あ、恭也さん、美由希さんどうせなら送ってもらえるように頼みますけど…」
「いえ、御気遣いなく」

 恭也はそう答えると、振り返り…。
 なにかに気付いたらしく振り返る。

「電話、お借りできません…?」

 ここへたどり着く前に携帯電話を掛けてみたのだが繋がらなかったのである。

「はい」

 にっこりと那美は微笑むと慣れ親しんだ寮の扉を開けたのだった。



SSFW OutsideStory
融合とらいあんぐる


1st Campaign : 変わらない絆


1st Chapter : 複雑奇怪な家族の肖像〜過去と未来〜



 俺、槙原耕介の朝は早い。管理人として朝食の支度を始めとする早朝の準備のためだ。
 まずは服を着替え顔を洗い身だしなみを整える。
 そして玄関に向かい新聞を取りに行く。
 …の前に

「…ん?」

 この時間で外を出歩くのは一人しかいない。

「薫かな?」

 すると、玄関の戸の鍵をあける音。そのまま鍵は開き、扉が開かれる。

「ただいまー。すみません朝帰りになってしまって。」

 狐を抱いた見たことの無い女の子が現れる。というかなんというか巫女服だし。肩口が赤い。あれは…怪我?

「あ、槙原さん、おはようございます。すみません、夜に帰ってこれなくて」
「あ、え…?」

 女の子はかなり慣れ親しんだように俺に声をかけてくる。

「あと、申しわけないですけど…車だしてもらえないでしょうか?病院まで…」

 確かに彼女は怪我をしている。が、そんなことより、なにより。

「ああと、ちょっとまって」
「あ、はい。…連絡つかなかったことはどうもすみません。」
「ちょっとまって、黙って、お願い。」

 懇願するように声をかけて、相手の話がとまったのを見計らい、訊ねる。
 そう、根本的なことを。

「悪いんだけど…君…誰?」

 しばしの間。

「…え?」
「いや、俺…君のことしらないんだけど…」

 …まあ、巫女服、というところから考えると薫の関係者なのかもしれないけれど。

「ちょ、ちょっと槙原さん…ふざけてるんですか?」
「…いや、本気なんだけど…」
「そんな…。」

 目の前の少女はかなり落ち込む。

「…覚えてない、って…私、神咲那美ですけど、本当に覚えてないんですか?」

 と、玄関から視線を感じる。これまた見ない顔が2人こっちのやりとりを眺めている。
 …ちょっと待て。

「神咲…?もしかして薫の知り合い?」
「薫ちゃんの妹です。…あの、なにかありましたか…?槙原さん…?」

 心配そうに顔を覗いて来る。
 と、彼女の手にうちの寮の鍵が握られていることに気付く。
 つまり彼女は誰からか、うちの寮の鍵をもらっているという事になる。
 まあ、薫の妹というからには薫に聞くのが妥当だろう。
 と、俺が思い浮かんだところで階段から降りてくる人物――薫に合う。

「玄関先でどないしたんですか?」

 薫は降りてきて訊ねてくる。

「あ、薫の妹って言う那美って娘がきたんだけど…」
「那美?…どこに?」

 薫は玄関に目を運び…。
 …那美という少女はえ?という目つきになる。
 パジャマ姿の薫と那美と名乗る巫女服の少女はお互い「?」としている。
 このとき、

「くうん」

と、少女が抱いている狐が泣いた。

「…久遠…久遠?」
「くうん、くうん」

 狐が薫の言葉に反応する。

「えっと…薫ちゃん…?」
「那美…なのか?本当に、那美、なのか?」

 お互い絶句していた。
 俺はどうにも状況がつかめない。それは玄関の外でこちらのやり取りを眺めていた二人も同様らしい。2、3囁きあった後こちらの様子を再び見つめる。

「すまん、薫。俺にはなんかさっぱりなんだが。」
「うちも同じようなもんです」

 ここでさらに上から声がする。

「どったの、耕介ちゃん」
「…真雪さん」
「一応、こっちも締め切り近いからできれば静かにやってもらいたいんだけど…なんか聞き捨てなら無い話じゃない。(ボソ…ネタに使えるかも)」
「真雪さん、最後なんか言いませんでした?」
「気にしない気にしない。それに玄関で立って話すよりはリビングのほうがいいんでない?耕介も朝の準備とかあるでしょ?」
「むー、まあ確かに…。じゃあ…」

