時に新世紀元年五月、後に「RYOMA」の名の元に世界的な大企業として大成功を遂げる「海援隊」誕生の瞬間であった。

SSFW外伝−「海援隊がゆく」−

第4話「海援隊、東へ」



B-Part「師匠と先生」




「師匠ーーーっ!お逢いしとうござりましたっ!!」
「さ、坂本さあ」
「こらこら、泣くでない竜馬よ」

 新世紀元年九月。高知発東京行きのテクノスーパーライナー第一便が到着した東京港大井埠頭にてのことである。出迎えの人物を見て思わず涙しているのが「海援隊」社長「坂本 竜馬」。その脇であっけに取られているのが営業本部長「武市 半平太」である。
 坂本が率いる商社「海援隊」は時空融合の混乱後、四国の地において大成功を修めていたが、社長以下全ての社員はそれだけでは満足する者達ではなかった。「世界の海援隊になるんじゃ」との掛け声と共に四国の外へと商売の拡大を図ったのである。彼らの行動はいずれも成功を収めつつあった。そして坂本らはその一環として設立した「高知−東京間高速輸送航路」の第一便を利用し東京上陸を果たしたのであった。


「竜さんよ。まあ涙を拭きなよ」
「お、おお。重さんも来てくれたっちゃか」
「ま、親父の付き添いも兼ねてな。わしも顔見たかったしな」
「そいはわしもじゃよ。会いたかったぞ」
「ほいで竜さんよ。佐那子も元気か」
「ああとっても元気じゃ。毎日わしの尻はたいちょうきに」
「佐那子にはたかれると痛いだろうな」
「ああ、飛び上がるほどじゃ」
「「あっはっはっはっは…」」


「武市本部長」
「ん?」
「どなたなんですか?ずいぶん親しいようですけど」
「ああ、田鶴子さあは知らなかったっちゃか。あんご老体が、社長が東京で大学に通ってた時に下宿しちょった剣術道場の先生っちゃ」
「ああ、するとあの方が社長の奥様の…」
「そうっちゃ、佐那子さあの親父さんで坂本さあの義理の父にあたる「千葉 貞吉」先生じゃ。うんであっちが千葉先生の息子さんで佐那子さあの兄貴、そいで坂本さあの大学での同級でもある「千葉 重太郎」さあじゃ」
「そういうことですか…」


「それで竜さんや」
「なんっちゃ」
「来てるのは俺達だけでは無いぞ。先生と奥様も来ておる」
「か、勝先生もか」
「そういうことじゃ」
「ど、どこにおるんちゃ」
「えーっとさっきそこらを見てくると言ってふらりと…あーっ先生ここですここ」
「おお、すまんすまん…竜馬よ久しぶりじゃな」
「まあ、ずいぶん立派になって」
「先生も奥様もお変わりものうて…」
「こらこら竜さんまた泣く、ずいぶん涙もろくなったんじゃないか」
「しょ、しょうがなかっちゃろ。涙が勝手に出ちょくるんじゃ」
「はっはっは、まあいい泣けるだけ泣け」
「あっはっは。ところで竜馬よ。そろそろそこの二人を紹介してくれんか。二人ともずいぶん手持ち無沙汰にしてるようじゃし」


「あ、ああすまんこっちゃです先生。ほいでは、こっちゃが「海援隊」の営業本部長の「武市 半平太」」
「どうもっす」
「ほいでこっちゃは企画本部長をやってもらっちょる「福岡 田鶴子」さあですきに」
「福岡です。どうぞよろしく」
「こちらこそ」

「ほいでこちらが大学で経済学の教授の「勝 麟太郎」先生っちゃ。わしと重さんの恩師じゃな」
「竜さんは特に世話になったからな。落としそうになったレポート助けて貰ったとか」
「そいは重さんも同じじゃろが。卒論を大目に見てもろったり」
「そ、それを言うか竜さんよ。竜さんじゃって必修の単位を取れなくて先生に泣きついたんじゃないか」
「あーっ、そをばらすとはなんじゃ。大体重さんじゃとてあん時のレポートを期限までに終わらせられんで先生のとこ駆け込んだんじゃろが」
「い、言ってはならんことを言ったな竜さんよ。それならあの後期の…」
「そ、そいなら重さんだとてあの時の課題の…」
「なんじゃと、それなら…」
「じゃから…」
「…!」
「…?」
「…」
「…」

