時に新世紀元年五月、後に「RYOMA」の名の元に世界的な大企業として大成功を遂げる「海援隊」誕生の瞬間であった。

SSFW外伝−「海援隊がゆく」−


第4話「海援隊、東へ」



C-Part「千葉道場にて」


「はじめぃっ!」
「…たあっ!」
「おうっ!」

 新世紀元年九月。東京は神田明神下。お玉ヶ池の千葉道場である。
 今ここではとある男と少女の練習試合が行われていた。
 男の名は「海援隊」社長であり、この北辰一刀流千葉道場でも五指に入る腕を持ち免許皆伝を許された「坂本 竜馬」。
 少女の方は「帝国歌劇団」のトップスターであり、また現在明らかにされてはいないが、対降魔特殊部隊「帝国華撃団」のメンバーでもある「真宮寺 さくら」であった。

 坂本が社長を務める「海援隊」は時空融合後の混乱を見事にチャンスとして掴み、以前に倍する成功を収めつつあった。その中で坂本ら海援隊のメンバーは新たな商売の地として東京にやって来たのである。
 そして坂本は相弟子である「千葉 重太郎」の進めもあり、ホテルに滞在する部下二人とは別に、以前彼が東京の大学にて学んでいたときに下宿していたこのお玉ヶ池千葉道場に滞在していた。そこに姿を現したのが真宮寺さくらであった。
 実は彼女も北辰一刀流の門下生であったのである。そして融合後、彼女の剣を学びし流派の道場が姿を現したのを聞くと、忙しい仕事の合間を縫ってこのお玉ヶ池千葉道場で汗を流すようになっていたのである。
 だが、その彼女もハードスケジュールの中でなかなか時間をとることが出来ず、久しぶりに現れた道場で坂本と出会ったのであった。
 坂本の剣の腕を聞かされた彼女はさっそく坂本に稽古を頼み、坂本もそれを快く受けた。ただ二人とも試合形式などでなく普通の稽古のつもりだったのだが、道場主であり師匠である「千葉 貞吉」の「面白いのう」という一言によって、居並ぶ練習生の前での本試合形式での練習試合となってしまったわけである。

「りゃっ!」
「おうさ!」

 ダン
 パシーーン
 ドン

「はあっ!」
「やっ!」

 ダダン
 ガッ

「…なかなかやるのう」
「坂本さんこそ」

 パシィーーッ!
 ガシッ!
 ダッ!

「…行くぜよ」
「はあっ!」

 タン
 ダダダダン
 ダン!

 ミシィ

「…あ」
「え?」

 ズドン

「…」
「…」

「「「「「おおおおおおおおーーーっ」」」」」
「また…かい」
「2回目…か」



「それにしても凄いですわね。踏み込みで道場の床を抜いてしまうなんて」
「しかも足跡そのままの形で…」

 そういうことなのである。さくらの打ち込みをかわして坂本が面を打とうと右足を踏み込んだ瞬間、堅いはずの木製の道場の床がそれに耐えきれず綺麗に足跡の形に抜けてしまったのである。

「ははは…」
「あんなに綺麗に抜けるなんて…」
「よほど思い切り踏み込んだのですね」
「こらこらさくらさんに佳奈、そんなに竜さんを誉めることはないぞ」
「これで2回目じゃからな、竜馬がこんな風に踏み抜いてくれたのは」

 当然試合はそこで中止。道場も修理せねば使えないということで今日のところは稽古を終了し門下生を解散した後、彼らはシャワーで汗を流した後、母屋の方の居間に場所を移し、坂本とさくら、貞吉と重太郎と佳奈のメンバーでお茶を楽しんでいたところである。