 少女…那美さんに声をかける。

「あ、はい…あと、すみません…お電話、あの人たちに御貸し願いませんか?」

 那美さんはそういって、外で待っている二人を指す。

「まあ、かまわないんじゃない。…彼らの電話内容も立ち聞きされてもかまわないのなら、ということで。」

 その提案に真雪さんはGoサインをだす。
 まあ、構わないか。

「市内かどうかだけ、聞いて来て」
「あ、市内の自宅に電話を掛けたいそうなので」
「ん、あの2人、携帯もってないの?」
「それが…」

 那美は自分の携帯を見せる。

「何度か電話を掛けてみたんですが繋がらなかったんです」

 真雪さんは奈美さんの話を聞いてすたすたと電話口に立って受話器を取り上げる。そして慣れた手つきでどこかの電話番号をまわす。

「ま、取り上げた段階でうんともすんとも言わなかったから当然か」

 そういって受話器を下ろした。

「あー、そこの2人。どうも電話局のほうで異常があったみたいだわ。ここで電話をかけることはできないよ」

 そのまま外の2人に届く声で結果を告げたのだった。
 2人は中に入らず、玄関前まで進み出て。

「すみませんでした。では、俺たちは自分の足で帰って見ます」
「那美さん…困った時は来てくれたらいいですからね」

 2人はどうも話の内容を立ち聞きしていたのか、そんな声をかけて去って行った。

「じゃ、那美、だっけ。ちょっと話し合おうじゃない」

 真雪さんは那美さんの肩をだくとそのままリビングへと入って行った。

「耕介。朝食の準備お願い」
「はいはい」
「薫、一応家族みたいだから、十六夜さん込みでこっちに。…十六夜さん、知ってるよね?」

 俺が朝食の準備を行う間に真雪さんは薫の関係者でないとわからない質問を幾つか行った。
 まず、年齢、日付(年代こみ)を聴く。その答えは今から5年後を答えていた。

「十六夜さんは何?」
「…霊刀、十六夜のことですよね?」
「じゃあ、外見や特徴を簡単に言ってみて?」
「金髪の綺麗な人で優しい人です。」
「簡単すぎるけど…一番重要なのが無い」
「…目が見えない、ことですか?」
「OK。じゃあ、今度は…ここのオーナーの名前は?」
「槙原愛さんです」
「じゃあ、彼女が養子として引き受けた人物の名前とおおきな特徴を挙げよ」
「リスティ・槙原さんで、先天性の優性障害を持つ。羽根は金の翼です。」
「…じゃ、最後。あたしの職業は?」
「漫画家」
「はい。ま、とりあえずここの寮生だったっていうのは間違いないんでない、耕介?」

 いきなり俺に声をかける真雪さん。

「まあ、そこまで答えられたのなら」
「あの、寮生だったんじゃなくて寮生なんですけど…」

 那美さんがそう付け加える。

「そのへんは気にしないで。じゃあ、薫、十六夜さんで彼女の怪我治してやって」
「はい。…十六夜。」

 薫が持ってきた霊剣から十六夜さんが現れる。

「あ、お久しぶりです。十六夜さん」
「御ひさしゅうございます。那美様」
 十六夜さんと那美さんは深深とおじぎをしあってから、十六夜さんは那美さんの肩口に手を当て、ヒーリングをかける。

「そういや薫から那美に質問は?」

 真雪さんが薫に声をかける。

「…那美、今…高校何年?」

 薫の問いかけに那美さんはすぐに答える。

「高校三年生ですけど」

 ぶ。
 あ、薫…吹いた。

「さ、三年生――っ!?」
「あ、あの…薫ちゃんどうしたの…?」
「那美、うち…も三年生…」

 しばしの間。

「ええええっ!?」

 那美さんは大きく驚いた。

「う、うそ…」
「うそやない」

 薫はそう答えて…ふと何かに気付いたらしく、一転して真剣な表情になる。

「那美。もし、那美が高校3年生…今から8年ぐらいあとの未来から来たと仮定すると…それは久遠も同じ?」
「ずっと私と一緒にいたから多分そうかと」
「じゃあ…久遠の封印が解けた、んやな?」
「うん。」

 ここで薫が真剣な表情から一転して穏やかな表情になる。

「そっか。久遠…」

 子狐の頭をそっと撫でる。
 なんかいい雰囲気だ。
 と、久遠の背後から一匹の猫が飛び掛る。

「あ、小虎。」
「にゃー」

 見慣れない小動物にじゃれつく小虎。

「くうん、くうん」

 久遠という小狐はじゃれつかれるのが嫌なのかととと、逃げる。そこにだだだと追いかける小虎。
 母猫の追いかけぶりをみて、小虎の子供たちも狐に襲い掛かる。…いや、見た目襲い掛かっているだけで実際はじゃれつきにいっているだけだ。