「こ、こいは」
「まーた始まったな」
「い、いつもこんなんですっちゃか勝先生」
「いつものことですわ」
「ま、こんなもんじゃな。二人でじゃれおうてるだけじゃ」
「奥様に千葉先生まで…」

「…」
「ん?どうしたんじゃ田鶴子さあ」

 福岡女史が坂本らの方へ歩み寄る。何が起こるのかと見守る一同。坂本らはまったく気付かない。

「…!」
「…!」
「(ぷちっ)」


「いーかげんにしなさぁーーい!!」


「「た、田鶴子さあ(福岡さん)」」

「いったいここをどこだと思ってるんですかっ!」


「「こ、ここってここは…」」

「まったくいい大人が二人そろって人前で恥ずかしくないんですかっ!」


「「そ、そい(れ)は…」」

「だいたい二人とも…」


「なあ…武市さんよ?」
「はい?」
「いつもあんな感じかい?」
「千葉先生…。はあ恥ずかしながら…」
「んじゃ竜馬は家では佐那子さんに尻に引かれ、会社では彼女の尻に引かれってわけかね」
「か、勝先生まで…。ま、まあ、んなもんですっちゃ」

「武市本部長。なにか」
「(ぶんぶん)」


「(勝先生よう、こりゃおっかねえおなごだねえ)」
「(そうですな千葉先生、こりゃ大したもんです)」


「なにかおっしゃいました。千葉先生、勝先生」
「「い、いやなにも(お、おっかないねえ)」」

 そして彼らは「また後で」ということで一旦分かれた。坂本らは東京営業所で書類のチェックや業者との応対等の仕事。千葉貞吉と重太郎はお玉ヶ池の千葉道場へ、勝は大学へと戻る。そしてその夜。彼らは千葉道場へ再び集まった、坂本らの歓迎会のためである。参加者は8名。坂本と武市と福岡、勝麟太郎と多美子夫妻、貞吉と重太郎と重太郎の妻の佳奈である。


「とりあえずみんな無事に逢うことが出来てよかったよかった」
「そいがなによりじゃ」
「そういえばみなさんどうなさったんですか」
「なんじゃね?」
「時空融合の時ですわ」
「ああ、あの時は勝先生もわしらも運が良かった」
「そうですわあなた。たまたま勝先生と奥様がうちの道場に泊まりに来た日にあれが起こりましたからね」
「そういうことじゃな、一日でもずれておったら勝先生とは別れ別れになっちまうところだった」
「麻布の私たちの家は消えてしまいましたのよ」
「そいは大変でしたの」
「まあ、他にもっとひどい目に遭った人は大勢いるからねえ。わしらはまだいい方だよ」
「とりあえずうちの道場と勝先生の大学がまとめてこっちに来たからよう。わしも勝先生も路頭に迷わず済んでめでたしということだねえ」
「まっこと運としか言えませんきになあ」
「そういうことじゃ」

「じゃあ勝先生、今も大学で教えちょうちゅうことですかの」
「竜馬よ。まあ、それもやっておられるがそれだけでもないぞ。ねえ先生」
「まあ重太郎さん、それは言わなくともよろしいのではないかしら?」
「そんなことは無いです奥様。すごいことですよ」
「いったいなんですかの先生。もったいぶらずに教えてくんさい」
「先生はの、認めてくれた人がおってなあ。今や政府の経済政策のブレーンじゃ」
「ど、どういうことっちゃ先生」
「そんな大したことじゃないさ。人に頼まれてな。時々「高橋是清」経済財務担当補佐官に意見を聞かれることがあるというぐらいじゃ」
「そんな先生謙遜なさらなくとも…巷で噂ですよ。「高橋補佐官の知恵袋に勝海舟がついた」って」
「重太郎。その辺にしておけ」
「でも親父殿…はい」