「師匠…申し訳ありませんですじゃ」
「まあ謝ることもない。あんまり綺麗に抜けたんでな、今大工を呼んだところよ」
「そういうことだ竜さん。前の時と同じように切り抜いて取って置こうと思ってな」
「えっ、それでは以前に坂本さんが踏み抜いてしまったときのもあるのですか」
「ああ、あんまり綺麗に抜けたんで切り抜いて道場に飾ってあるのじゃが…気付かなかったかの?」
「ええ、恥ずかしながら…」
「佳奈も?」
「はい…全然知りませんでしたわ」
「そうか…重太郎」
「はい父上」スタスタスタ
「重さん…わしが行くきに」
「まあいい竜馬すわっとれ」
「…これじゃよ」
「あ、ホント。綺麗に足形に抜けてますわね」
「えーとなんでしょうか…『××年○○日申の刻。坂本竜馬・千葉重太郎試合の折り、竜馬力足を踏みて抜きし物。武術の誉れとして後に残す物なり。××年○△日。千葉貞吉これを記す』…ですか」
「あら、あなたと試合をしたときだったんですのね」
「まあな、あの時はわしも竜さんも気合い入ってたからなあ」
「そうじゃな、あの時の試合は竜馬に免許皆伝を許すかどうか決める試合だったからな」
「そんな大事な試合だったんですの」
「で、重太郎先生と坂本さんはどちらが勝ったんですか?」
「それはな」
「…師匠、そろそろ勘弁してくだんさい」
「まあ良いではないか竜馬。そん時決着はつかなかったんじゃよ。ちょうど今日と同じようになって終わったからの」
「はああ、そういうことだったんですか」
「ま、この話はこれくらいにして。佳奈、そろそろ腹が減ったんだが…」
「そういやもうそんな時間かい。それじゃ佳奈さん、そろそろ飯にして貰えませんかの。そうじゃ、さくらさんも食って行ったらどうかの」
「えっ…と、よろしいのですか貞吉先生」
「ああ、かまわんよ。久しぶりに道場に来れたのだからゆっくりしていくんがいいじゃろ」
「そうですよ、さくらさん。ゆっくりしていきなさいな」
「はい。それじゃお相伴に預からせていただきます」
「そうそう。それじゃさくらさんちょっと手伝って貰えるかしら」
「はーい」
「「おうし飯じゃ飯じゃあ」」
「まったくあなたも坂本さんも食事の前に手ぐらい洗ってください」
「「う」」
「竜馬も重太郎も変わらんのう」
「お義父様もです」
「…コホン」



 食後、坂本と貞吉と重太郎の男性陣はお茶を入れて貰ってのんびりしており、佳奈とさくらの女性陣は台所で後片づけをしていた。
 もちろん坂本も手伝おうとしたのだが、昔下宿していたときと同じ台詞で、こうしてお茶を貰って休んでいることになったのである。

…「手伝いますきに」…
…「いいえそんな…」…
…「竜馬、お前がやると余計な仕事が増えるからやめとけ」…

 まあ、そのような一般的な日本の家庭の夕食後の団らん風景であった。

「そういえば竜さんなあ」
「なんじゃ」
 と、二人が話そうとしたときである。突然外から甲高い女性の悲鳴が辺りに響きわたった!!

 キャーーーーーーーー!!

「な、なにごとじゃ」
「この案配じゃと…明神様の境内の方じゃな」
「行くか竜さん」
「ほいきた重さんや」

 それっ、とばかりに駆け出そうとする二人。それを呼び止めたのが貞吉である。

「まあ待て二人とも。お前ら何も持たんで行くつもりか」
「なにかあるのですか父上」
「そうじゃ、丸腰じゃ不味かろう。ほれ、そこの床の間のものを持っていくがいい」
「「これは…」」
「竜馬の方が「陸奥守吉行」。重太郎のは「相模光忠」じゃな。両方とも銘品と言われた刀じゃぞ」
「こいはすごいですが師匠。こんなんを使ってええんですか」
「ああ、竜馬が再びこっちに来たときにやろうと思ってたもんじゃからな。重太郎はそのついでじゃ」
「ついでとはひどいです父上」
「はっはっは。まあいいっちゃないか重さん。じゃなら師匠、ありがたく使わしていただきますきに」
「ああ、気をつけてな」
「おし、行くぞ重さん」
「うっし」

 と、彼らが玄関まで出たところで、こちらも悲鳴を聞きつけて向かおうとするさくらと出会った。

「さくらさんは行かんでもええっちゃ」
「いいえ、私も行かせていただきます」
「じゃがのう」
「来るならそれでも良かろう。そんなことより一刻も早く」
「あ、ああ」

 そして、彼らが明神様の境内へ駆け込むと、そこには腰を抜かしてへたりこんでおびえている女性と、そして今にも襲いかからんとする大きさ2mほどの紫色の化け物の姿があった。

「あ、ありゃあ週刊誌で見た!」
「そう…降魔です!」
「あれが…降魔」
「私たちの世界に現れ、世界を滅ぼそうとする怨念の固まりです。絶対にその存在を許すわけにはいきません。北辰一刀流真宮寺さくら。参りますっ!!」
「ギ…」

 今にも女性に襲いかからんとしていた降魔であったが、駆け込んできた三人に気付きこちらへ向かっての攻撃態勢をとる。そして突然羽を開くと三人目がけて襲いかかった!!