「あ、あ…」
「こら、小虎やめかね」

 薫が静止しようと腰を上げた瞬間。
 ポン。
 小気味いい音とともに子狐から煙のようなものが噴出したとおもったら、そのあとにはちっちゃな子供が現れる。美緒よりちょっとちっちゃいか?
 …とりあえず、頬をつねってみる。痛い。
 その子供は体の端々を子猫に捕まれてまま那美さんの側に駆け寄る。

「…へえ」

 真雪さんはつついとその子供に近寄る。そして、頭についている、明らかに、獣の耳らしきものを、ついと引っ張る。
 ついで、その子供のお尻から生えている尻尾に触れる。

「…ほうほうほほう」

 喜色満面の…どこか悪の幹部らしき…笑みを浮かべる真雪さん。

「これはなかなか…美緒の猫耳とはまた変わった感触で」
「あのぅ…一応、初めて見る感想がそれですか?」
「いやあ。すでに美緒っていう人外がいるわけだし、十六夜さんという霊剣も居る訳だし、あたしにも知佳っていう妹がいるわけだし。こんなんで驚いてもしかたないっしょ」

 そういって真雪さんは久遠の顔や腕に触れる。

「ふむ。人間部分は人間と全く同じ感触か。んー、身体のほうはどうかな?」
「「真雪さん!」」

 那美さんと薫のふたりからはたかれる真雪さん。

「おはようございます。」

 と、そこへ愛さんがやってきた。

「あ、愛さん髪長い」

 那美さんがそう呟いたのが聴こえた。

「あら、いい匂い。」

 …愛さん。

「えーと、とりあえずこの状況を見てそれが最初の一言ですか?」
「ん?」

 俺の問い掛けに部屋を見渡す愛さん。

「んー?」

 …愛、さん…?気付きませんか…?

「可愛いお客さんがいることぐらい?」
「ああ、気付いてはいるんですね…」
「…耕介さん…ちょっと酷い事言ってますよ」

 むー、と可愛らしく怒る愛さん。

「で、あの2人は?」
「薫の関係者ですね。妹さんらしいんですけど…」
「ああ、親御さんから聞いたことがあります。たしか那美さんでしたね。…あら、那美さんって確か美緒ちゃんより一つ年上のはずなんですけど…」

 愛さんは首をかしげる。

「さあて、久しぶりにテレビでも見ようかね」

 真雪さんは那美さんへの興味を失ったのかテレビのリモコンを捜し始める。

「あれ。リモコン、どこいった?」

 那美さんと薫は何故、こんなことになったのかを解明すべくお互い…特に那美さんのほうの話を訊ねる。

「…サーベルタイガー?」
「うん…神社にそのまま放置してるけど…」
「まずいな。それは…うちの知り合いの警察関係に声をかけておくけど…事情をすこし聞かれるのは避けられないと思う」
「そうかあ…高町さん達に迷惑かけちゃうなあ…」

 ここで真雪さんがリモコンを捜しながら声をかける。

「…とりあえず、虎はともかく…」

 くい、と顔だけでそこにいる何かに注意を向けるように促す。
 そこにいたのは…

「…トキ、ですか…?」

 薫の言葉はかなり自信なさげである。

「トキですねえ。」

 動物関係には一番詳しい(はず)の愛さんが同意する。

「…それでサーベルタイガーを見た、ねえ。なんか大規模な事件になってないかね。ところでリモコン何処だ?」

 トキはすぐに庭から飛び去っていった。
 Pi。
 誰かがリモコンをみつけたらしい。

「真雪…なにやってんの?」

 と、思えばリスティがおきてきたらしい。

「なんか騒がしいから降りてきてみたけど…」

 んー、とリスティは部屋を見渡す。
 ちりちり…。
 どうやらリスティは心を読んでいるらしい。説明不要な人物だなあ…。

「ふうん。」
「えっと、なにがふうん、なんでしょう。」

 那美さんがなにか警戒しながら尋ねる。

「いや。…結構いい男だなあ、とか思っただけ」
「リスティ。」

 愛さんがめっ、とリスティをしかるが全く怖くない。

「おい。そこ煩い。…というかTVに注目!」

 真雪さんが声を荒げながらテレビを見るように言った。
 報道特番と銘打たれたその番組では東京の様子や大阪と様々な場所が映し出されていく。
 そして、GGGが行なった報道というものが流れている。
 全員が沈黙してその番組に魅入る。
 何時起きてきたのかわからないけれど、気付けば、知佳やみなみちゃん、美緒の姿がある。
 報道が一段落…というより一通りの情報を得られたと思われるあたりで真雪さんがテレビを消す。