「それでも凄いことですわ」
「そうじゃの。不肖の弟子とは大違いじゃな」
「「…武市さあ(ん)」」
「「「「「「ははははは…」」」」」」

「重さんは今んとこはどうしとるんじゃ」
「わしは勝先生の手伝いをしながら道場の方もやってるというとこじゃ」
「頼りないがの」
「親父殿…」
「あはははは。そいならば師匠。道場の方はうまくいっちょるちゅうことですかの」
「まあな。東京も怪獣騒ぎなんかがあったお陰で人の心が荒れて妙な連中が増えてな。それを嫌って剣を学びに来る者が増えたということじゃ」
「でも、うちも一時は大変でしたのよ。道場が託児所みたいになってしまって」
「佳奈さん、どうゆうことですきに?」
「ああ、この近所で親と離ればなれになっちまった子供らを預かってたんだよ。今はその子らもそれぞれ引き取り手が決まってここを出てったがな。そういう子らもここへ剣を学びに来るんじゃ」
「師匠、そいはええことをしましたの」
「いや、これは重太郎の考えだったんじゃよ」
「へええぇ、重さんがのう」
「そんなに見んない。照れるだろうが」

「ところで竜さん。話は変わるがな」
「なんじゃ重さん」
「竜さんとこじゃワインなんかは扱ってないのか?」
「無いこともないが…いったいなんじゃ?」
「それはこういうことじゃ竜馬。この間重太郎と共に味吉食堂に飯を食いに行った時の事なんじゃがな」…


…大学前、味吉食堂にて

「…それじゃ先生、行きましょうか」
「そうじゃな重太郎」
「それじゃ陽一君。ごちそうさまでした」
「毎度どうも!先生も重太郎さんもいつもひいきにしてくれてありがとうございます」
「んな礼を言われる事じゃないがな…そういえば陽一君。煮込みハンバークのソースの味変えたかね」
「あらあ。わかっちゃいました?先生にはかなわないですね」
「なんかあったのかい」
「あのですね。今回の融合事件からずっと、海外からのワインの輸入が止まったままなんです」
「まあ、そうだねえ」
「そのせいで国内産のワインの値段もかなりあがってしまいまして。料理用と言えどもおいそれと手に入らなくなっちゃったんですよ」
「そいつは大変だ」
「何とか使わないでやってみようとしてるんですけれど。やっぱり先生みたいにわかってしまう人にはわかっちゃうんですよね」
「なるほどなあ」
「陽ちゃーん。こっち終わったよう」
「ああ、今行くよ。それじゃ先生。またよろしくお願いします」
「ああ、じゃあまたな」




「と、言うわけなんだよ」
「なるほど…の」
「社長、それなら…」
「こないだ岩崎さあが言っちょった…」


…数週間前。高知、海援隊本社にて

「…んでな坂本さあ。丸亀の方のワイン醸造業者なんじゃがな。時空融合さわぎの前にあっちの世界で大量に仕込んだワインがの、こっちに来て飲み頃になるっちゅうんじゃが」
「ふむふむ」
「ところがの、こっちの世界での販売路がズタズタにされたまま回復不可能に陥っちょるんじゃ」
「それでわしらにか」
「ああ、捨てるわけにいかんしどうにかならんかちゅうてな」
「なるほどのう。んでその会社はどうなんじゃ。ワイン作りの方は」
「言うのはなんじゃがうまいワインを作るし研究熱心じゃぞ」
「なんじゃ岩崎さあはもう飲んだんか」
「まあの」
「そいはずるじゃぞ岩崎さあ」
「へへへっ実はの、ここに持ってきちょるきに、みんなで飲んでみちょくれ」
「なんじゃあ、そういうんはさっさと出すもんじゃ」





「あれは実にうまかったの」
「ああ、それよりそいは確かまだどことも話がついとらんかったの」
「ええ、とりあえず幾つかは当たったもののはかばかしくなかったはずです」
「よし、今から…はさすがに無理か。明日の朝一番で岩崎さあに電話じゃ」
「了解じゃ、しっかしなんでこいつに気づかんじゃったんじゃ。東京で市場調査したんはこんわしぞ」
「…それも無理ないですわね」
「「何故じゃ?」」
「これですわ」
「日本酒…?」
「そうかいな、確かにわしも武市さあも日本酒党じゃ。ワインなぞ飲まん武市さあが気づかんのも無理ないの」
「ちょっ…そういうことじゃったか」