「ちいっ」
「はっ」
「りゃっ」

 左右へ分かれて攻撃をかわす三人。攻撃をかわされた降魔は着地すると、こちらも油断なく剣を構えるさくらと坂本の方へ向き直った。

「重太郎さん早くその方を!」
「ああ!」

 降魔の背中に回り込む形となった重太郎は一瞬攻撃を掛けるべきか迷ったが、さくらの声に襲われていた女性の側に駆け寄ると境内の手水場の影に女性を連れて身を隠した。

「坂本さんも下がってください。降魔には普通の武器は効きません」
「冷たいの。いくらわしでもおとりの役ぐらいは出来るぜよ」
「…くすくす。じゃ、お願いします」
「ああ、っとぉ!」

 飛び込んできた降魔の攻撃を慌ててかわす二人。何の練習をしたわけではないが、二人の連携は結構取れていた。
 さくらが降魔の正面で相対するならば坂本は降魔の側面に回り込み牽制をかける。降魔がそれをいやがって坂本の方を向くならば坂本は攻撃をかわしまくりさくらに攻撃の機会を与える。
 そういった動きで二人は充分降魔を押さえていた。彼らの方も思いきった手は打てない状況ではあったが。

「はっ」

 キーン

「くそっ、こんままではじり貧じゃあ」
「なんとかしないと…」
「竜さん!さくらさん!!」
「重太郎さん!!」
「警察を通じて華撃団の方に連絡が付いた!すぐにでも彼らが駆けつけて来るぞ!」
「そうですか…きゃあっ」
「さくらさん!!」

 重太郎の声に安心したのかさくらに一瞬の隙が生じ、そこに襲いかかる降魔。そして坂本が割ってはいる!!

「北辰一刀流・無妙剣!!」



 坂本の攻撃は降魔に大したダメージを与えることは無かったが、さくらが態勢を整える時間を作り出すには充分だった。そして飛ぶさくらの一閃!!

「破邪剣征・桜花霧翔ーっ!!!」



ザシュッ!!

「グワァァァァーーーッ!!」

 深手を負った降魔は未だ油断無く刃を構える坂本とさくらを見て形勢不利と見たか、その翼を広げるとその血を滴らせたまま東の空へと逃走した。

「…」
「…」
「りゅ、竜さんにさくらさん。ぶ、無事かいな」
「…ふう」
「…はあ」

 重太郎の声を聞いた坂本とさくらは緊張の糸が切れたのかそのままへたへたとその場に座り込んでしまった。

「はははは…なかなかやるのうさくらさん」
「うふふふ…坂本さんこそ」

 顔を合わせ笑い会う二人。その頃になってようやく帝国華撃団の面々が到着したのである。

「ご無事でしたのね、さくらさん」
「え…、ええ大丈夫です。えっと…私の事をご存じなんですか?」
「あ…、ア、アラ、帝劇の女優さんでしょ? まぁ帝劇のトップスタア神崎すみれに比べればまだまだですけどねえ、おーっほっほっほっほ」
「どうもすみませんですねぇ…」
「そうか、無事なら良かったです。で、真宮寺さん…こちらは?」
「ありがとう御座います。こちらは私の流派北辰一刀流千葉道場で剣術の先輩の方々で、こちらが坂本さん。そしてそちらが千葉の重太郎さんです。降魔を追い払うのに協力をしていただきました」
「そうですか、ご協力感謝します。で、真宮寺さん。降魔はどちらへ逃げていったんですか」
「獅子岩を飛び越えてそのまま飛んで行きましたから、東の方だと思います。深手を負っているはずですからそう遠くへは行っていないはずです」
「そうですか。ではこれより我々は降魔の追跡を開始いたします。真宮寺さん達はこれ以上は危険です。お疲れでもあるでしょうから早く帰ってお休みください」
「そんな…私も行きます」
「そうおっしゃいますがその体では無理ですよ。一般の方々の協力はこれまでで充分です。後は我々帝國華撃団の出番です。我々にお任せください」
「その通りじゃさくらさん。ここで押し問答をしちょるより本職の方々に任せた方がいいぜよ」
「そういうことです。それでは坂本さんに千葉さん。真宮寺さんをよろしくお願いします」
「ああ、うちの道場で充分休ませてから帰します。ご心配なきように」
「ではっ!総員追跡開始っ!!」

 そういうと大神以下帝国華撃団の連中は追跡を開始しこの場から姿を消したのである。

「さて、二人とも立てるか…っと無理か」
「すまんの、疲れきっとって足に力が入らんのじゃ」
「まあいい。そろそろ親父殿も来る頃だろうし。そしたらゆっくりと帰ろう」
「ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ございません」
「そう気にしなくともいいんよ。と、親父殿ー!こっちじゃあー!!」