「真雪さん?」
「まあ、一時的にな。一応、あたしらの先のこともあるし」

 真雪さんの声に全員居住まいを正す。

「ところで、耕介。朝食は?」
「できてます。…一応ですけど」
「あら…トーストだけですか?」

 トーストにバター。流石にコレだけではと思い、果物を切ったものを用意している。

「…ガスと水道が止まってるんです。電気はとおってるみたいですけど。」

 俺の言葉に全員が唖然とする。

「…はあ…なんつうか、なあ…。」
「なんで電気は通ってるんでしょう?」

 愛さんが首をかしげる。

「ほら、リスティが暴走したあとで立て直した時に太陽発電の取り付けたでしょ?あれじゃない?」

 知佳が電気の元を告げる。
 すでに日が昇っている。

「…ちょっと待て。じゃあ、この果物、腐ってないよな…?」

 知佳の発言を受けて真雪さんが訊ねてくる。

「これでも一応食堂の息子なんで、食品の状態はみればわかります。大丈夫だからだしたんですよ。」

 俺ははっきりと答える。

「そっか。ならいいが。」

 真雪さんはそこで一度区切って再び発言する。

「水道が止まってるんだな?」
「はい。」

 俺の答えに真雪さんは頭を抱える。

「ヤバイな。冷蔵庫に飲み物関係は?」
「昨日、特売だったので買い込んだ分があります。全部で20リットルというところじゃないですか?」
「そこにあたしの部屋にある酒の分を足すか。一日2日はどうにかなるかもしれないけど、とにかく水源の確保が最重要かな。り〜すてぃ。」
「了解。どうにかして水源を捜してくるよ。」

 真雪さんはそういったあと、

「こうなると財源が問題になるな。みんな今、手元にいくらある?」
「えーと…個人では手元に5万円、管理分で30万すこしかな。」

 おおお〜と声があがる。

「耕介の財源は結構重要そうだ。他には?」
「12万、というところですね。」

 愛さんが答える。

「真雪さんは?」
「んー、財布には5千円ってところかな。知佳〜?」
「あたしは2万円ちょっとってところのはず」
「リスティと美緒は置いといて…薫は?」

 薫はここで少し頬を掻いて視線をそらす。

「薫〜?」

 真雪さんが問い詰めにかかる。

「うちは今、150万ほど…手元に」

 全員が吹く。

「ひゃ、百五十万〜〜〜!?」
「退魔の仕事のお礼といって手渡しで渡されたんです!もらったのが遅かったですし、ATMに預けにいくには額面がおおきいですから本当なら今日、預けに行くつもりだったんです」

 …退魔の仕事ってそんな額面だったんだ…なんて今更ながらに思った俺。

「えーと、那美さんは?」
「私は3万円というところです。」

 ここで真雪さんが計算を弾く。

「202万円ってところか。まあ、管理費の30万すこしは無かったものとして考えて172万+α。9人過ごす分ならまあ、当面は問題ないだろ」

 真雪さんはそう結論づける。

「…最悪の場合は知佳の食費をまっさきに切り詰める。」
「お姉ちゃん!」

 姉とは思えぬ暴言をはく。

「知佳、おまえが光合成できることぐらいこの姉がしらないと思うのか?」

 光合成ってあんた…。
 と、いうか。

「知佳。そんな才能あったのか?」
「…うん。光合成とは違うけど…日光あびておけば水だけで一月はもつって。」
「そっか。でも真雪さん、そういうのに頼るのは…」
「わかってるって。ジョークだよジョーク。」

 手をひらひらさせる真雪さん。

「ところで、高校にはいったほうがいいかな?」

 知佳は膨れてはいるが、時間的にみて重要なことを訊ねる。

「あ、もうこんな時間だ。」

 みなみちゃんも時計をみて驚く。

「いいんでない。行ってみても。たぶん、授業なんて無いと思うけど」
「ない…ですか?」
「だって、水道、ガスが断線してるってことは…トイレとかもそうでしょ?」

 はっ。
 全員が固まる。

「まだ、だれもトイレにむかってないみたいだけど…まずはそこからだよねえ。考えてみれば。こういうとき男は有利だな。立ちションで小はどーにかなるんだから。」
「「「「真雪さん!!」」」」