…こうして大量のワインが海援隊の手によって「飛翔」・「疾風」を利用して四国から東京に運び込まれる事となる。それはたちまちのうちに東京のワイン市場を席巻し、国内のワイン供給地図を塗り替え、四国、特に瀬戸内海沿岸を一大ワイン供給地に変化させ、関係する各農家や業者に莫大な利益をもたらし、ワイン生産は四国経済を支える重要な柱となった。またこれをしかけた海援隊は経済界の風雲児として高い名声を得、関東に確固たる地盤を築いたのである…




「そいにしても先生。こんな商売のネタを下さってありがとう御座いました」
「なんじゃ竜さん。わしには礼はないのか」
「それは無理じゃ重太郎」
「なぜです親父殿」
「お前はソースの味が変わったの気付かなかったんじゃろ」
「そ、それは…」
「勝負…ありじゃなあ」
「…ぷっ」

「「「「「「「「あっはっはっはっは…」」」」」」」」





<あとがき>
どもどもこんにちは。小さな一読者でございます。
今回はあんまり続き物にした意味ありませんでしたね。
はい、正直に言います。先に出した第5話、あれの番号を5番にしたのはまったくの適当です。福岡女史登場(第3話)、東京編(第4話)、大阪編(第5話)という形で行けばいいかなと考えていたのですが、東京編がどうにもこうにも1話分では収まりません。ううっ。なので仕方がなく先のを第4話A-Part、今回のを第4話B-Partにしてます。さらにもうちょっと増えそうなんですが。
これは完全に私の構成ミスです。
まったくお馬鹿ですね。
さて、今回は勝海舟と千葉道場の面々の登場です。
坂本の設定も一部明らかになりました。
坂本夫人、佐那子さんについても「史実とは違う」って怒る人がいるかも知れませんが、ごめんなさい。先に謝っておきます。
自分、佐那子さんの方がおりょうさんより好きなんです。
この辺色々あるんですが語ると後書きの方が本文より長くなってしまうので止めます。
その内ネタにするかも知れません。
あとは、千葉道場はもちろん北辰一刀流の道場です。
坂本はそこで免許皆伝、五指に入るほどの剣の腕を持っています。
でも北辰一刀流って確か…真宮寺さくらと同門か、おいおい良いのかね。
その他には、またVer7さんからのメールからネタを頂いてしまいました。
まったく感謝してもしきれません。ありがとう御座いました。
足を向けて寝れませんが、どっちの方角にいらっしゃるのか分からないので普通に寝ます。あはは。
しかし、今回はせっかく四国を出てきて東京まで来たってのに、本編の設定に相変わらず絡まない。それどころか勝手に高橋補佐官の名前を出してしまって…アイングラッドさんと岡田”雪達磨”さんに怒られるぞう。
先に謝っておきます。勝手に設定してごめんなさい。他に絡めそうなネタが無かったんです。海援隊と加治首相を少しは近づけて見たかったんです。
あと以外に苦労したのが…言葉です。
勝と千葉道場の面々には江戸言葉を話させようとしたのですが、これが難しい。
自分が江戸言葉という物をきちんと分かっていない上に、注意しないで書いてるといつの間にか土佐弁に引きずられて何だか分からなくなってしまうし。はー困った困った。
次の話は…どうしようかな。まあ思いついたらということで
では、今回はこの辺で。小さな一読者でした。

P.S.冒頭部、Gガンダムの名シーンから頂いちゃいました。気付いていただけました?



<アイングラッドの感想>
小さな一読者さん、ありがとうございました。
しかし、不勉強でしたが坂本竜馬は北辰一刀流免許皆伝ですか。
同じ東京ですし、真宮寺さくらが出稽古に来てもおかしくはないかもしれないですね。
設定の件は大丈夫でしょう。
では、今回も面白い話をありがとうございました。
皆さん、是非ご感想をお願いします。
ではでは。




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