 この後、帝国華撃団の面々は、点々と続く降魔の血の後を追って追跡を行ったものの姿を見失い、神崎すみれらを悔しがらせることとなった。また襲われていた女性も千葉道場で全く問題なく一夜を過ごし、深く礼を述べながら自宅へ帰っていった。一方坂本とさくらの方は千葉道場に帰り着いたとたんバタンキューと眠りについてしまったのである。一夜経って、さくらは元気を取り戻したものの、坂本の方は疲れが抜けず、道場の修理が終わり次第行われるはずであった坂本とさくらの再試合は後日に延期された。また、疲れがピークに達した坂本は翌日と翌々日の仕事を全て寝跳ばし福岡女史にこっぴどく怒られた。

…「まったく社長はいったい東京に何しに出てきたんですか!!」
 「あうあう」
 「それにあんな「真宮寺さくら」なんてサインまで貰って…分かってるんですか社長!!」
 「ううう…」…


<後書き>
どうもこんにちは。小さな一読者です。
今回の作品は第4話のC-Partになります。
もうこうなったらこの第4話を”海援隊東京編”って分離しようかな…ま、それはおいといて。
やっと今回アイングラッドさんの本編に出てきた人物に会わせる事が出来たあ。
でも、内容はめちゃくちゃかも。
降魔の大きさが2mしかないし(ゲームの最初の方で犬くらいの大きさの降魔が出てた記憶があるんで勘弁してください)。
さくらとか性格が分かってないし(ゲームやったことないんです。ごめんなさい)
一般人のはずの竜馬が降魔と渡り合ってるし。(ちなみに作者は逸般人。どうでもいいか)
その他にも多々…ごめんなさい。
さて今回のネタは、「(史実の)竜馬の剣は北辰一刀流だよな。あれ?さくらと同じじゃん」と言うところから出発しました。
ちなみに、竜馬が試合で足を踏み込んで床が足の形にそのまま抜けた。というのは実話らしいです。「竜馬がゆく」に載ってました。2度は無かったみたいですけど。
あと、話中で竜馬が使ってる「北辰一刀流・無妙剣」ですが、こんな技はありません。無いはずです。あったかも。ないよね。いわゆるところただカッコイイ必殺技みたいのを出してみたかっただけなんです。
さて次は…まだ考えてません。何か浮かんだら次行きます。
読者の皆様、このような作品をお読み下さいましてありがとう御座いました。
ではこの辺で。小さな一読者でした。

P.S.今回はあんまり田鶴子さんが出てきませんでした。噂によるとアイングラッドさんのとこにお邪魔してるらしいですが…私も今のうちに帰ろっと。

「ちょっとお待ちいただけますか」
「おや、これは千葉の若奥様。何でしょう」
「田鶴子さんからの伝言を預かっておりますの」
「はい?」
「ええと…「こんな謝ってばかりの作品書いてるんじゃない!もっとまともなの書きなさい!おしおきっ!!」だそうです」
「え…で、でも田鶴子さんはいませんよね」
「ええ、ですから…代理です」
「へ?」

どがっ

「こ、この技は…な、なぜ」
「陸奥圓明流……裏蛇破山・朔光。実家の方に伝わる技ですわ」
「そ、そういえば…佳奈さんのご実家は…」
「ええ、「陸奥」と申します」
「あ、あの一子相伝の殺人拳法を伝える…ぐぶっ」

ばたっ

「さて…皆様、お見苦しいものをお見せいたしました。でももしよろしければ今後ともお付き合い願います。では、失礼いたします」

平然と去って行く若奥様。あとに残されたのはぴくりとも動かない何か。その吐血でダイイングメッセージらしきものが残されていた。

(つ、つよくない女性はおらんのか…)

おしまい。




<アイングラッドの感想>
 あれっ? ここで待ち合わせしていたのに・・・いないなぁ。
 うへぇ、ここ、地面が何かエライ汚れちょるし・・・血の跡? あ、何か書いてある。
 ええと、何なに? つ、つよくない女性はおらんのか・・・、と・・・・・・。
 ・・・小さな一読者さん・・・ここに眠る・・・なのか?
 つまりここは彼女らの監視下にあるって事じゃないか! イけん、言動には細心の注意をせんと命取りじゃん。
 特に田鶴・・・いやいや、あの方のような素晴らしい、才色兼備な方はそうそうこの世にはいませんて、ハッハッハ。
(くぅぅ、同士よ、よぉし、俺があなたの意思を継いでその希少な存在「強くない女性」を探して見せ様じゃないか。例えそれがどの様に困難な事であろうとも!)
あ、そうそう。この話からスタイルシートを変更してますのでそれについての感想もお願いします。
ではでは。






日本連合 連合議会


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 提供/岡田”雪達磨”さん。ありがとうございます。


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