 俺、愛さん、薫、那美さんが同時に声を上げていた。

 結局のところ、友人の安否や状況を知りたいということで学生組は一応登校することになり(バスが通ってなかったので知佳はしかたなく帰ってきたが)、俺と真雪さんだけが残る事になった。

「…しかし。ゆうひは結局居ない、か」

 真雪さんの一言。

「仕方ないでしょう。あいつはイギリスにいってしまいましたから」
「そのかわりに薫の妹か。面白さではまあ、質の方向性が違うけど負けてはいないと思うからいいけどな」
「…淡白ですねえ」
「あたし、この寮にいるのが長いからね。2年ちょっとの管理人さんよりは出会いと別れって言うのを経験してるのよ。知佳もそういう点では同じなんだけどな」
「そういえば、俺にとってこの寮での最初の別れ、でもあったんですね…ゆうひは」
「…ああ、そうだったな。でもさ、一番なんやかんやで出会いと別れを経験してるのは愛だし、次におおいのは美緒なんだからなあ…」
「美緒は生まれたときからでしたっけ?」
「啓吾さんと一緒に住んでたからなあ。」

 ここでチャイムがなる。

「あ、私でるね」

 知佳が玄関に赴く。

「…時空融合。ばらばらになった世界。話のネタとしては面白いんだけど、実際わが身に降りかかるとやなもんだな。」
「あまり実感湧かないですけどね」
「…一番あたしがね、気にしてるのは美緒」
「え?」
「啓吾さん、香港だからさ…もしかすると会えない可能性が高いってことよ」

 俺は声を失う。美緒にとってそれはかなり厳しい現実ではないか。

「あ、お兄ちゃーん、ちょっとごめん。ガス会社の人がきてるんだけど」
「ん?」

 知佳に呼ばれて俺は玄関に向かう。
 そのガス会社の人間からはここのガスの形式・規格や以前に契約していた会社名といったものの確認を行なっていた。

「朝、出社すればこの確認作業にでるように言われてね。海鳴市はあんまり普段と変わらないけど、他の街じゃあ所々にいままで存在しなかったような建物とかが並んでたりするから念のため、というのが本音じゃないかな。さっき、水道局の人ともあったから多分水道も直に復旧すると思うよ。」
「そうですか」
「海鳴市のガスの場合は規格も会社も全部うちだしガスは今日の昼すぎには通りはじめるんじゃないかな」

 ガス会社の人がそう、つげたときに電力会社と水道局の人たちがやってきた。
 これも同様に規格や形式、水道局の人に関して言えば下水やマンホールの確認も行う。

「どうですか?」
「水道局の住宅別訪問はここで最後なんだけど…いやはやほかと違って海鳴市は2極化されてるなあ」
「二極化?」
「だいたい今と7、8年前…あ、君たちにしてみれば、私は8年後の人間になるのかな? まあ、そういう形で住人がほぼ分けれるということなんだ。でも、水道の規格には全く変化はないからこれで水道は通ることになるよ。ちょっと待ってね。連絡入れるから。」

 水道局の人はそういうと携帯を取り出し、確認作業と自分の担当した地区は規格他が全てあっていることを告げる。

「あと小一時間ほどしたら水道は全面復旧すると思うから。」
「ありがとうございます。」

 電力会社の人も点検が終わったのか水道局の人の後に続いてやってきた。

「はい、こちらも終わりました。電力のほうはまだ確認作業が続いていますので復旧はもうしばらくお待ちさせてしまうことになりますが…すみませんね」

 電力会社の人は謝ると次の確認先へと去って行った。
 リビングに戻ってライフラインがじきに復旧する事を話す。

「ふう。そりゃよかった。」
「水道はとおったあとで一分ちょっと水通ししたほうがいいみたいですけどね」
「ああ、なんか納得する」

 真雪さんはそういう。

「ま、朗報ってやつだね。あとは資金面か…あたしの印税とかどうなるのかねえ」

 真雪さんはテレビをつけながら報道番組を見ていた。
 俺も今日はすることもなく…というよりできることもなく、その報道番組をみることにした。


 というわけで2のメンバーです。
 実はさざなみ寮の人間全員(那美除く)が同じ時間ではありません。
 さあ、誰が違うのかはあとのお楽しみということで。

 小説のほうでいくつか台詞のある舞は今回はオミットの方向性で。
 同様に「立ち絵」の無かった人間はオミットの方向でいきたいと思っていますが…物語は生き物。さて、どうなりまするやら…。


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日本連合 連合議会


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